新小岩駅快速線ホームで使用が始まったホームドア。「自殺の名所」という扱われ方をされてしまい、自殺者が増えたために設置を急いだと見られるが、そもそもホームドアは自殺防止が主目的ではない。なぜ1.3メートルという中途半端な高さのドア設置が進められているのか、設置にはどんな困難があるのかなど、ホームドアを巡る疑問に迫ってみた。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

「自殺の名所」扱いに困惑
新小岩駅ホームドア設置の原因

ホームドアは本来、視覚障害者などがホームに転落したり、電車に接触する事故を防ぐために導入されているものです。
下から上まで全面的に遮るホームドアの場合、重量がかさむために駅の補強工事が必要になるなど、設置が非常に大掛かりになってしまう Photo:PIXTA

 今月8日から総武線新小岩駅の快速線ホームでホームドアの使用が始まった。JR東日本は2015年3月に「山手線以外の駅へのホームドア整備については、乗降人員や目の不自由なお客さまのご利用が多い駅を優先に推進していく」とした上で、新小岩駅へのホームドア導入の検討に入ったことを発表、2017年1月に設置工事に着手し、約2年の工事を経てようやく使用開始に至ったことになる。

 JR東日本は2010年に山手線恵比寿駅・目黒駅からホームドア設置に着手し、2017年から京浜東北線への設置も始まっているが、総武快速線でホームドアが設置されている駅は新小岩だけである。この駅が設置第1号に選ばれたのは、「乗降人員や目の不自由なお客さまのご利用が多い駅」という表向きの基準とは関係なく、新小岩が「自殺の名所」という扱われ方をしてしまったからだろう。

 事の発端は2011年7月12日、新小岩駅を通過中の成田エクスプレスに飛び込んだ女性が跳ね飛ばされてホーム上の売店に突っ込み、巻き添えになった旅客4名が負傷するという事故であった。これがニュースで大きく取り上げられた影響で、翌13日、7月25日、8月25日、9月18日と新小岩駅で成田エクスプレスに飛び込む自殺とみられる事故が5件も続いたのである。

 その後、報道で確認できる事故に限っても、新小岩駅総武快速線ホームでは、2012年から2017年までの5年間で合計22件もの死亡事故が発生する異常事態となってしまった。新小岩駅にホームドア設置を要望する声が利用者や沿線自治体などからも高まり、前述のように設置に至ったというわけだ。

 ただし、そもそもホームドアは自殺を防止するための装置ではないことには注意が必要だ。ホーム上で発生する事故というと、どうしても列車と旅客が接触・衝突する人身事故ばかりが注目されがちだが、実際にはその何十倍もの軽微な転落事故が発生している。ホームドアはこうした不意の転落を防止するための安全設備であって、自殺の抑止は副次的な効果のひとつにすぎないのである。