あなたの周りに、休日出勤や寝不足を自慢するような人はいないだろうか。このような「社畜的価値観」の持ち主は、仕事ばかりしている分ビジネスパーソンとしての市場価値は高いように見える。しかし、労働市場では評価されることが少ないのだ。今まで50万人のビジネスパーソンの市場価値を測定してきた、藤田聰氏に聞いた。

いくら社に忠誠を誓っても
市場価値は上がらない

深夜残業する「社畜」は<br />労働市場でさえ評価されない

 社員と家畜を組み合わせた「社畜」という言葉がある。匿名掲示板などで目にすることが多い。正確な定義はもちろん決められていないが、ここでは「自分の時間のほとんどは仕事に捧げるべきだ」という価値観を持っている人、とする。平日夜間はもちろん、休日も働く。

「ワークライフバランス」が重要だと言われる昨今、何とも時代錯誤な話だが、まだまだ一定数は存在するようだ。私は管理職研修などでいろんなビジネスパーソンと飲むことが多く、本音を聞く機会がある。酔うと「終電まで働くヤツはエライ、早く帰るヤツは根性が足りない」「徹夜で働く俺はスゴイ」といったような「社畜的価値観」があらわになる人はかなり多い。休日出勤や寝不足を自慢げに語る人は、読者の皆さまの周りにもいるのではないか。

「社畜」を揶揄すると「俺らのおかげで日本経済は回っているんだ」「これがうちの会社の常識なんだ」「自分の時間なんだから好きにさせろ」「自分1人の力ではどうにもならないんだ」という反論が聞こえてきそうだ。それでも私は声を大にして言いたい。深夜残業ばかりしている「社畜」の市場価値は低いということを。

 他人の価値観をとやかく言うつもりはないが、少なくとも労働市場において「社畜」は評価されない。自社でしか通用しないスキルばかり磨いているからだ。確かに、市場で評価されるスキルを意識的に磨いている人もいるだろう。ただ「社畜的価値観」を持っている人の多くは、「社内の人間関係の把握・構築」などの、転職したら使えないスキルばかり磨いている。これでは、いくら働いている時間が長くても、市場価値の向上は見込めない。その会社と運命を共にするというのなら止めないが、倒産したり、会社に見限られたときに困るのは自分だ。