【第25回】 2009年01月30日
百年に一度の危機に悪乗りした一般企業への公的資金注入
欧米から伝播した政策のモラルハザード!産業再生機構とは真逆のスキームに感じる危険
先週は、経済危機の最中の米国でメディアと国民が正しい危機感と問題意識を共有していることを論じました。しかし、もちろん全ての人がそうではありません。かつ、政策もそれに十分には呼応していません。実際、欧米では政策のモラルハザードが横行しています。そして、新聞記事を読んでいると、そういう悪い部分が日本に伝播しつつあるなと感じます。政府が一般企業にも公的資金を注入する制度を創設するというのです。
米国ではポルノ業界が救済要請
理由はなんと「経済危機で性欲減退」!
私は常々、欧米の政策には学ぶべきところが多いと思ってきましたが、今回の経済危機への対応策については当てはまらないものが結構あります。
欧米での政策のモラルハザードの典型例は米国政府の自動車産業救済策でしょう。米国政府は金融危機の当初、金融システム維持のために銀行に公的資金を注入するという非常に真っ当な政策を行っていましたが、その対象が徐々に拡大される中で、昨年12月には自動車大手のビッグスリーに174億ドルの融資を行うことを決めました。ビッグスリーが倒産した場合の雇用への影響を考えるとやむを得ませんが、それにしても問題が多いのは明らかです。
米国の自動車産業が苦境に陥ったのには、労働組合の強さによる高コスト体質、環境対応車の開発での大幅な遅れなど、様々な要因があります。そうした中で環境対応への名目で巨額の融資を政府が行うというのには、
・ バランスシート調整はともかく、技術/製品開発には時間がかかるので、本来は融資というデット性資金ではなくエクイティ性資金が必要なはず
・ 経営の失敗が明らかであるにも関わらず、経営陣の交代などの公的資金投入の“代償”が明確になっていない
といった様々な問題があります。即ち、今回の融資は単に国際競争力を喪失した企業を延命させるだけとなりかねないのです。
政府の側がこのようなモラルハザードに踏み込んだら、民間の側も遠慮がなくなるのは明らかです。実際に米国では、1月に入ってポルノ業界が政府に50億ドルの資金援助を要求しました。「経済危機によって米国人のセックスに対する意欲が減退し、アダルトソフトの売上が20%以上下落して危機的状況になった」というすごい理屈を展開しています。
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著者プロフィール
- 岸 博幸
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。
この連載について
メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。
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