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山崎元のマネー経済の歩き方

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発想法としての「ベーシックインカム的」

 近年、ベーシックインカムという言葉が時々話題になる。すべての国民に働き・稼ぎ・資産額などをいっさい問わず一律に一定額を給付する制度のことだ。たとえば、1人毎月5万円なら、4人家族の場合毎月20万円が給付される。豊かとはいえないが、生きてはいけそうだし、家族の誰かが働くことを考えると十分生活できそうだ。

 働いていない人にも払うとか、誰にでも一定額を渡すというと、「究極のバラマキだ」「共産主義だ」「怠けることを奨励するのか」といった感情的反発をする向きもあるのだが、これは案外よくできた仕組みで、自由主義的な資本主義とも相性がいいのだ。

 たとえば、月5万円のベーシックインカム(非課税)と30%の所得税率を考えてみると、年間200万円の稼ぎまでは国からの受け取りのほうが多いが、200万円未満でも以上でも、「より稼ぐほうが、可処分所得はより増える」という関係が満たされている。ベーシックインカムは、算術的には、かつてミルトン・フリードマンなどが主張した「負の所得税」とおおむね同じなのだ。働くことへのインセンティブはどの所得レベルでも保たれる。この点は、ある程度稼げるようになると打ち切られる生活保護よりも合理的だ。

 4人家族で稼ぎ手の年収が200万円なら、世帯の年間可処分所得は380万円になる。現在いわゆるワーキングプアでも、所帯も子どもも持てるのではないか。

 最低賃金を上げると、雇用が減る可能性があるが、稼ぎが少ない人をベーシックインカムでサポートするなら、そのような弊害がない。また、役人がかかわる条件審査がないので、生活保護の申請で苦労することも、精神的な苦痛もない。おカネの使い道が個人の自由なのもいい。行政の手間が省けるから、行政コストも下がる。

 お金持ちにもおカネを渡すことに反発する向きもあるが、お金持ちからは十分な税金を取るので差し引きに問題はない。所得税と差し引き清算してもいいだろう。

 現在の制度では、国民年金の保険料を払い続けた人の年金給付額が生活保護の支給額よりも安いような納得しがたいことが起こるが、年金と生活保護をベーシックインカムに置き換えてしまうと、そのようなことは起こらない。

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著者プロフィール

山崎 元
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。

この連載について

12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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