china stringer network/Reuters 気掛かりな兆候を示している中国の小規模銀行は包商銀行だけにとどまらない

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 中国にはこういう作り話がある。ある男が「ここには300個の銀はありません」と書かれた看板の下に300個の銀を埋める。その男の隣人は銀を盗み、こうメモに残した。「隣人のワンは盗んでいません」

 中国北部の小規模銀行、包商銀行を先月、規制当局の管理下に置いたことについて、中国当局者は包商銀だけの問題で、小規模銀行全体の問題を示唆するものではないとの立場を断固として貫いている。明確なトラブルの兆候を目にしている市場は、当局の見方を信じていない。

 信用度の低い発行体の譲渡性預金証書(NCD)利回りは跳ね上がっている。NCDは一部の小規模銀行にとって、重要な資金調達手段だ。発行規模も大きく落ち込んでいる。市場は11日、落ち着きを取り戻したように見えるが、これも中国人民銀行(中央銀行)が不安視されている別の小規模銀行、錦州銀行を間接的に支援することに合意したからだ。

 具体的には、錦州銀行が発行した直近のNCDについて、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と似た仕組みである「信用リスク軽減ワラント(CRMW)」の発行を認めた。錦州銀行がデフォルト(債務不履行)した際には、人民銀の支援を受ける国有の信用保証会社が支払いを行う。錦州銀行の2018年報告書を担当した監査会社が辞任して以降、市場は同行を警戒していた。

 中銀による問題行への支援は、中国金融システムの欠陥を隠す弥縫(びほう)策にはなるかもしれない。だが、投資家が2018年に学んだように、「リスク拡散」は諸刃の剣だ。この中銀の対応措置が広く使われれば、将来により大きな問題を招く恐れがある。

 NCD市場が動揺したのは2つの明確な理由からだ。まず、中国における大半の短期融資に関する取り決めとは異なり、NCDは無担保だ。これは借り手がデフォルトした場合、損失が大きくなることを意味する。2つめは、気掛かりな兆候を示している小規模銀行は包商銀行にとどまらないということだ。バークレイズの5月の分析によると、包商銀行、錦州銀行の2行を含め、小規模銀行19行が2018年の年間報告書の公表を遅らせている。

 その中で最大の恒豊銀行は、資産規模が1兆4000億元(約22兆円)に上る。これに対し、3月時点の中国銀行業界全体の資産規模は276兆元だ。包商銀行が当局の管理下に置かれて以降、恒豊銀行のNCDに対する需要はさえない。恒豊銀行が10日発行した3カ月物NCDは、予定額20億元の11%にとどまった(ウインド調べ)。

 利回りは高止まりしているが、人民銀の措置により、投資家の不安はいったん和らいだ。錦州銀行がNCDの発行に成功したことで、11日時点における総発行額は1950億元と、わずか550億元にとどまっていた10日から大きく増えた。

 中国当局は、ダムの穴をふさぐ専門家であることが一番のとりえだ。長期的な解決法には見えないが、あまりに多くの穴がふさがれていることで、ダムがいつどこから決壊するのかを把握しづらくしている。

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