上田 今回は、アジアのある国にスポットを当てましょう。この夏休みに行かれた方も多いかもしれませんが、それは「香港」です。今、現地は活気に満ち溢れているそうですね。

竹中 そうですね。私は7月に香港政府の招待プログラムに参加しました。現地では講演やインタビューを行ない、省庁・憲法関係者など、政府の高官の方にお話をうかがう機会もありました。

 それにしても、香港は、原油や一次産品の高騰不安をものともせず、ものすごく活気に溢れていましたよ。例のSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動のときに日本人観光客が激減しましたが、それも最近ではだいぶ戻って来ているようです。「その香港のパワーを日本も見習おう」というのが、今回のテーマです。

上田 なるほど。では香港について、基本情報を教えてください。

竹中 その前に、実は香港と共通点が多いシンガポールについて話をしましょう。香港は中国の一部、国ではなくて1つの「地域」です。人口規模もそれほど大きくないですが、先進的な取り組みを色々しています。シンガポールは独立国家ですが、これも香港と同様の小国ですね。

1人当たりGDPの伸び率は逆転
日本を凌駕するアジア経済の成長力

竹中 しかし、世界の「1人当たりGDP」を見ると、これが高いのは人口が小さな国ばかり。最も高いのがルクセンブルクですが、日本は現在3万5000ドルくらいで、実はすでにシンガポールに抜かれているんです。それどころか、香港も日本に迫る勢いで成長しています。

 世界の主要都市を対象に調査した「金融センター度ランキング」を見ても同様です。圧倒的1位はロンドンで、2位がニューヨークというのは想像通りですが、なんと3位が香港、4位がシンガポールなんです。アジアの小国と言え、今や世界的な「金融都市」。それに対して東京は9位と、彼らに大きく水を空けられているのが現状です。