年老いた親を故郷に残したまま働くビジネスパーソンにとって切実な問題である遠距離介護。仕事を辞めて実家に戻り、親の面倒を見たいと思っても、現実的には難しいものだ。せめて離れていても、親が元気でいるかどうかをしっかり見守り、十分なケアを与えられるようにしてあげたいもの。そんなニーズに応えてくれる遠距離介護サービスも充実してきた。(取材・文/渡辺賢一)

 2010年の国勢調査によれば、単身世帯の高齢者(65歳以上)は5年前の387万人から480万人に増えている。同時に、故郷に独り暮らしの親を残して、都会で仕事をしている子世代も増加していることは間違いない。高齢者の場合、住み慣れた土地を離れるのが苦痛に感じることが多いため、やむなく仕事を辞めて実家に戻り、介護に専念するビジネスパーソンも増えているという。

 しかし、介護を要する親を抱えるビジネスパーソンの大半は40~50代の働き盛りである。会社では責任ある仕事を任され、家庭では妻や子どもの事情もあり、住宅ローンや自らの老後費用といった資金的な問題もある中で、会社を辞めてまで実家に戻るという決断には踏み切れないケースも多いはずである。

民間やボランティアの
サービスを活用する

 そんな悩みに応えるように、近年、遠くに暮らす親の介護をサポートしてくれる介護サービスが充実してきた。

 例えば最近では、介護保険が利用できる居宅介護や訪問介護にとどまらず、民間企業による家事援助サービスや配食サービスなども増えている。全国の都道府県や市区町村に設置されている社会福祉協議会に行けば、ボランティアによる無料サービス情報を入手することも可能だ。

 こうしたサービスを利用すれば、休みが取れるときは実家に戻って介護を行い、普段はサービス会社やボランティア団体に面倒を見てもらうことで、「遠距離介護」が実現できる。