「抜け道でもなんでもない。正当なビジネスだ」(後藤玄利・ケンコーコム社長)。一般用医薬品の約7割の通信販売を禁止する(一部例外あり)改正薬事法が施行されて5ヵ月。健康関連商品のインターネット販売会社大手のケンコーコムは、その規制をくぐり抜けて成長するべく、奥の手を出した。
シンガポールで子会社を設立し、日本語サイトを立ち上げたのだ。そのサイトで、日本国内ではネット販売が原則禁止された第一類や第二類医薬品など、約2500商品の販売を10月26日から開始した。現時点では日本の医薬品を購入したい海外在留邦人を主なターゲットに考えているというが、ネットは世界中つながっているから、当然、日本での購入も可能となる。しかし、今回の販売は「海外現地法人のすることなので、薬事法の規制は及ばない」(厚生労働省)という。
購入時は個人輸入の扱いになり、送料は650円、購入金額8000円以上で無料になる。在庫がある商品でも届くまで一週間程度かかるが、価格は日本と基本的に同一だ。
改正薬事法が契機となって進出時期を計画より早めたものの、ケンコーコムにとってグローバル展開は、2000年にネット販売を始めた当初から視野に入れていた既定路線。とはいえ、ムダをなくすには「日本を拠点としたいのが本音」(後藤社長)だ。
現行の薬事法は、医薬品販売における安全性と利便性の兼ね合いについて十分に議論し尽くさないまま、“対面販売の原則”に反するネット販売を規制するかたちで改正された面がある。今回立ち上がったサイトでの売り上げは、薬事法改正の際、必要とされていながら誰も調べることのなかった消費者の真のニーズを見る試金石になるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)