過日の総選挙で圧勝した民主党。308もの圧倒的議席を確保し、「脱官僚」「政治主導」の政権運営を目指す。 |
308議席――。8月30日に行なわれた衆議院選挙での民主党圧勝により、政権交代することになった日本の政治。「脱官僚」「政治主導」を掲げる民主党は、本当に政治を変えることができるのか?
取材班は、政権交代で民主党はどう動くのか、追跡を開始した。
記者団に向かって親指を突き上げ、政権交代への意欲を見せる鳩山代表。新政権発足に向け、連日多忙なスケジュールを送っている。 |
選挙の翌日、新政権発足に向けてさっそく動き出した鳩山代表。党本部に入る際、記者団に向かって親指を突き上げるしぐさをみせ、新たな政権運営への意欲を語った。
「一番大事なことは国民の意思。国民の皆さんの望むような政権運営を果たしていきたい」
政権を担う立場になった民主党議員1人1人にも、さっそく変化が起き始めていた。今回の衆議院選挙でマニフェストとりまとめの中心となった福山哲郎氏(政調会長代理・参議院議員)。議員会館の事務所で新聞に目を通しながら、308議席という現実の重みを受け止めていた。
「見れば見るほど、大変な結果。ドンと、こうお腹に重たいものが入ってきた感じがする」
政権交代で揺れる霞ヶ関
とまどう官僚たち
今年4月に廃止された生活保護の母子加算の早期復活を目指す山井和則氏(ネクスト厚生労働副大臣・衆議院議員)。山井氏はさっそく、厚生労働省の担当者を呼び出し、やりとりを始めていた。
山井氏:「国民の約束違反になりますからね。早晩、何が何でもこれは復活させたい」
厚労省担当者:「ご指示いただく大臣のもとでご判断を仰ぎたい」
選挙で掲げたマニフェストをできるだけ早く実現し、国民の期待に応えたい民主党。選挙後すぐに官僚との折衝を始めるなど、水面下での動きがはやくも始まっていた。
民主党が「脱官僚」「政治主導」を掲げ、これまでの行政システムを刷新しようとする中、官僚とはどう新たな関係を築いていくのか? また、官僚は新たな政権とどう向き合っていくのか? 取材班は、農林水産省の事務方トップ、井出道雄事務次官を直撃した。
取材班:「政権交代が決まりましたが、いま、どのように受け止めていますか?」
井出次官:「記者会見で言ったとおり」
表情をこわばらせ、足早に自室へと入る井出事務次官。いま、井出事務次官は、民主党が掲げる農業の戸別所得補償制度への対応という課題に直面していた。
農業の戸別所得補償制度とは、コメ農家から畜産農家に至るまで、戸別に所得を補償する政策だ。選挙前、井出事務次官は記者会見で「現実的ではない」と、この政策を痛烈に批判していた。ところが選挙後の会見では、「この課題(戸別所得補償制度)について、どう取り組んでいくかということで、スタートするのだと考えている」と発言を一転させたのだ。