ディープ・ワークで私が得たこと

 一方、ディープ・ワークに努めた甲斐はあった。大学卒業後の10年間で4冊の著書を刊行し、博士号を取得し、多くの研究論文が学界で取り上げられ、ジョージタウン大学に終身教授として迎えられた。その後も多くの成果をあげているが、午後5時ないし6時をすぎて仕事をすることはまれだ。

 私は仕事時間内に多くの予定をこなしているが、それはシャロー・ワークを最小限にしようと相当の努力をし、それで得られた時間を最大限に活用しているからだ。入念に選んだディープ・ワークを中心にし、どうしても避けられないシャロー・ワークは予定外の時間にまとめて片づける。

 1日3時間から4時間、週に5日、中断されることなく、焦点を定めて集中することで、多くの価値ある成果を生み出すことができる。

 ディープ・ワークに努めることで、仕事以外でもメリットがある。私は職場から帰宅してから翌朝まで、コンピュータに触ることはほとんどない(例外は主にブログで、子どもたちが床についたあとで書く)。完全に外部と連絡を断つことで、夜、妻や二人の息子たちと過ごすことができるし、驚くほど多くの本を読むことができる。

 さらに、気を散らすことがなければ、日常生活にどんどん侵入してきている、人間の知的活動が生み出すあの神経にさわる雑音も気にならなくなる。私は退屈な状態が心地よく、それは意外なほど実りあるスキルになりうる――特に、ワシントンのけだるい夏の夜、ゆるやかに展開するナショナルズのゲームを流すラジオに耳を傾けているときは。