日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)は、第3四半期決算発表において通期業績予想を最終黒字から一転、赤字へ大幅に下方修正した。JALが最終損失340億円、ANAは同90億円に転落する見通しだ。関係者が一様に「来期はさらに収益が悪化する」と覚悟するなか、航空業界に対する複数の緊急支援案が浮上している。
その一つは、空港着陸料や航空機燃料税の減額だ。日系航空会社が加盟する定期航空協会が2月4日、国土交通大臣に緊急支援を要請したもので、国土交通省は3月中に支援策をまとめると応じた。
だが、国交省は財務省に強くは要請できず、減免の実現度はあまり高くはない。国内線において航空機に積み込んだ燃料の量に応じて航空会社に課される航燃税は、空港整備勘定(旧空港整備特別会計)に繰り入れられる特定財源。強引に減免を要請すると、今後、空港整備勘定に対する真水(一般財源)の投入を減らされる懸念があるのだ。
仮に実現したとしても、航空会社の本音は「こんなものではとても間に合わない」。
数百億円規模の減免措置を受けて利用者還元で国内路線の運賃引き下げの原資になっても、片道500~1000円程度の引き下げが冷え込んだ需要を喚起する効果は限定的だ。
これとは別に、本格的な緊急支援案として、国交省を軸に水面下で検討が進んでいるのは、日本政策投資銀行による緊急融資案である。再建途上で資金繰りが心配されるJALをメインに航空業界へ2000億円規模を融資するというもの。JALに関しては、ほかにも公的資金を注入するいくつかのスキームが候補としてささやかれる。
2社を窮地に追い込んでいるのは、これまで成長を支えてきた国際線の需要急減だ。企業の出張抑制で2009年度はさらに需要が落ち込むことは必至であり、「国際線収入は3割、あるいはほぼ1社分がなくなる(半減)のではないか」と見る業界幹部もいる。
欧米の航空会社はすでに再編が進んで体力のある航空会社に集約され、アジアでは国の強力な後押しで勝負を仕掛けている航空会社が存在する。縮小するパイを奪い合う国際競争のなかでは、財務体質が比較的健全なANAとて需要減退が長引けば生き残りは厳しく、経営再建中のJALはいわずもがなである。
両社とも緊急に大幅なコスト削減に乗り出しているが、海外航空会社に比べて高コスト体質なため、生半可なリストラでは太刀打ちできない。
国で保護するか、市場原理で淘汰させるか。国外を飛ぶ日系航空会社を国策として維持すべきか否かを早急に、公に論じるべきときにきている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)