こんな時代だからこそ、世界で活躍できるグローバル人材を、国籍や職種に関係なく積極的に採用していこう――。
現在、世界的な金融危機による景気悪化不安に怯え、派遣・契約などの非正規社員ばかりか、来春の正社員採用さえ見合わせようとする日本企業が続出している。
1400人にも上る工場の非正規社員を解雇するいすゞ自動車や、1000人の希望退職者を募る日本IBMなど、直近では、大幅な人員削減に踏み切るケースまで出始めた。昨年まで売り手市場だった就職戦線は、今や完全に逆転。今後、日本の失業率の増加は避けようがないと見られている。
ところが、そんな不況にもかかわらず、日本企業による外国人採用の動きだけが、ますます加速しているのをご存知だろうか?
「そういえば最近、オフィスビルのエレベーター内や昼食時のビジネス街で、外国人ビジネスマンの姿を見かけることが特に多くなった」と感じるサラリーマンも多いだろう。現状を分析すると、企業の外国人採用は確かに増加の一途を辿っている。
法務省入国管理局の統計によると、2006年の在日外国人労働者数は75万5000人と、10年前の37万人と比べて約2倍に増加している。なかでも特に増えているのが、人文知識・国際業務、技術ビザなどで来日しているホワイトカラーの人々だ。
中国、韓国、ベトナム、インドのほか、欧米の人材も少なくない。日本に住む留学生でそのまま就職した人数も、1995年の約2600人から、06年には約8200人と3倍以上になった。政府も今後、ビザや在留資格の緩和を通じて、専門的・技術的分野で受け入れる外国人を増加させる考えだ。
雇用調整に躍起な業界で
唯一増え続ける外国人
たとえば、今後かなり大規模な雇用調整が起きると見られている電機業界では、パナソニックが日本、アメリカ、アジアなど世界5拠点でそれぞれグローバル人材の発掘に力を入れている。国内の主要製造会社で働く7万2000人のうち、2007年3月時点で外国人社員は140名に上る。
同社広報部によると、今後も変わらず採用を続け、3年後の2010年までに研究開発、技術、本社の管理部門などで計240人にまで増やしたい考えだという。日本に住む留学生向けの就職説明会にも積極的だ。
三井化学でも、外国人社員の増加に伴い、07年に「社員の異文化マネジメント力強化研修」を立ち上げた。同社によると、今年4月には7人の外国人を採用、今後も増やしていく予定だ。
こういった海外人材採用の動きは、自動車メーカーや大手商社など、従来から外国人採用に積極的だった企業はもちろんのこと、外国人採用にはどちらかというと消極的だった金融機関などでも顕著になっている。大和証券では、今春採用した新入社員約150名のうち13名が外国人だった。