「不況は今に始まったことではない」とスクウェア・エニックスホールディングスの社長で、タイトーの社長を兼ねる和田洋一氏の顔色はさえない。

 アミューズメント施設の低迷が続いている。2008年度第3四半期(10~12月)の決算を見ても、最大手のセガサミーホールディングスのアミューズメント運営事業が49億7000万円もの営業赤字を計上、110店舗の閉鎖と560人の希望退職を募ったのは記憶に新しい。

 タイトーはこれまで、既存店売上高の前年同月比が業界平均より高いことをアピールしてきたが、同9億5200万円の営業赤字に転落。通期でも赤字となる。

 「ヒット商品がないうえ、リーマンショック以降、消費者マインドが冷え込んでいる。Wiiなどの家庭用ゲーム機に客を取られている」(タイトー幹部)というのが業界内で一致した見方だが、1台数百万~1000万円もするゲーム機を導入した店側にとっては償却負担が重くのしかかる。

 今年2月に一部の店舗で基本プレー料金を100円から120円に引き上げた。「まだ実験段階」(幹部)と口を濁すが、客数にマイナス影響を与えるとの見方は依然として根強い。

 そこで、タイトーが“秘策”として打ち出したのが接客。今年4月から覆面調査で各店舗を評価し、飲食店のように三ツ星をつけるという。「ゲームが高度化し、わかりにくくなっていた」(幹部)反省から、店員が明るく場を盛り上げるアミューズメント施設の原点に立ち返る。ゲームについても、「ノー考ゲーム」と名づけたシンプルなタイプを拡充、家族連れやゲーム初心者に間口を広げるのが狙いだ。

 和田社長は「楽しさの原点に返る」と宣言したが、「迫力不足」というのがおおかたの見方。この低迷期に次なる戦略はまだ見えてこない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  大坪稚子)