最近、日米の株価がずいぶん戻ってきた。率直に言って、これほど早いペースで戻ってくるとは筆者も思っていなかった。株価が回復してくると、ムードは変わる。つい最近まで「今年は全く駄目」と悲観的だったエコノミストたちの間からも「年後半には多少回復してくるのではないか」「来年前半には良くなるだろう」といった予測が多く聞かれるようになってきた。

 しかし、このまま日米で株価が上向き、両国の景気が急速に回復に向かうと考えるのは早計だろう。もともとの原因であるアメリカの金融問題の着地点がいまだはっきりと見えていないからだ。

 現在のアメリカの金融・経済は、日本の過去との比較では、1999年の後の何れかの段階に近い状況にあるのではないか。1999年の日本は“収益資産”を買う上では底値買いの良い買い場だったし、株価も実際に上がっていた。しかしその後日本経済に何が起きたかと言えば、ネットバブルの崩壊や金融・経済政策の拙さもあって、2000年、2001年、2002年とスランプに陥り、不良債権問題が再び深刻化した。この当時の不良債権は、金融危機後の不況から発生したものが多かった。最近の米銀の決算にも、そういう傾向が見られる。証券部門の損失が縮小し、第1四半期については、トレーディング益を稼いで、好決算を出した金融機関もあるが、一方で消費者信用関連の貸し倒れ費用が相当大きくなってきており、かなりの引当金を計上している。パターンとしてはあの頃の日本に似ている。

 一般に、金融問題を解決する上で重要なことを二つにまとめるならば、それはリクイディティ(流動性)とソルベンシー(支払い能力)だ。リクイディティは主に中央銀行が対処する金融システム全体の問題だが、ソルベンシー対策は、ロスを確定させて、必要な資本を手当てして信頼を得ることなので、個々の金融機関単位で解決しなければならない。中でも、ロスの部分に関する情報がどれくらい納得的に提供されるかが決定的に重要な要因だ。今、アメリカの当局が行っているストレステスト(健全性審査)に求められているのは、まさにこの役割だ。だが、後述するように、肝心な情報公開の度合い、損失の見積もり具合が未だ見えてこないのである。

 「ストレステスト」という単語でネットの記事を追いかけてみると、アメリカ政府は当初、審査結果の発表について積極的ではなかったようだ。恐らく、個々の銀行の利害に深く関わる情報を公表して、取り付け騒ぎが起きたり、株価が下がったりした際に責任を取りたくないという意識が働くからだろう。ただ、この件に関する秘密主義に対しては批判もあり、アメリカ政府もある程度詳細な情報を発表しなければならないことが分かってきたようだ。ロイター通信の記事によると、4月24日にはストレステストの概要を発表して、5月4日になんらかの形で審査結果を公表する予定らしい。