2014年7月18日、最高裁において「外国人は生活保護法による保護の対象にはならない」という判決が下された。この判決は、何を意味しているのだろうか?
今回は予定を変更し、この最高裁判決について、憲法学者・笹沼弘志氏の見解を紹介する。そもそも、日本に在住する外国人が生活保護を利用できる根拠は何なのだろうか? それは、なくすべき運用なのだろうか?
最高裁は本当に
「外国人は生活保護の対象外」としたのか?
2014年7月18日、最高裁第二小法廷において、「外国人は生活保護法による保護の対象にはならない」という内容の判決が行われた。毎日新聞によれば、下記のように報道されている。
毎日新聞 2014年07月18日 21時01分
外国籍であることなどを理由に生活保護の申請を却下されたとして、永住資格を持つ中国人女性(82)が大分市の処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は18日、女性の訴えを認めた2審・福岡高裁判決(2011年11月)を破棄し、女性側敗訴の1審を支持した。女性側の逆転敗訴が確定した。小法廷は「生活保護法が適用対象とする『国民』は日本人を意味し、永住外国人にも準用される根拠は見当たらない」という初判断を示した。
(以下略)
この判決を受けて、ネットでは「在日外国人は生活保護を利用することができない、と最高裁が判断した」という理解に基づいた感想が数多く見受けられる。
現在、判決文全文はTBSラジオ「Session 22」のサイト内のページで読むことができる。直後、パーソナリティの荻上チキ氏が、この判決について番組内で取り上げたからだ。
そもそも、最高裁が今回、改めて「生活保護法下で、外国人は生活保護法による保護対象ではない」としたわけではない。生活保護法第一条には
「第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条 に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」
とあり、対象は「日本国民」となっている。現在、永住外国人も生活保護の対象になっているのは、1954年の厚生省(当時)通達に、
「当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱いに準じて」必要ならば保護を行うことが指示されて現在に至っているからだ。