皆さん、こんにちは。慶応大学の岸です。今週から「クリエイティブ国富論」というタイトルで連載をさせていただきますので、よろしくお願いします。今回は初回ですので、この連載で取り上げていく論点の背後にある問題意識を説明したいと思います。
この連載では、クリエイティブ産業がこれからの日本の主要産業になるべきであることをご理解いただき、またその強化のために取り組むべき様々な問題点について検討していきたいと思っています。
そのためにも、まず最初にクリエイティブ産業とは何かを説明したいと思います。
クリエイティブ産業とは、知的財産を活用する産業全般を包含する英国発の概念です。この産業を所管する英国の文化・メディア・スポーツ省の定義によれば、クリエイティブ産業は以下の13のセクターから構成されます。
広告(Advertising)
建築(Architecture)
芸術及びアンティーク(Arts and Antique Markets)
ゲーム(computer & video games)
伝統工芸(Crafts)
デザイン(Design)
ファッション(Designer Fashion)
映画・ビデオ(Film and Video)
音楽(Music)
舞台芸術(Performing Arts)
出版(Publishing)
ソフトウェア(Software)
テレビ・ラジオ(Television and Radio)
日本人が慣れ親しんでいる産業区分で言えば、メディア、コンテンツ(現代文化)、伝統文化、広告ビジネスをひとまとめにした概念である、と言えます。今やクリエイティブ産業は世界的に成長産業と位置づけられています。英国では、ブレア政権の時代からクリエイティブ産業の強化に取り組んだ結果、英国経済への貢献度で金融、食料・衣料に次ぐ第3位を占めるまでに成長し、観光産業や地域の活性化にも大きく貢献しています。
そして、英国での成功に触発されて、欧州やアジアの様々な国がクリエイティブ産業という言葉を使って、その強化に乗り出しています。その代表例はシンガポールやオーストラリアであり、産官学の各レベルで熱心に取り組んでいます。