4月、日本銀行は「フィンテックセンター」を新設。金融とITの融合であるフィンテックの推進に向けてトップに任命されたのは、暗号技術に精通し、日立製作所の情報通信部門への出向経験もある異色のセントラルバンカーだった。

日銀フィンテックセンター長が語る「人工知能で金融政策」<br />Photo by Toshiaki Usami

──アップルウォッチ(腕時計型端末)を着けているんですね。

 これでどうやって決済をするかといったことを知るのが仕事なので。フィンテック関係のアプリは大体スマートフォンに入れていますし、銀行のインターネットバンキングは一通り使っています。

──日銀に入った当初の新人時代から、人工知能で金融政策ができないかと考えていたと聞きました。

 そういう議論が大好きだったんですよ。学生時代は「Apple 2e」(米アップル製のコンピューター)が出たころでした。64キロバイトしかメモリーの容量がなかったのですが、その中で人工知能もどきの会話をするプログラムを自分で組んでいました。

「Siri」(音声認識アシスタント機能)みたいなものができないかと考えていたんです。

 それで、新人時代に「将来的には人工知能で金融政策を行うことも可能ではないか」と上司に話したら、「何を言っているんだ。金融政策はアートなんだ」と怒られました(笑)。それはその通りで、当時の人工知能を使うなんてことは無理で、若気の至りでした。