【第126回】 2009年04月21日
百貨店の常識を覆すJ.フロント
低価格戦略に、はるやま商事を活用!
「自分で勝手に“百貨店はこうだ”と決めているから、こんなにダメになる」(奥田務・J.フロント リテイリング社長)
3月14日、J.フロント傘下の大丸梅田店に、紳士服専門店のはるやま商事の「P. S. FA Platinum(ピーエスエフエー プラチナ)」が出店した。はるやま商事はこれまでにも、郊外立地の多摩センター三越には出店の実績がある。しかし、百貨店の顔となる都市立地の店舗に出店するのは初めて。大手競合である青山商事、AOKIホールディングス、コナカは、百貨店への出店自体がない。
低価格を売りにしてきた紳士服専門店の入店に、「J.フロントは百貨店として越えてはいけない一線を越えた」(業界関係者)と話題を呼んだ。ところが、予想以上の売り上げで2度目の話題をさらうことになった。オープン初日から2日間の売り上げは1000万円。売り上げは今も堅調で、計画の3.3倍も売れているという。
今消費は高価格志向と低価格志向に二極化しつつある。百貨店は、高品質・高価格商品に主軸を置くのが基本とされるが、「価格の点であまりにも時代離れし過ぎた」と奥田社長は語る。
世界同時不況で価格志向は高まるばかり。ボリュームゾーンをとらえて売り上げを確保するために、また、若い顧客を呼び込むために、低価格への裾野拡大は欠かせない。そのため、J.フロントは売り場構成を見直し、低価格戦略を見据えた新規店舗開発に舵を切る。
じつはこの転換は、収益性からも理に適っている。百貨店は、商品の完全買い取りではなく、売り上げが立って初めて仕入れが計上される「消化仕入れ」を取るショップ運営の売り場が多い。この売り場は、在庫リスクがなく、人件費が少なくてすむなど経費が低い。したがって、利益率の低い低価格商品を扱っても採算が取りやすいのだ。
また、はるやま商事とのコラボレート出店のかたちを取り、プライベートブランドの投入など、百貨店単独で動かなかったのは、「これだけマーケットが鈍化していると、スピードを持って対応することが求められる」(桑島壮一郎・大丸本社MD総括本部マーチャンダイザー)から、という理由もある。
はるやま商事のノウハウをフルに活用して、約半年という短期間で、2万9400円と3万9900円という低価格帯での商品展開を実現した。
課題は、いかに新規顧客の維持・育成を進めるか。「低価格という“入りやすさ”は必要だが、買う段になると品質や感度の高さを求める」(横山健一郎・はるやま商事P. S. FA事業部部長)顧客のニーズに応え続けることができるか。
また、買い回りを促すような売り場の作り込みや、個店への品揃え指導をしていけるか。単発ではなく、売り場全体を巻き込んだ抜本的改革になることが期待されている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 新井美江子)
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