【第45回】 2008年10月20日
IBMやマイクロソフトも追随せざるをえない
「クラウド・コンピューティング」の潮流
グーグルが「クラウド・コンピューティング」を志向するのは、同社のこれまでのビジネスモデルを考えれば、当然の方向である(もともとこの概念は、グーグルのCEOであるエリック・シュミットが2年前に提唱したものだ)。
注目されるのは、この方向を志向しているのがグーグルだけではないということだ。
IBMは、2007年11月、クラウド・コンピューティング製品系列「Blue Cloud」を発表した。これは、各地に分散している情報リソースをネットワーク経由で集中管理し、全体としてさまざまなサービスを提供するためのものだ。グーグルが主として個人や小企業を相手にしているのに対して、IBMは大企業を念頭においている。こうして、個人向けに広まってきた「クラウド・コンピューティング」が、企業システムにも広がろうとしている。
さらに、マイクロソフトも「クラウド・コンピューティング」に取り組んでいることを認めている。10月1日にロンドンで開催されたイベントにおいて、同社バージョンのクラウドである「Windows Cloud」の存在が公表された(名称は「Windows Strata」 になるのではないかと言われている)。
これは、IBMの動向にもまして注目に値することだ。なぜなら、マイクロソフトは、サーバーやパソコン(PC)にインストールして動かすOSやアプリケーション・ソフトの提供をこれまで主たるビジネスとしてきたからだ。クラウドへの移行は、同社のビジネスの基盤を揺るがしかねない。それでも、その方向を志向せざるをえないのだ。
こうした動きをみていると、マイクロソフトがインターネット対応の遅れを取り戻すために、ネットスケープに対して強引ともいえる戦いを仕掛けた90年代後半の「ブラウザ戦争」を思い出す(*1)。そのときと同じような大変化が、いま起ころうとしているわけだ。web2.0というのは、「ウェブ利用法の改善」といった側面が強かったが、「クラウド・コンピューティング」は、もっと本質的で、もっと影響が大きい変化だと考えることができる。
*1: 野口悠紀雄『ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル』(新潮社、2005年)第Ⅲ部第2章を参照。
「シンクライアント」と
低価格コンピュータ
クラウド・コンピューティングが一般化すれば、これまでPCにインストールして使っていた機能のほとんどは、ネットから供給されることになる。われわれが日常的に使うソフトは、それほど多くはない。メールとワープロ(またはテキストエディタ)、そして表計算ソフトがあれば、たいていの仕事はこなせる。そして、これらはすでにGoogle Appsで提供されている。
したがって、個々の利用者から見ると、手元に置くコンピュータは、簡単なものですむことになる。極端に言えば、入力のためのキーボードやマウスと出力のためのディスプレイ、それにブラウザ機能だけがあればよい。手元のPCに計算能力はなくてもよいのだ。
それにもかかわらず、現在のPCは、かつてのスーパーコンピューターを上回るほどの能力を持つCPUを搭載している。こうしたものが本当に必要なのかどうかは、大いに疑問だ。ウィンドウズのXPもⅤistaも、不必要な機能をたくさん抱え込んでいるために、重く遅くなっているとの批判がある。しかも、利用者は、そのためにコストを支払っている。
多くの利用者の希望は、おせっかいな機能をできるだけ減らし、その代わり軽く快適に動くPCだろう。実際、最近のパソコン雑誌の特集記事の多くが、「余計な機能を削ぎ落とすためにどうしたらよいか」を指南している。
Special Topics
バックナンバー
- 最終回
- 信頼に基づくクラウド・コンピューティングが未来をつくる (2008年11月29日)
- 第48回
- 「Gmail『超』メモ術」で実現する意外なデジタルオフィス (2008年11月15日)
- 第47回
- Gmailの「下書き」機能をフル活用した画期的な情報整理術 (2008年11月08日)
- 第46回
- ここまできた! ビジネスユースを狙う「セールスフォース」や「アマゾン」のクラウド (2008年10月25日)
- 第45回
- IBMやマイクロソフトも追随せざるをえない 「クラウド・コンピューティング」の潮流 (2008年10月20日)
- 第44回
- GmailやGoogle appsに見られる 「クラウド・コンピューティング」という新たな方向性 (2008年10月14日)
新着トピックス
- News&Analysis
- 苦境の地方空港に追い討ちも? 火種くすぶる「ハブ空港」議論の真実
- 岸博幸のクリエイティブ国富論
- 日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!
- 追跡!AtoZ ~いま一番知りたいテーマを追う!超リアルドキュメント
- 大ヒット商品が続々「特許切れ」へ。 2010年以降、もう「新薬」は生まれない!?
- チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
- エコポイントがなくても人気は絶大? 想像以上に盛り上がる「エコ住宅」ブーム
- 働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
- 手足のひび割れと関節痛が同時に!? 骨の変形をも引き起こす皮膚病の正体
- 献魂逸滴 極上の日本酒を求めて
- 信濃鶴――伊那谷から飛来した「鶴」は高CPで香り高き純米酒
- 経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”
- 人民元切り上げ拒む中国のエゴに、 日本政府はしたたかで賢い対応を
- ツイッター+αのつぶやき企業戦略
- 特別対談!津田大介vs本荘修二(上) ツイッターで伸びる会社、沈む会社
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
スキル・キャリア
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 金融市場異論百出
- 超インフレ国はジンバブエのみ 世界が学んだ「最低限の規律」
- 週刊ダイヤモンド 企業特集
- ユニー 前村哲路社長インタビュー 「現場の自由裁量権を広げ 個店経営のウエートを高める」
- 『社会貢献』を買う人たち
- キレイになって、途上国を支援! 女性の飽くなき「美への探求」が生んだ、一石二鳥のビジネスモデル
- 山崎元のマネー経済の歩き方
- 対等合併の呪
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 総需要の減少をもたらした2つの要因 ──今こそ必要なデフレの経済学(5)

- 岡野工業・岡野代表エッセイ
- “神の手をもつ男”岡野雅行氏が日本の物づくりに「常識を捨て去れ」と喝!

- DOL編集部のツイッターを開始
- 最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。
Business information
著者プロフィール
- 野口悠紀雄
(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『「超」整理法』シリーズ、『資本開国論』『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』等がある。 野口悠紀雄ホームページ
------------最新経済データがすぐわかる!------------
★『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』★
この連載について
本当に使える情報源を求めて、野口教授が広大なインターネット・ワールドを駆けめぐる。各種情報源の特徴から使い勝手まで、辛口コメントを交えて大公開!
急激な円高と止まらぬ株価下落。日本経済はいまや深刻な危機に。「サブプライムショック」はあくまでも引き金に過ぎない。根本的な原因は、あり得ない円安・低金利政策にある。経済政策の無能を厳しく指弾する痛快経済エッセイ! 1680円(税込)
- DOLブックストアで購入
購入金額に関わらず送料無料! - Amazonで購入
アクセスランキング
- 2位
- 週刊・上杉隆
- 元秘書として鳩山邦夫氏に苦言を呈す 信念の見えない離党に意味はあるのか?
- 3位
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 4位
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 5位
- 評価が上がる!上司を味方にする技術
- 上司に好かれる話の聴き方、嫌われない質問の方法
Recommend 話題の記事
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 田中秀征 政権ウォッチ
- 鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 山崎元のマルチスコープ
- 官民一体の海外ビジネス受注期待を怪しむ
- ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
- この閉塞感はどうにもならないのか? 組織の成果を最大化する人事制度とは
- SPORTS セカンド・オピニオン
- 大リーグ球団にとっての、日本人選手の価値を考える
- 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
- 参院選がどう転んでも、 政界の「世代交代」加速は止められない

- 【PrimeTime】トップインタビュー
- 「サービス力は人財力と組織力の掛け算」~百瀬次生・日立電子サービス社長

- 【THEProject】プロダクトとサービス最前線
- 現実味帯びる「IFRS」。最新会計基準対応処理システムを低コストで提供
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。




