昭和の面影が残る町、月島。
もんじゃ焼き店が多いことでも有名なこの町の一角で、昭和4年に酒屋として創業し、戦時中に国民酒場として営業をはじめたのが、老舗大衆酒場「岸田屋」です。
店内はコの字カウンターと、右側の壁につくりつけられたカウンターの合わせて20数席のみ。この限られた席を奪い合うように、夜な夜な酔客たちが集まってくるのです。
牛にこみ(450円)は、人気グルメ漫画『美味しんぼ』(第1巻)でも紹介されたほどの名物品。
「ネギを入れないほうが本来の姿なんだよ」
前に来たときに、そう教えてくれた常連さんの話を思い出し、牛にこみを注文したときに、いつも聞かれる「ネギを入れますか?」の問いかけに、「なしでお願いします」と答えます。
牛のシロ、フワや、ナンコツっぽい部分などがゴロゴロと盛られた牛にこみは、東京三大煮込みにも数えられるほど。一緒にもらった燗酒(新泉、330円)にも、よく合うのです。
「イワシの煮たのはないの?」
入口近くに座るお客さんから声がかかります。
「今日はないのよ。そのかわり、子持ちカレイの煮付け(450円)があるわよ」
「じゃ、それ」