SNSやメール返信に気を散らされて、私たちは一つのことに集中して取り組み、深く考える能力が衰えているのではないか? そんな問題意識をもった気鋭のコンピュータ科学者が、ブログで「ディープ・ワーク」という考えを発表したところ、大評判となり、書籍化された。その日本語版『大事なことに集中する』の抜粋連載第2回は、著者自身がいかにしてディープ・ワークに心酔するようになったかを語る。

ますます価値が高くなる
「ディープ・ワーク」の能力

前回で二つの思考の筋道を見てきた。一つはディープ・ワークがどんどん稀少になっていること、もう一つはその価値がどんどん高まっているということだ。これらを結び合わせて、本書で述べるすべての基礎となる考えにすることができる。

ディープ・ワークの仮説:ディープ・ワークをおこなう能力は、現在の経済状況下ですます「価値が高く」なっていると同時に、能力自体はますます低下している。その結果、このスキルを磨き、それを仕事の中心にする少数の人だけが成功するだろう。

 本書の目的は二つあり、二部に分けて追究する。一つ目は第1部で、ディープ・ワークの仮説が真実であることをあなたに納得してもらうこと。二つ目は第2部で、あなたの頭脳を訓練し、業務習慣を変えてディープ・ワークを仕事の中心にすることで、この現実を生かすすべを学んでもらうことだ。ただその前に、私自身がどのようにしてディープ・ワークに心酔するようになったかをお話ししたい。

コンピュータ科学者の私が自宅で<br />コンピュータに触れない理由著者が博士号を取得したMITのキャンパス