普段は万全のセキュリティ対策を施しているマンションでも、大規模修繕工事などで仮設足場や建物全体にシートが施されると、空き巣狙いなどの犯罪者にとって格好のターゲットになるという。建設仮設機材メーカーの三共は、工事中の事件・事故を防ぎ、住民の工事に対する安心感を提供するための独自防犯システムを開発した。

  マンションの大規模修繕工事に付きものなのは、外壁を覆い尽くす仮設足場やシートだ。作業者の安全や資材の飛散防止に不可欠だが、意外な落とし穴がある。工事が始まった物件は、シートの目隠しと足場の設置により、窃盗目的で人が侵入しやすくなってしまうのだ。実際、新築・改築現場での盗難事件も後を絶たないという。

侵入者を防ぎつつ
プライバシーに配慮

防犯事業マネージャー
石田真一氏

  ところが、その防犯対策は進んでいないのが実情で、夜間でさえ施錠することなく無防備な現場もある。こうした状況を踏まえて、仮設機材メーカーとして足場の施工も手掛ける三共が開発したのが独自の防犯システム「CRALES(クラレス)」だ。

 同社防犯事業マネージャーの石田真一氏は説明する。

「いわば当社は足場のプロで、死角となりそうな箇所を熟知しています。そこで、足場上に監視用の専用WEBカメラを設置し、映像をインターネットで24時間遠隔監視する仕組みを開発しました。

監視カメラユニットは、ネットワークカメラとパッシブセンサーで工事関係者と関係者以外を識別する。

 誰もいないはずの夜間に異常を察知するとライトが発光し、カメラから配信されたリアルタイム映像をサポートセンターで確認、現場を管理する方に連絡します。同時開発の仮設防犯扉『クラレスドア』も取り付けると、足場の入り口をオートロックで施錠できます」

 必要に応じてカメラにマスキング処理を施すので、居住者のプライバシーにも配慮。今までに同システムを設置した現場では、「子どもがふざけて足場を走っていた」「居住者が足場上を徘徊していた」などを含め、全体の25%程度に異常を知らせる発報があった。その中には実際に犯罪者を捉えた映像も存在し、逮捕につながったケースもある。

居住者の生活スペースは、マスキング処理によってカメラの視界には入らない。

「クラレスシステムの設置は、まず『侵入させない』ことが目的です。もし侵入された場合は『威嚇(発光)』で対処し、それでも犯行に至ったら『証拠の確保』の役割を果たします」(石田マネージャー)

 さまざまな事件の犯人逮捕に絡んで、監視カメラの効力は世間で広く認識されている。言い換えれば、それだけ犯罪を抑止する効果が高いといえる。マンションの所有者や管理組合はこうした防犯対策も念頭に置きながら、大規模修繕工事のプランを策定するのが得策だろう。

コーション(警告)シートで防犯システム導入をアピールすることで侵入者に対する抑止効果が期待できる。

※夜間のみ。