11月1日、フランスの高級ブランド「ルイ・ヴィトン」が旅行ガイドブック「ルイ・ヴィトン・シティ・ガイド・トウキョウ2009」を発売した。これまで英語版とフランス語版だけだったが、今回初めて東京編を日本語で出版したのだ。定価は4200円と高価だが、フタを開けてみれば予想以上に「売れ行きは好調」(同社のPR担当者)だという。

 書店では唯一同書を扱っている東京・新宿の紀伊国屋書店本店でも、「発売前から問い合わせはかなり多かった。ウェブ注文のほうは予約が一時集中して大変な状況でした」という盛況ぶりである。ガイドブック市場にとっては、久々に明るいニュースとなった。

 ところが、気になる中身はと言えば、「ガイドブックにつきものの美しい写真は一切なく、文章だけ」といういたってシンプルなもの。レストランのほか、銭湯やギャラリー、カプセルホテルなど、日本情緒溢れるスポットが紹介されている。

 手のひらに乗るほどの軽さとスタイリッシュさもあり、「興味を持って手にとってみる顧客の多くが30~40代の女性」(同)だ。

 外資系が刊行したガイドブックといえば、昨年発売されて大人気となった「ミシュランガイド東京2008」が記憶に新しい。昨年は初版12万部が4日間で完売するというブームを巻き起こし、ガイドブック市場を活気づかせた。紀伊国屋書店では、同じコーナーに似た形態のガイドを配置して、市場を盛り立てている。

 しかし、ガイドブックを含む旅行市場全体が不況と言われるなか、なぜ「外国人が見たトウキョウガイド」だけは売れているのか?

 旅行業界にくわしいライターのA氏はこう分析する。

 「日本人のグルメライターや、広告がらみの原稿ではなく、“外国人の目から見た東京”という、新しい観点で編集されている。そのちょっとした目新しさやスタイル、そして高級ブランドの香りに読者が飛びついたのではないでしょうか。紹介されているのが都内の店であれば、少々高くてもいつでも気軽に出かけられるので、“わざわざ遠出も冒険もしたくない”という人が多い現在のトレンドにもマッチしています」