ドナルド・トランプ米大統領が支持するウクライナ和平計画を巡り、米国とウクライナの外交当局者が調整を続けている。事情に詳しい複数の欧州当局者によれば、最も困難な問題となっている領土割譲を巡っては、両国首脳が判断を一任される見通しとなっている。
週末にジュネーブで開かれた会合を後にした複数の米当局者は、「建設的な協議」が実施されたとし、修正案に楽観的な見方を示した。だが約4年間の消耗戦を経てもロシアが奪取できていないウクライナ東部の領土の扱いなどを中心に、重要な争点は依然として残っている。
ウクライナはドンバス地域の残りの領土を放棄することは、ロシアによる将来的な攻撃に対してウクライナを脆弱(ぜいじゃく)にすると主張。この領土の中には、戦略的に要塞(ようさい)化された都市が含まれる。
欧州の複数の外交当局者によれば、交渉担当者は米国の和平案におけるいくつかの争点で共通の立場を見いだし、提案された合意案を28項目から19項目に絞り込んだ。協議について説明を受けたこの中の一部当局者は、領土に関する問題については、今後それぞれの大統領が判断を下すことになると述べた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日、同国が前日にジュネーブで開かれた協議で「極めて重要な問題について、話し合いを続けることができた」と言及。その中でも最大の問題は、ロシア政府がウクライナから奪取した領土に関し、国際社会からの法的承認を求めている点だとした。
ゼレンスキー氏はまたスウェーデンの議員らとのビデオ会談で、「欧州が掲げる原則、すなわち国境は武力で変更されるべきではないということを支持することが重要だ」と発言した。
一方のトランプ氏は24日、トゥルースソーシャルへの投稿で、協議の進展について慎重ながらも楽観的な見解を示した。同氏は「ロシアとウクライナの和平交渉で大きな進展が本当に可能なのか???」と問いかけたうえで、「この目で見るまでは信じるべきではないが、何か良いことが起きているかもしれない」と述べた。
米国とウクライナは共に、最終的な枠組みには両国の大統領の署名が必要だと述べた。その中で協議の結果に関する米国とウクライナの代表団の公式声明には、異なる内容も含まれた。
ホワイトハウスは修正案について、「ウクライナの核心的な戦略的要件に意味のある対応をしている」ものだと説明。だがウクライナ側の要約はより控えめなで、「双方は、ウクライナの安全、安定、そして復興を確保するために協力を続ける用意があることを再確認した」としている。
また米国の案がウクライナの懸念を和らげれば和らげるほど、ロシアがそれを受け入れる可能性が低くなるという点も事態を複雑化させている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は24日、ウクライナに関する米国の提案は、その原案の形であれば合意の基礎となり得ると述べた。
ウクライナが和平案を受け入れるうえでの主な争点は、以下の通り。
米政府の案はウクライナに対し、防衛を強化している東部ドンバス地域を放棄するよう求めている。この中には戦略的に重要な都市も含まれる。ウクライナは現在も掌握しているドンバス地域の11%の領土を放棄すれば、ロシアが将来的にウクライナを攻撃しやすくすると述べている。だがこれは、ロシア政府が長年求めている停戦条件の一つでもある。
米政府の計画では、米国は放棄された領土をロシア領として認めるものの、その地域はロシア軍が立ち入ることを禁じられる非武装地帯となる。またロシアが現在占領しているドンバスの残りの部分については、米国はこれを「事実上」ロシア領として認めると同案はしている。
ウクライナと欧州にとって、ロシアが将来的に戦争を再開しウクライナの新たな領土を征服することが主な懸念となっている。米国の案は、これに対応するため米政府による安全の保証が含まれるかがカギを握る。
案ではロシアが将来的にウクライナを攻撃した場合、米国と複数の欧州の国が「決定的かつ協調的な軍事対応」に関与するとしている。だがその対応の範囲や強度、さらに米国がどのような役割を担うかについては明示されていない。
ホワイトハウスは23日、修正された枠組みには「安全の保証がさらに強化された構造」が含まれていると述べたが、それが何を意味するのかについては言及しなかった。
欧米各国は今のところ、ウクライナでの戦争への直接的な関与を避けてきた。ウクライナはその中で、新たな戦争が起きた場合、欧米のパートナー国がロシアの侵略を抑止または克服するのに十分な保護を提供しない可能性を懸念している。
案ではロシアがウクライナに新たに侵略した場合、ロシアに対する国際社会の制裁が復活し、同国が主張する領土の承認は取り消されると規定している。
米国案では、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)およびその集団防衛協定への加盟することが阻止される。またNATOが今後拡大しないという期待を生じさせるものでもあり、NATO軍によるウクライナ駐留は認められない。
ウクライナがNATOに加盟できる可能性は低いものの、同国の憲法では依然として加盟が目標に掲げられている。
マルコ・ルビオ国務長官は23日の協議後、NATOおよび欧州連合(EU)に直接関係する問題は当面棚上げされていると述べた。だが欧州側は、和平合意後に安全を保証する部隊をウクライナに派遣できる文言を求めており、これにはロシア政府が反発している。欧州側はこの部隊について、NATOの指揮下に置かれることはなく、平時にはウクライナに入ることは許されないとしている。
フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領はゼレンスキー氏との会談後、「交渉は一歩前進したが、依然として解決すべき主要な問題が残っている」と24日にXに投稿。「EUまたはNATOの権限に属する決定は、別の場でEUおよびNATOのメンバーによって議論され、決定されるだろう」とした。
米国の案では、ウクライナの平時の軍隊規模は60万人に制限されるが、欧州の案では80万人とすることが提案されている。この規定は、ウクライナが自国を防衛する能力にとってそれほど大きな障害ではない。同国は戦前、はるかに小規模な常備軍を有していた。ウクライナは軍隊の規模に関する数字を公表していないが、1月には88万人だったとゼレンスキー氏は述べている。
また大規模な平時軍を維持することはウクライナの予算を圧迫することにつながる。だがいかなる合意であっても、ウクライナがこのような条件を受け入れるためには、欧米からの強力な保証も含まれる必要がある。
米国案では、2022年にウクライナへの全面侵攻を開始したロシアの軍隊には制限を設けられていない。
米国案では、2022年初めに凍結された約3000億ドル(47兆円)のロシア政府の資産について、米国主導のウクライナ復興計画の一部および米ロ共同投資プロジェクトの一部として利用することを求めている。
だが資金の大部分はEUの制裁下で凍結されており、米国による管理は制限されている。欧州側は全ての資金をウクライナのために使用することを望んでおり、資産を担保としたウクライナ向けの融資を進めている。また複数の欧州当局者は週末の間に、資産に関する決定はEUの直接関与なしには行えないと述べた。
ゼレンスキー氏は24日、ロシアの資産を利用して侵略者に戦争の代償を払わせるよう欧州各国に要求。「ロシアへの圧力を維持するべきだ。ロシアは依然として、人々を殺している」と述べた。



