金融政策は雇用政策
社会を安定させる効用もある

 本コラムでは、金融政策が雇用に結びついていることをたびたび書いてきた。例えば、2018年7月12日付『「記録的な雇用改善」はマクロ経済政策の正しさを示している 』である。

 金融政策と雇用の関係を図式で表せば、次のようになる。

 金融政策→実質金利変化→GDPギャップ変化→雇用→物価変化

 ここで、GDPギャップ変化→雇用は、実質国内総生産の成長率と失業率の変化に負の相関がみられるという経験則、オークン法則そのものだ。実質GDP成長率が上昇すると失業率は低下する。

 雇用→物価変化は、賃金上昇率と失業率に負の相関があり、さらに失業率と物価上昇率は密接な関連があるとするフィリップス曲線を示す。

 この図式の中で、金融政策→実質金利変化は、財政政策→有効需要変化と置き換えてもいい。

 そしてさらに、金融緩和の結果、雇用が増加すると、社会安定につながる。

 失業率が低下すれば自殺率が低下するのと同様に、失業率の低下は犯罪率の低下とも相関があるからだ。

 つまり、職が得られれば、経済生活問題による自殺は減り、犯罪も減る。こうしたことは、過去のデータからも確認できる。つまり、金融緩和すれば、自殺率や犯罪率は減少する。

 こうして金融政策は、雇用創出という経済効果のほか、その副産物として社会を安定させるという効用がある。このことはもっと知られてもいいことだ。

「世界の常識」と違う日本
インフレ目標にも誤解

 だが、そもそも日本では金融政策が雇用政策であるということすら認識されていない。

 昨年10月に出された白川方明・前日本銀行総裁の著書『中央銀行』にも、金融政策と雇用との関係の記述は一切ない。

 このことは2018年11月1日付本コラム『白川前日銀総裁は「デフレ大好き人間」と、著作を読んで納得した』でも書いた。

 また金融政策と社会安定の関係についての日銀の認識も、はっきり言えば心もとない。