地域公共交通をAIオンデマンドで維持・拡大

物流業界と同じく、人手不足が喫緊の課題となっているのが、地域の公共交通だ。バスやタクシーではドライバーの高齢化が進み、約15年間で2万キロメートル以上ものバス路線が廃止される(※1)など、極めて深刻な状況である。

その課題解決のため、KDDIグループは高速バス事業者WILLERとの共同出資で22年4月にCommunity Mobilityを設立。「相乗り型オンデマンドサービス」で地域公共交通の効率化を図り、運行の担い手として1種免許ドライバーを活用する事業に取り組む。

相乗り型オンデマンドサービスとは、利用者がアプリで予約をすると、指定された時間にオンデマンド車両が指定の場所で利用者をピックアップし、目的地まで送迎するものだ。これを実現するため、Community Mobilityは「mobi」というAIオンデマンドアプリを開発。すでに全国30エリアで実証実験を行っている。

「このサービスを持続可能にするために欠かせないのが、ドライバーの確保です。そのため、1種免許ドライバーの採用や育成についても、各自治体やNPO、現地の地域交通事業者などと連携しながら一気通貫でサポートします」と語ったのは、Community Mobility副社長の松浦年晃氏である。

AIドローン、AIオンデマンド交通、物流DX――「モビリティ」に関連する業界課題・社会課題解決にどう取り組むかCommunity Mobility
代表取締役副社長
松浦年晃

具体的な取り組みとして例に挙げたのが、茨城県つくば市における相乗り型オンデマンドサービスの事例である。つくば市は、国のスーパーシティ構想に沿って街づくりを進め、人口増加率は全国の市で1位を誇る(※2)が、それでも公共交通のドライバー不足は非常に深刻だという。そこで、23年に相乗り型オンデマンドサービスの実証実験を実施。さらに25年1月からは、つくば市に土浦市、下妻市、牛久市を加えた4市で自家用有償旅客運送による実証実験を開始する予定だ。そのドライバー確保のため、24年10月に1種免許ドライバーを採用・育成する「ドライバーバンク」を提供する。

モビリティジャーナリストの楠田悦子氏は、この取り組みについて「1種免許ドライバーは、仕事によほど魅力がないと確保が難しい。つくば市の取り組みが全国のモデルになれば」と期待を示した。

AIドローン、AIオンデマンド交通、物流DX――「モビリティ」に関連する業界課題・社会課題解決にどう取り組むかモビリティジャーナリスト
楠田悦子

一方、利用する市民の立場から「Community Mobility には、1種免許ドライバーでも利用者が安心して乗れるような仕組みを整備してほしい」と要請したのは、つくば市の五十嵐立青市長である。「つくば市民から寄せられる不満の1位は公共交通についてです。長期的に持続可能な仕組みを整備することによって不満解消を目指したい」と語った。

AIドローン、AIオンデマンド交通、物流DX――「モビリティ」に関連する業界課題・社会課題解決にどう取り組むかつくば市
市長
五十嵐立青

モビリティ関連の課題解決に向けたKDDIグループの取り組みや、それを支える「WAKONX」への社会の期待は、今後ますます大きくなっていくに違いない。KDDIグループとしてもそれに全力で応えていく構えだ。

※1 出典:国土交通省「地域の公共交通リ・デザイン実現会議」とりまとめ資料
※2 出典:「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」(令和5年1月1日現在)
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