「所有から利用へ」をキャッチフレーズに掲げる農地法改正法案が、5月8日の衆院本会議で自民、公明、民主の賛成多数で可決された。農政当局は「平成の農政改革」といっているようだが、筆者には「昭和の懐メロ」に聞こえる。まず法改正の主なポイントを上げると、以下の通りだ。

<法律の目的の見直し>

 農地法の第1条から農地改革の理念であった「自作農主義」(所有者=耕作者)に関わる文言を削除する。具体的には、「農地を耕作者みずからが所有することが最も適当である」とする考え方を、「農地の効率的な利用を促進する」との考え方に改める。しかし、国会では民主党からの修正要求で、政府原案で削除されていた「耕作者」という言葉を復活し、「耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ…農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進」という文言を加え、「自作農主義」が維持された。

<農地転用規制の強化>

 現行では、学校などの公共施設の設置に伴って行う農地転用については、許可は不要とされているが、これを見直し、許可権者である都道府県知事等と協議を行う仕組みとする。違反転用に対する罰則(罰金額の引き上げ)を強化する。

<農地の権利移動規制の見直し>

 改正前は所有・利用とも農業者、農業生産法人に限られていたが、改正後は、利用については一般企業やJA、NPO法人などを認める(所有は改正後も変更無し)。しかし、民主党の修正要求によって、法人が「貸借」する場合には役員一人以上が常時農作業に従事することや農業委員会の許可に当たっては市町村が関与するなどの要件が加重された。

 ちなみに、農業生産法人への出資は、改正前は、1事業者当たり10%以下、全体で25%以下だが、改正後は1事業者当たり10%以下の規定を廃止する(全体で25%以下は継続)。農商工連携事業者などの場合は50%未満に。20年以内とされてきた賃貸借の期間は、50年以内に拡大する。