日本と世界の経済にとって正念場となる2010年が幕を開けた。景気底打ちは本物なのか?それとも夜明けは錯覚で二番底が待ち構えているのか?元IMF(国際通貨基金)チーフエコノミストで米国を代表する経済学者のケネス・ロゴフ・ハーバード大学教授に、視界不良の2010年を見通してもらった。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン副編集長 麻生祐司)
Kenneth Rogoff(ケネス・ロゴフ) 国際金融学の権威。1999年よりハーバード大学経済学部教授。2001~2003年は国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めた。10代からチェスの名人として世界的に知られ、国際チェス連盟から最高位の称号である国際グランドマスターを授与されている。1980年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号取得。1953年ニューヨーク州ロチェスター生まれ。Photo (c) AP Images |
―2010年の世界経済の行方をどう見ているか。
(今年に)限れば、かろうじて世界不況には陥らず、さりとて金融危機後にしばしば出現する景気の一時的な上向きのバウンス(反発)も期待できず、端的に言えば、平均以下のパッとしない一年になると見ている。
地域別では、中国やラテンアメリカを中心に主要新興国が力強い成長を維持する一方で、日米欧は引き続きトレンド以下の低成長となるだろう。中でも先行きが不透明なのが、米国だ。予想に反して上向きに振れる可能性も残されてはいるが、私はむしろ下向きに崩れるシナリオのほうを危惧している。
―世界景気のバウンスが今回はないと見る根拠は何か。
800年に及ぶ経済危機の歴史を調べた結果、私は今回の不況を、危機脱出後に一定期間のバウンスが見込める単なるグローバル・リセッション(世界不況)ではなく、影響がかなりの長期にわたるグレート・コントラクション(大収縮、great contraction)として捉えるべきだと結論付けた。信用と貿易そして成長の急速かつ大幅な収縮が世界規模で進行したわけで、このダメージはそう簡単には修復できないだろう。
そもそも楽観主義者たちが喧伝する米国経済の夜明けの根拠は薄弱だ。住宅価格や株価は確かに最悪期からは持ち直しているが、銀行の融資部門に目を転じれば、とても先行きを楽観できるような状況にはない。