最近の労働環境は「ハラスメントブーム」状態。課長にとって、おそらく過去最大レベルに労働法の知識が求められる時代が訪れています。新刊『課長は労働法をこう使え!』の中から、事例とともに実践的な「法律の使い方」をお伝えする連載第5弾。

仕事ができない「給料泥棒」状態の部下に<br />課長はどう指導すべきか!?<br />


 給料の高い部下が労働問題を引き起こすケースには、いくつかのパターンがあります。ここでは、代表的なものを取り上げて紹介します。

課長が部下を「高額所得者」
「富裕層」となじったケース

  あなたは、自分より給料の高い部下がいたらどう思いますか。正直なところ、「おもしろくない」と感じることでしょう。

 ある消費材メーカーでの話です。

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営業課長は、ある部下の給料の高さに、
常々「給料泥棒」と思っていました。
前任の課長が、この部下を高く評価し、給料を上げていました。
しかし、自分が課長になってからはノルマ未達の繰り返し。
「この程度の仕事しかできないやつに、こんなに給料を支払うのはおかしい」
課長は毎日苦々しく思っていました。
こうした意識が、態度や発言の端々に表れるようになります。
ある日、部下が基本的な契約ミスをして、商談をまとめるのに失敗します。
すると課長は、他のスタッフの前でこう言い放ちます。


「新人でもしない凡ミスをするくせに、バカみたいに高い給料もらってんだもんな!」

部下はカッとなって課長につかみかかりました。
周囲の社員がいさめ、その場は何とか収まりました。

その後も課長はねちねち攻撃を続け、
営業会議などの場で陰湿な呼称を使い始めます。


「この高額所得者が6ヵ月連続でノルマ未達です」
「自分の給料の半分も稼いでません。他の社員に養ってもらっている状態です」
「この案件は簡単すぎて富裕層には物足りないかな」


などとバカにし放題。
やがて部下はうつ病になり、休職しました。

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 この課長の行為は、明らかにパワハラです。ここまでやる人は少ないかもしれませんが、ノルマ未達が続いているのに自分より給料の高い部下がいたら、あなたはこの課長のようにならないと言い切れるでしょうか。