9月で統合から1周年を迎えるJ.フロントリテイリングが、続けざまに店舗の閉鎖に踏み切った。10月に横浜松坂屋、12月には今治大丸(愛媛県今治市)を閉店する。両店は、松坂屋と大丸それぞれの懸案店舗だった。

 今治大丸は、1999年に瀬戸内海の離島を結ぶ「しまなみ海道」開通後、島からのフェリー本数が減少し、今治市内や島の消費者が本州へ流出するようになった。

 最近は郊外のショッピングセンターにも客を奪われ、2008年2月期の売上高は60億円とピーク時の4割減になっていた。当期損益で2期連続の赤字に陥り、この先も収益改善の見通しが立たなかったという。

 一方の横浜松坂屋は、売上高94億円とピーク時の3分の1まで縮小し、百貨店事業では25期連続の営業赤字という状態だった。閉鎖は致しかたない処置といえる。

 だが、この2店舗以上に、J.フロントには問題店舗がある。

 松坂屋銀座店である。

 外部環境が厳しい地方と違い、東京・銀座の中央通りに面するなど最高の立地。にもかかわらず、売上高は156億円と、東京都区部にある22の百貨店のうち常に下から2~3番手、万年赤字を垂れ流し続けてきた。

 2013年には建て替えが決まっており、J.フロントのシンボル店になる予定だが、たとえ数年といえども止血が必要と判断したのだろう。9月、30億円かけて改装し、年間入店客数は25%増と高いハードルを掲げる。

 30代女性をターゲットに据えたのに加え、無印良品が核テナントに入るなど百貨店にしては思い切った試みだ。9月13日にすぐ近くにスウェーデンのカジュアル衣料専門大手H&Mがオープンするなど商圏の変化を意識してのようだ。

 一連の施策は、大丸を高収益体質に変えた奥田務・J.フロント社長によるスピード改革ぶりが表れた格好だが、結果を出せるかどうか、真価が問われる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 須賀彩子)