香港の高層住宅群「宏福苑」で先週、火災が起き、少なくとも151人が死亡した。当局の対応を見ると、かつては自由な都市だった香港が日ごとに中国本土のようになりつつあることが分かる。
当局は火災に関する言論を萎縮させようとしている。市民社会の有力者らが、火災への対応について話すため、2日に記者会見を開く予定だった。しかし地元報道によると、参加予定の1人だった弁護士のブルース・リウ氏が香港警察の国家安全処から「面談に呼ばれた」ことを受けて、会見は中止されたという。民主化推進団体「香港民主民生協進会」の元代表であるリウ氏は、同日中に警察署を後にしたと報じられている。
警察はまた、11月29日に学生のマイルズ・クワン氏を拘束した。クワン氏は政府への請願書で、火災につながった可能性のある利益相反や規制当局の怠慢に関する調査などを求めていた。われわれの取材によると、彼はその後釈放されたという。
「香港の自由を守る委員会財団」によると、独立調査を要求した民主派の元区議ケネス・チョン氏が国家安全処に拘束された。このほか、氏名不詳のボランティア1人が火災に乗じて政府への反感をあおったとして拘束されたと報じられている。これは、単に政府を批判したということだ。
香港市民は、これほどの被害を出す事態になった理由について、当然の疑問を抱いている。この大火災が発生する前に、宏福苑の住民は何度も安全上の懸念を示していた。当局は現在、建物を覆っていた保護ネットの一部が難燃性基準を満たしていなかったと述べている。可燃性の建築資材の使用や警報装置の故障に言及している報道もある。
10年前なら、香港紙「蘋果日報(アップル・デイリー)」の粘り強い記者たちが住民の不満を受けて調査し、悲劇が起きる前に不正を暴くことができたかもしれない。しかし、当局は2020年に同紙の創業者であるジミー・ライ(黎智英)氏を国家安全維持法違反の疑いで逮捕し、後に同紙を廃刊に追い込んだ。同氏はそれ以来、でっち上げられた罪で収監されている。
当局は火災に関連し、言論とは関係のない理由で少なくとも13人を拘束した。これには、警察幹部が「重大な過失」があるとした建設会社の幹部らも含まれている。彼らには何らかの責任があるのかもしれないが、迅速な拘束は「いつもの顔触れの一斉摘発」を思わせる。これは権威主義的な政権が、市民の非難の矛先となるスケープゴートを必要としているときに使う手法だ。
香港政府当局に落ち度があったことを示す初期段階の証拠が出てきている。ロイター通信の報道によれば、香港の労働当局は宏福苑の住民に対し、火災のリスクは「比較的小さい」と説明していた。消防当局は建設現場で防火態勢の検査を実施し、執行措置をとることができるはずだが、その当局者たちはどこにいたのか。
消防当局は香港の保安局の管轄下にある。そして保安局の鄧炳強(クリス・タン)局長は、反政府活動を禁止する国安法の適用責任者でもある。中国政府は11月29日、「大災害を利用して香港の治安を乱そうとする反中分子と混乱助長分子」は、国安法の下で「厳罰」の対象になると警告した。原因の追究も批判も認めない当局の下では、香港市民が頼れる手段はほとんどない。



