アメリカでは、あのYouTubeをそっちのけにして、1年前に登場したビデオ・サイト「Hulu.com」が話題になっている。
Hulu.comとYouTubeの大きな違いは、YouTubeがユーザー投稿によるビデオが中心になっているのに対して、Hulu.comはテレビ局のニュースやドラマ、映画会社の人気作品などプロが製作したビデオが無料で見られるという点だ。
著作権問題やDVD、ケーブル・テレビなどの二次的ビジネスでがんじがらめになっているはずのこうしたビデオが、Hulu.comの登場ですんなりと見られるようになったことに最も驚いているのは、実は一般ユーザーだろう。
Hulu.comが正式スタートしたのは今年3月だが、早くも2ヶ月のうちにビデオ・サイトのランキングでトップ10入りし、10月時点の調査では6位と、ぐんぐん急上昇を続けているのだ。
今やテレビ番組のプロデューサーがこぞって詣でていると言われるのが、そのHulu.comのCEO(最高経営責任者)、ジェイソン・キラーである。
キラーは、「テレビ界の経験がゼロの人物」という条件でヘッドハンターが探してきた人材だ。実はHulu.comはNBCユニバーサルとFOX(ニュース・コープ)によるジョイント・ベンチャー。つまりガチガチのテレビ界の産物である。ところが「テレビがインターネットに移行したのではなく、元からインターネットだとして考えられる人物でなければ成功しない」という両社トップの判断によって、彼の起用が決まったのだ。
キラーのそれまでの勤務先は、オンライン・ショッピングサイトのアマゾン。10年余り務めた後に上級副社長の地位にもあったが、年齢はまだ36歳だ。
キラーが注目されたのは、アマゾンが書籍を超えてホーム・ビデオ販売に乗り出す際のキー・パーソンとなったからだ。同サイトの有名な「ワンクリック・チェックアウト」システム、年会費制で送料が無料になる「アマゾン・プライム」などのサービスを次々と構築してきた。