わが世の春を謳歌してきた商社の業績に影が差してきた。2008年度中間連結決算で、業界トップの業績を上げた三菱商事が、通期の純利益見通しを5800億円から5200億円に、600億円下方修正したのだ。
11月初めまでに出揃った総合商社6社の中間決算では、資源高を追い風に、前期に大口の資産売却益を計上した三井物産を除く5社の純利益が過去最高を記録した。
なかでも三菱は、半期だけで2892億円(前年同期比17%増)もの純利益をたたき出し、五期連続で最高益を更新したほどだ。
にもかかわらず、修正に踏み切った理由について、小島順彦社長は「商品価格や株価の下落が想定を超えており、上期までの好業績の維持は難しい」と説明する。
同社は急速な豪ドル安の影響で、想定レートを期初の1豪ドル=90円から65円に修正し、主力の豪州原料炭事業の収益が140億円下振れした。実態経済の減速も追い打ちをかけ、海外での自動車販売の落ち込みで100億円を減額した。
しかも、他社に比べ保有株式の評価損を慎重に見込み、日経平均株価9000円レベルとの想定で、評価損を期初の400億円から、さらに100億円追加している。年間の配当見通しも当初予想から8円低い64円と、6社で唯一引き下げた。
大手商社幹部からは「三菱の見通しはちょっと保守的過ぎるのでは」と疑問の声も漏れてきた。
ただ、商社の海外子会社の多くは12月決算のため、中間決算では資源価格が高騰していた時期の“貯金”が収益を押し上げたが、下期以降は価格が下落した現状が反映されてしまう。
特に、資源・エネルギー部門からの利益が全体の7~8割を占める三菱と三井の上位2社は、このまま資源価格の下落基調が継続した場合、これまで好業績を支えた稼ぎ頭が収益の圧迫要因になりかねない。
三菱を除く5社については、期初の通期見通しの達成は可能との見方が大勢を占めるが、ある商社担当アナリストは「下期での鉄鉱石や原料炭の価格交渉に加え、商品、為替相場の動向次第で、400億~500億円は簡単に下振れする。今後、利益水準がピーク時の半分になっても不思議ではない」とし、商社業績が大きな転換点にあると分析する。
好業績のなかでの三菱の決断は危機意識の裏返しでもある。他商社は業績予想を据え置いたが、非資源分野でも収益環境が悪化しており、来期の減益はもちろんのこと、下期での未達もありうる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山口圭介)