1.追い込み・比較……親の「良かれ」が子を壊す

 受験が近づき、思うように成績が上がらないと、親の心は「焦り」に支配されます。しかし、その焦りから生まれる言葉は、良薬になるどころか子どもの心を蝕む毒になってしまうことがあります。

【追い込み系】「あと○点足りないよ」「本当に受かる気あるの?」

 親の真意:現実の厳しさを直視させ、危機感を持ってラストスパートをかけてほしい。

 子どもの実態:子どもだって、足りない点数は自分が一番よくわかっています。そこを追い詰められると、子どもは「今の自分ではダメだ」と、存在そのものを否定されたように感じてしまいます自己肯定感が下がると、脳は「防御モード」に入り、思考がフリーズしてしまいます。危機感を与えるつもりが、戦うエネルギーを奪ってしまうのです。

【比較系】「〇〇くんはもっとやってるよ」「お母さんの頃はもっと……」

 親の真意:身近なライバルの存在や、かつての成功体験を引き合いに出して、競争心に火をつけたい。

 子どもの実態:子どもが受け取るのは「親は自分を見てくれていない」という寂しさと、他者に対する劣等感だけです。特に親の現役時代と比較されると、子どもは逃げ場を失います。比較され続けた子どもは、次第に「親に認められたい」ではなく「親を失望させたくない」という恐怖で動くようになり、やがて親への不信感へと繋がってしまいます

 中学受験という過酷な環境にいる子どもに必要なのは、誰かとの比較ではなく、昨日の自分より一歩進んだことへの承認です。親の「不安」を言葉にしてぶつけるのではなく、まずは子どもの「不安」を包み込むことが、結果として本人のやる気を引き出す最短ルートになります。

2.無責任な「頑張れ」より、具体的な「一緒に」を

 受験勉強に身が入っていないように見えるとき、つい「頑張れ」と言いたくなります。しかし、これも要注意です。何を、どれくらい頑張ればいいのか分からず立ち止まっている子にとって、丸投げの「頑張れ」は、暗闇で「走れ」と言われるようなものだからです。

松下流・言い換えのコツ

 私の場合は、言葉でプレッシャーをかける代わりに、「一緒に頑張ろう」と言って隣に座りました。自宅のリビング、時には喫茶店や図書館の自習室へ。息子が問題集を解く横で、私は自分の仕事をする。「集中して頑張っている大人」がそばにいる環境は、どんな叱咤激励よりも息子の集中力を引き出しました。

3.「お前のせいで……」という責任転嫁は絶対にNG

 模試の結果が悪かったとき、あるいは入試本番で体調を崩したとき。感情的に「お前のせいや!」「不摂生したからだ」と責めるのは、最も避けるべきNGワードです。

 中学受験において、時間・スケジュール・健康の管理は「親の仕事」です。結果を子どもの人格のせいにして親が不機嫌になれば、子どもは居場所を失い、入学後の不登校にも繋がりかねません。

松下流・視点の切り替え

 悪い結果が出たときこそ、感情を横に置きましょう。「ランクを下げるか、このまま対策を練るか」という具体的な作戦会議に切り替えるのです。逆に良い結果のときは、「もっと頑張れ」と欲を出さず、まずは100%褒めてあげてください

4.「自分から言い出した子」にだけ使える、愛の劇薬

 一方で、わが家のように「子ども自身が受験したいと言い出した」ケースでは、あえて厳しい言葉を投げることもありました。

「やる気がないなら、受験しなくていい。地元の中学に行けばいいやん。時間もお金ももったいない」

 これは、本人の「覚悟」を再確認するための言葉です。親が無理にやらせている場合には逆効果ですが、本人が決めた道であれば、時には突き放すことで、自分の足で立つ強さを引き出すことも必要だと感じました。

最後に:合格の先にある「メリット」を語り合おう

 もし親御さんが受験を勧めているのなら、NGワードを封印する代わりに、「合格したらどんな楽しいことが待っているか」というメリットを、子どもがワクワクするように伝えてあげてください。

 中学受験は、親の管理能力も問われる親子二人三脚の試練です。どんな結果になっても「お父さん、お母さんは味方だ」という安心感の中で、全力を尽くしたプロセスこそが、一生の財産になるのだと私は信じています。