稲盛和夫が激怒でクビ宣告した「優秀な社員」のあちゃーな発言Photo:JIJI

かつて稲盛和夫氏に解雇を言い渡された優秀な「部下」がいた。彼は稲盛氏の元上司で大企業で部長も勤める才覚ある人物だったが、考え方の違いで対立してしまったのだ。その人物の考え方は、今聞いても「正しい」ものに見えるのだが、稲盛氏からの信頼を損ねる大きな落とし穴があった。(イトモス研究所所長 小倉健一)

才覚ある元上司を解雇した稲盛和夫

 1963年10月、京都の片隅にある町工場「京セラ」に、1人の男が現れた。

 稲盛和夫の京セラ創業時代をつづった書籍『心の京セラ二十年』(青山正次著、非売品)において、匿名で「C」と呼ばれていた人物だ。

 かつて名門企業「松風工業」で貿易部長を務め、英語は堪能、テニスやゴルフもこなす万能の才人であったという。

 当時の稲盛氏は、京セラ創業から4年半が経過し、いよいよ海外へ打って出ようという野心に燃えていた。そこへ、海外事情に精通した元上司であるCが職を求めてやってきたのだ。普通に考えれば、これほど心強いことはない。まさに「鬼に金棒」の補強人事であるはずだった。

 しかし、この蜜月は即座に終わりを迎える。それも、単なる性格の不一致ではない。そこには、ビジネスという営みをどう捉えるかという、根本的な「思想の衝突」があった。

 後に「経営の神様」と呼ばれることになる稲盛氏は、このときCに対して激怒し、解雇を言い渡した。

 なぜ、才覚あふれる優秀な人物が、創業者の逆鱗に触れたのか。その理由をひも解くことは、これから何か新しいことを始めようとする人にとって、極めて重要な示唆を与えてくれるだろう。