【第24回】 2010年01月08日
パナソニックは本当に業績回復した?
決算短信では見抜けない“改善”の真相
前回コラム(ソニー、富士通、NEC編)では、経済学理論からのアプローチによって「健全なる赤字決算」の分析を試みた。返す刀でパナソニックと日立(日立製作所)に挑もうとしたのだが、振り下ろす前に、筆者のほうから刀を納めることにした。正面から斬り込んでも、空を斬るばかりと思えたからである。
それにしても、電機業界の惨状には目を覆うばかりだ。どうしてこんな業績になってしまったのであろうか。
かつては「あっかっる~い、なっしょっ、な~る」や「このぉき、なんのき、きになるき」がお茶の間のテレビから溢れ出て、松下製や日立製というだけで家電製品が買われていた時代があった。マーケティング論でいう「イメージ戦略」の成果であり、消費者の購買意欲に多大な影響を及ぼしていた。
イメージ戦略の基本は、独占市場を築いていることが必要条件だ(十分条件ではないことに注意)。独占市場といえば例えば、「私鉄王国」といわれる関西地域ではどうなっているのか知らないが、関東地方ではJR東日本が圧倒的なシェアを築いている。
山手線を核として独占市場を形成しているJRの場合、中央線や東北上越新幹線といった個々の商品名(路線名)を宣伝する必要はない。旅行などのイメージを利用者に植え付けるだけで足りる。
東京駅で最終の東海道新幹線に乗車しようとしたとき、ホームのあちこちで別れを惜しむカップルを見て「これが、シンデレラ-エクスプレスというものか」というイメージを膨らませた人も多いだろう。
パナソニック、日立も
「イメージ戦略」から「消耗戦」へ
究極のイメージ戦略としてよく引き合いに出されるのが、世界のダイヤモンド市場を独占しているデビアス社だ。ダイヤモンドという商品そのものを宣伝するのではなく、「永遠と愛の象徴」というイメージを喧伝(けんでん)することによって、女性のハートを見事に掌握している。
パナソニックも日立も、かつてはデビアス社を真似て、社名を中心としたイメージ戦略がメインだったのだろう。当時は東西の両横綱と称されて、安定した地位を確保できていたからだ。
ところが、いまは群雄割拠の時代。個々の商品名のほうを連呼するCMが多くなり、企業名と結びつけるのが難しくなった。現在のCMは「企業名と商品名」を組み合わて、やっとの思いで企業名のほうも覚えてもらう、というものが圧倒的に多い。「線と点」と表現したほうがいいだろう。いまだにイメージ広告という「表面張力」だけで勝負できるのは、電力会社くらいだろうか。
線と点の一騎打ちでは、電機業界全体が価格競争による消耗戦に陥るのもやむを得ないといえる。
Special Topics
バックナンバー
- 第29回
- “不況に強い”にも関わらず売上急減!? 医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS (2010年03月19日)
- 第28回
- 不況と電子化が業績に直撃! キヤノン&リコーの来し方行く末 (2010年03月05日)
- 第27回
- 東1上場の98.4%が「ドンブリ原価計算」!? 大企業が“正しい決算書”を作らない理由 (2010年02月19日)
- 第26回
- “トヨタ黄色信号”はリコール前から点滅!? 株価指標でわかる自動車業界の優勝劣敗 (2010年02月05日)
- 第25回
- なぜ日本の電機メーカーは 韓国製品に完敗してしまうのか (2010年01月22日)
- 第24回
- パナソニックは本当に業績回復した? 決算短信では見抜けない“改善”の真相 (2010年01月08日)
Pick Up
新着トピックス
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 「円高こそデフレの原因」説の怪しさ ──今こそ必要なデフレの経済学(6)
- 日本を元気にする企業の条件
- ホンダ、ヤマハ発、味の素、住友化学… 日本企業にもあるBOP市場開拓のネタ
- 『週刊ダイヤモンド』特別レポート
- 市民による市長リコールもまだできない 阿久根市政“大混乱”の責任は誰にある?
- News&Analysis
- 苦境の地方空港に追い討ちも? 火種くすぶる「ハブ空港」議論の真実
- 岸博幸のクリエイティブ国富論
- 日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!
- 追跡!AtoZ ~いま一番知りたいテーマを追う!超リアルドキュメント
- 大ヒット商品が続々「特許切れ」へ。 2010年以降、もう「新薬」は生まれない!?
- チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
- エコポイントがなくても人気は絶大? 想像以上に盛り上がる「エコ住宅」ブーム
- 働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
- 手足のひび割れと関節痛が同時に!? 骨の変形をも引き起こす皮膚病の正体
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
スキル・キャリア
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
- “不況に強い”にも関わらず売上急減!? 医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS
- 金融市場異論百出
- 超インフレ国はジンバブエのみ 世界が学んだ「最低限の規律」
- 週刊ダイヤモンド 企業特集
- ユニー 前村哲路社長インタビュー 「現場の自由裁量権を広げ 個店経営のウエートを高める」
- 『社会貢献』を買う人たち
- キレイになって、途上国を支援! 女性の飽くなき「美への探求」が生んだ、一石二鳥のビジネスモデル
- 山崎元のマネー経済の歩き方
- 対等合併の呪

- 岡野工業・岡野代表エッセイ
- “神の手をもつ男”岡野雅行氏が日本の物づくりに「常識を捨て去れ」と喝!

- DOL編集部のツイッターを開始
- 最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。
Business information
著者プロフィール
- 高田直芳
(公認会計士、公認会計士試験委員/原価計算&管理会計論担当)
1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月より公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。
「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。
------------ファイナンスの基礎知識が満載!------------
★高田直芳ホームページ『会計雑学講座』★
この連載について
大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。
アクセスランキング
- 2位
- 週刊・上杉隆
- 元秘書として鳩山邦夫氏に苦言を呈す 信念の見えない離党に意味はあるのか?
- 3位
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 4位
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 5位
- 評価が上がる!上司を味方にする技術
- 上司に好かれる話の聴き方、嫌われない質問の方法
Recommend 話題の記事
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 田中秀征 政権ウォッチ
- 鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 山崎元のマルチスコープ
- 官民一体の海外ビジネス受注期待を怪しむ
- ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
- この閉塞感はどうにもならないのか? 組織の成果を最大化する人事制度とは
- SPORTS セカンド・オピニオン
- 大リーグ球団にとっての、日本人選手の価値を考える
- 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
- 参院選がどう転んでも、 政界の「世代交代」加速は止められない

- 【PrimeTime】トップインタビュー
- 「サービス力は人財力と組織力の掛け算」~百瀬次生・日立電子サービス社長

- 【THEProject】プロダクトとサービス最前線
- 現実味帯びる「IFRS」。最新会計基準対応処理システムを低コストで提供
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。




