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だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

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「WBC」監督を巡る愚かなドタバタ劇

 「日の丸の重さ」を強調し、「金メダルしかいらない」と豪語しまくった北京オリンピック日本代表監督・星野仙一監督は、4位に終わったことについて、責任は認めながらも現場指揮官としての実力の無さを厳しく自己批判、自己反省することはなかった。また、星野氏を監督に選んだ日本野球会議も組織としての反省や総括をしていない。

 そうしたなかで、来年3月に開催される第2回「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の日本チーム監督を巡るドタバタ劇が始まった。

星野監督を押し通す
渡辺恒雄氏のシナリオ

 その劇の演出者は、読売新聞グループ会長の渡辺恒雄氏(巨人軍会長)、主役は星野氏。北京オリンピックの段階からWBCにいたるまで「星野監督」で押し通す、というのが渡辺氏の描いたシナリオだったに違いない。その証しは、北京オリンピックで金メダルどころかメダルを逸する不甲斐ない成績に終わったにもかかわらず、渡辺氏が「星野君以上の人物はいない」と断言したことだ。

 渡辺氏には、自分の描いたシナリオ通りに押し通して当然だ、という居直りがある。その裏には、読売新聞がJOC(日本オリンピック委員会)のオフィシャル・パートナー(3億円のスポンサーシップ契約)であり、WBCのアジアラウンド(地域予選)の主催者ということだ。しかも、渡辺氏は、メディア企業の利益追求の企図から、監督人事のポイントを勝敗よりも一般民衆の関心を集められるかどうかという点に置いている。

 プロ野球界には、渡辺氏のシナリオに対する反発や不満は燻っている。しかし、9月1日に開かれた日本野球機構(NPB)の実行委員会では、「監督選びのルールを決めるべきだ」などの意見も出されたが結論は出ず、結局、「加藤良三・コミッショナーに一任」ということで終わった。

 就任してまもない加藤氏に事態をうまく収拾する力量があるのかどうか、見当もつかない。ただ、確かなのは、誰に決めるにしても、北京オリンピックの反省や総括を抜きにして、NPBが勝手に監督を決めるというドタバタ劇の本質は変わらないということだ。

議論されることのない
WBCの本質

 NPBやメディアは、WBCを規定のものと視るだけで、大会のあり方について根本的な疑問を投げかけることを、いまや一切していない。

 そもそも2年前の第1回のときから、NPBは大リーグに振り回されっぱなしだった。各球団ともペナントレースに向けての最終調整を行なう重要な時期であることを無視して、3月開催が一方的に決められた。そのほか、大会のルール、審判の選定など問題山積のまま大会が開催された。

 しかし、試合の組み合わせの有利さも手伝って日本チームが優勝したことで、NPBからメディアにいたるまで舞い上がってしまい、WBCの山積した問題をすべて忘れ去ってしまったのである。

 それゆえ、改めてWBCの本質を問う必要がある。

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著者プロフィール

谷口源太郎
(スポーツジャーナリスト)

1938年鳥取市生まれ。講談社、文芸春秋の週刊誌記者を経て、フリーランスのスポーツジャーナリスト。スポーツを社会的視点からとらえた批評をてがける。市民の立場からメディアを研究する「メディア総合研究所」会員。フェリス女学院大学非常勤講師。著書「スポーツを殺すもの」(花伝社)、「巨人帝国崩壊」(花伝社)、「日の丸とオリンピック」(文芸春秋)など。

この連載について

底の浅いスポーツ報道に高騰する放映権料、エージェントの暗躍やスポンサーと協会の利害関係、そしてスポーツを利用する政治家まで。スポーツは純粋な「競技」から、完全に「ビジネス」と化した。スポーツを殺したのは一体誰なのか。暴走するスポーツバブルの裏側を検証する。

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