「今年6月末か9月末を境に、商業施設の投げ売りが始まるかもしれない」。こう予想するのは大手REIT(不動産投資信託)の運用会社幹部だ。
今、不動産ファンドの多くが資金調達に四苦八苦している。今年3月20日にレイコフ(大阪市)、5月26日にはグローバンス(東京都千代田区)が、相次いで民事再生法の適用を申請した。共に不動産ファンドの運用を中核事業とする新興企業だが、融資の返済期限が集中した決算期末に新たな資金調達ができず、経営破綻した。
昨年秋以降、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の余波で、不動産ファンドへの資金の出し手だった海外機関投資家が一気に資金を引き揚げた。増資が困難になったファンド側は大手銀行からの融資に頼ろうとしたが、不動産市場の冷え込みが顕著となり、「大手企業が主要株主となっているファンド運用会社を除けば、事実上、新たな借り入れはできない状況だ」(REIT運用会社幹部)という。
増資も借り入れもできなければ保有資産を売却するしかない。そこで売却対象になりそうなのが、商業施設。不動産ファンドが保有する資産をタイプ別に見ると、オフィスビルに次いで多いのが商業施設で、資産規模は業界全体で3兆円近くになる。
オフィス賃料はまだ値下がり傾向は見られないが、大型商業施設は、核テナントとして入居している大手小売業からの家賃値下げ要求が激しい。総合スーパーが核テナントとなっている郊外型商業施設では売上高前年割れが常態化しており、賃料負担を減らさなければ赤字が積み重なるからだ。
家賃減額に応じれば、施設のオーナーであるファンド側は投資利回りが下がり、投資家への配当もままならない。3月末を短期資金の調達でなんとか乗り切った不動産ファンドに、6月末、9月末に再び返済期限を迎えるところもある。返済に窮したファンドが商業施設売却に走る可能性が高まっている。
(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 田原 寛)