家やマンションなどの不動産物件で取り扱いが厄介だと言われる事故物件。孤独死や自殺、他殺などが起きた物件は、不動産価値も下がり、値が付きにくいと勘違いしている人も少なくない。しかし、事故物件でもニーズはあり、適正価格で売買が可能だ。不動産の相場と、なるべく高く売却するための手法を紹介していこう。
自殺や他殺の「告知義務」はケースごとに判断
自殺や他殺が起きた不動産を取り扱うときに、買い主や賃借人へ「告知義務」が発生する。黙って売ったり、貸したりすると告知義務違反になり、訴訟になる可能性が高い。
事故物件の告知義務があるのは、次のようなケースだ。しかし、その線引きが明確でない部分も少なくない。
以下は、一般的な認識をまとめたものだ。
<事故物件として告知義務がある場合>
●自殺・心中(敷地内、室内などで自殺)した場合
●他殺の場合
<事故物件ではないが、告知したほうがよい場合>
●孤独死(発見がかなり遅れ、遺体の痕跡などが残り、リフォームが必要な場合)
●長期療養後、室内で病死した場合
<告知義務にはあたらない>
●孤独死(独り暮らしの自然死)
●病死(自宅療養などで亡くなった自然死)
●急性疾患などによって死亡(突然死など)
●住人が交通事故など、別の場所でなくなった場合
このように、事件性の有無や、発見された時の状況などを加味しながら、重大な事象と判断された場合は、「告知義務がある」ことになる。しかし、きちっとした基準があるわけではない。
告知義務の期間は10年を目安にすることが多い
家やマンションの売買・賃借時の契約にあたり、「重要事項説明」で事故物件の場合は告知義務がある。果たして、告知しなければならない期間はいつまでなのだろうか?
かつては、「事故物件を最初に購入する、または借りる人には直接告知しなければならないが、それ以降には告知義務はない」という考え方があった。
しかし、実際にはこうした明確な基準はなく、それぞれの事情、評判、社会的影響を踏まえながら、総合的な判断するものといわれている。
たとえば、事故物件を事故後、はじめて借りる人に対して、告知義務が生じる。しかし、その賃借人が2年で解約したあと、新しい賃借人と契約になった時点で告知義務は必要だろうか?
これは不動産業者によっても見解が分かれる。
一般に、事故物件の告知義務は10年間を目安にすることが多い。そのため、事故から2年経過した物件を別の人が借りようとしている場合には、事故物件であることを告げるべきだろう。
実際、平成21年の大阪地裁で争った事故物件のマンション売買は、殺人疑惑の事件から約9年経過しており、売り主が告知しなかった。その結果、告知義務違反となり、契約解除、違約金請求の判決が出ている。ほかの裁判事例でも10年以内の売買・賃借においては、告知すべきだというのが司法の判断のようだ。
ただし例外的なのは、農山村地域など人と人とが密接に繋がっているケースだ。平成12年の東京地裁の裁判例では、土地の売買にあたり、50年前の殺人事件についての告知が必要とした。近隣住民と付き合いが密接な農山村地域だからこそ、約50年前の事件でも近隣住民の記憶に残っていると考えられるので「瑕疵となる」という判決だった。
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「事故物件」は不動産価値が低い?
建物そのものの不具合やキズは、修理すれば元に戻る。しかし、これから住むつもりの部屋で誰かが自殺したり、殺されたりした過去があると、心理的なストレスになる。そのため、どうしても事故物件は避けられやすく、不動産価値が下がる。では、どの程度下がるのだろうか?
相続・事業継承等問題のスペシャリストで、不動産取引にも詳しいコンサルタントの「アレース・ファミリー・オフィス」代表の江幡吉昭氏に聞いた。
「事故物件は、一般的に孤独死で相場の5%引き、自殺で相場の10%引き、他殺なら相場の20%引きなどといわれます。ただし、それは一律ではありません」
たとえば、孤独死の場合、それほど取引相場が落ちることはないのだが、発見が大幅に遅れると、床や壁が汚れてリフォームが必要になったり、臭いを取り除くための清掃が必要になることもあり、その分も負担すると相場から2割以上、下がることもある。
「不動産業者によっては、孤独死でも『半値でしか買い取れない』というケースも過去にあります」と江幡代表は話す。
江幡代表のクライアントが相続したマンションが事故物件となり、その物件の売却で相談を受けたケースでは、相場価格が3200万円相当のマンションが、孤独死だがリフォームが必要だということから事故物件扱いとなった。ある不動産買取業者は「1800万円なら買い取る」とのことだった。この金額が妥当なのか判断がつかないクライアントはなかばあきらめて、その値段で売却しようと考えていたところアレースのアドバイスを受けた。
「このケースではリフォーム代はそれほどかからず、孤独死だったので時間をかければ売れると話しました。事故物件は、一定数のニーズがあります。孤独死したとか自殺したとか、そういう事柄が気にならない人たちが探していることもありますね。特に医療関係者などは、仕事柄遺体と向き合うこともあり、事故物件だからといって嫌悪することも少ないようです」と、江幡代表は事故物件のマーケットについて説明する。
結局、通常の不動産仲介で売却に出したところ、4カ月かかったものの2900万円で売却ができたのである。
このケースでは、孤独死の中でも売却の難易度が高いものだったが、立地などもよかったからこそ、相場価格に近い金額で売却できたのである。不動産買取業者だと、どうして価格は低くなりがちだ。事故物件だからといって諦めず、不動産価値が低いと決めつけないで、適切な売却方法を取れば、高値で売れることもある。
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販売価格を抑えて買い手を広げることが重要
なお、リフォームをしてから売却した方がよいかどうかは悩むところだ。
「ケースバイケースですが、先の事故物件の場合は、リフォームをしませんでした。というのは、リフォームは、購入する側の好みにマッチするかが問題になります。現状のまま引き渡して、買い主の好みのリフォームをしてもらうほうがいい場合があります。売り主にしても手間がかからず、好都合です。リフォームをして販売価格を少し高く設定するより、現状渡しで販売価格を抑えたほうが、買い手が広がりやすいです。特に事故物件の場合、まず買い手を広げることが先でしょう」(江幡代表)
割安感があることで買い手を広げられるし、買い主側は割安だった分をリフォーム代に回せると意識が働くため、事故物件であることがますます気にならなくなるというわけだ。
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「買い主は、これからそこに住む未来の生活を描いています。リフォームすれば、いかに快適な生活が待っているかを説明することで、購買意欲を高めることもできます」と江幡代表。
まずは、複数の不動産業者に様々な角度から査定をしてもらって相場を知ることが大切になる。事故物件の不動産価値は、すべてが低くなってしまうわけではないのである。また告知義務についてどう考えるかについても意見を求めることで、各不動産会社の考え方を知っておこう。
まとめ
以上が、事故物件の相場と、高値で梅画するためのノウハウだ。最後にもう一度、振り返っておこう。
●事故物件の相場は、孤独死5%引き、自殺10%引き、他殺20%引きなどと言われる。
●事故物件だからといって、相場より大幅に割安にして売り急がない。
●リフォーム代をかけるより、割安感を出すことを優先。
●複数の不動産会社に見積りをとって検討する。
●事故物件、告知義務に関しての認識を聞いておく
なお、実際に事故物件を売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼して、じっくりと相場を把握し、焦らずに販売していくのがいいだろう。その際、「不動産一括査定サイト」などを活用すると、複数の会社に簡単に査定を依頼できるので便利だ。
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