【第25回】 2009年11月09日
国際競争力を落とした日本のエレクトロニクス産業の明日
日本にいるはずの友人からメールが届いた。韓国からだった。サムスンに転職したという。日本の大手エレクトロニクス企業からスタンフォード大学に派遣されて、博士号をとった優秀な技術者だった。数年前に日本に帰国してからは、ディスプレーの最先端技術の開発を担っていた。40歳代後半になってからの転職である。サムスンでの報酬は聞いていないが、日本の給料をはるかに超える報酬をもらっているのは間違いない。
数年前までは、アメリカの電気製品量販店(例えばBest Buy)に行くと日本メーカーのカラーテレビが競うように陳列されていた。ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、日立、三菱といった日本メーカーの独壇場だった。サムスン、LGといった韓国メーカーはマイナーだった。
だが今は様変わりした。サムスン、LGがダントツのトップ・ブランドで、その次にソニー、パナソニック、シャープ、東芝と続く。日本勢の存在感はあっという間に薄れた。Vizio、Insignia、Dynexといったノー・ブランド製品も出てきている。
量販店の携帯用音楽プレーヤー売り場では、アップルのiPodの独壇場である。かつてはソニーのWalkmanの独壇場だった。筆者は必死になってWalkmanを探した。大きなアップル・コーナーの裏側にWalkmanがたった一機種寂しく陳列されていた。iPod、iPhone(携帯電話機)の圧倒的な攻勢を受けてWalkmanはもはや「死語」になりつつあるように見える。
なぜ日本メーカーはこんなに勢いを落としているのだろうか。いや、むしろ韓国メーカーやアップルはどうしてこのような競争力をつけたのであろうか。
韓国もアップルも
死の瀬戸際から復活した
2000年ごろシリコンバレーにおられる韓国人の元教授から次のような話を聞いた。同教授は50年代にソウル大学を卒業し、その後スタンフォード大学で博士号をとり、サムスンの顧問を長く勤めてこられた方だった。
「日本メーカーは恵まれている。日本の家電市場が大きいから、国内だけで食っていける。だが、人口5000万人足らずの韓国ではそうはいかない。だから韓国メーカーは海外に打って出て、海外市場で勝負するしかないのだ」
元教授は次の事情もあると付け加えた。「1997年のアジア通貨危機で韓国経済は破綻寸前の状況に追い込まれた。IMFが介入してきて財閥解体を行い、主要各国の緊急融資を得て、かろうじてデフォルト(国として借金を返済できなくなること)を免れた。あのような恥ずかしいことを二度と起こしたくないと誓ったのだ」
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著者プロフィール
- 安藤茂彌
(トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学客員教授)
1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。 VentureAccessホームページ
この連載について
シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。
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