四谷大塚直営校舎で大きく伸びた合格実績

 まず、第1部では四谷大塚の指導方針と今の入試で求められる力が説明された。

 四谷大塚の小川智弘塾長が登壇。まず、冒頭で、ホームページ上の合格実績の掲載方法を変更したことが説明された。従来、四谷大塚の合格実績は「四谷大塚ネットワーク(予習シリーズやカリキュラムを使用している塾・準拠塾と呼ばれる)」の実績のみを示した。中学受験の中小規模の塾の多くは、四谷大塚の準拠塾であり、全体の半分が四谷大塚のテキストとカリキュラムで学習をしている。こういった準拠塾と四谷大塚直営の校舎の合格実績をまとめて公開していた。

 ところが、今年からは四谷大塚の直営校舎単独の実績も併記する方針に改め、話題になっている。背景には、直営校舎の合格実績が大きく伸びたことを、アピールしたいという狙いがある。

近年の入試傾向に四谷大塚の「予習主義」がマッチ

 その要因として、入試問題の変化がある。

 大学入試の変化を例に「文字数のインフレ」が進んでいることが示された。センター試験時代の英語(1995年)は約2,620語だったのに対し、2026年の大学入学共通テスト英語は約5,643語とほぼ倍増しているというデータである。他の科目でも長文化が見られる。

 この大学入試の変化が中学入試にも反映され、最難関の開成、桜蔭、栄光学園、麻布、武蔵の5校の算数の出題文の文字数の平均が、2007年の532文字から2026年の1,754文字と大幅に増加。約3.3倍に増加している算数ですら、情報処理力と読解力が問われる時代になっている。

 この状況では、中学受験で現在、主流の「復習主義」の勉強だけでは太刀打ちできない。復習型は塾で習ったことを家庭で復習していく。この場合、初めて見る問題を解くときに大人が寄り添ってくれた状態で行うから、大人がいったとおりにしていくことになる。この場合、入試で初めてみる問題を一人で解いていく力は付きにくいだろう。

 一方で、四谷大塚は昔から「予習主義」の塾である。予習用の動画も配信しているが、基本、生徒はテキストを読んで自分一人で初めて習う内容と向き合う。予習シリーズは丁寧な説明が書かれているから、これをしっかりと読めば、読解力が鍛えられる。

 この予習型の学習は、長文化し、思考を問う入試傾向にマッチする。合格実績が上がった要因として、この四谷大塚の「予習主義」の学習と、入試傾向がマッチしたという面もあるのではないかという。

志望校合格に効果を示した、AIを活用する演習

 もう一つはAIを活用した志望校対策演習だ。大手教育産業ナガセ傘下にあるため、AIの開発が進んでいる。

 中学受験の模試の最大手が四谷大塚主催のテストだ。大手塾として生徒たちの学習データも持っている。これらのビッグデータをAIに読み込ませ分析させる。また、志望校の過去問も読み込ませて分析させる。これにより生徒が受けてきた模試の結果から、志望校合格に向けて、今後、学習すべき科目や単元(分野)を正確に把握できる

「AIは進化することはあっても後ろには戻らない」と小川氏。

 このAI演習「志望校別単元ジャンル演習」をちゃんと学習した生徒ほど志望校合格率が上がっているデータも提示される。中上位の生徒だけではなく、最難関の開成中学においても、「志望校別単元ジャンル演習」を80%以上、修得した生徒は75%が開成に合格している。開成の入試全体の合格率は37.6%ほどだから、その効果がよく分かる。

四谷大塚では子どものメンタル面のサポートも重視

 どれだけ精巧なAIやカリキュラムがあっても、「本人の心が勉強に向いていなければ意味がない」とし、四谷大塚では集団授業の利点を生かした「チームで頑張る環境づくり」と、面談や日々の会話などを通じた個別の伴走を重視していると説明した。

 象徴的だったのが「心のコップ」という比喩だ。心のコップが上向きなら、水(知識)が溜まっていくが、傾いていればこぼれ、ひっくり返っていればいくら注いでも何も残らない。子どもの心のコップを上向きにすることは、四教科の勉強と同じか、それ以上に重要な作業だと位置づけられた。

 同時に、「自分も勝って周りの仲間も勝たせる」というナガセグループ共通のキーワードも紹介された。AIが知識部分を代替していく時代に求められるのは、「知識量の多い人材」ではなく、経験や成功体験を惜しみなくチームメイトに共有できる人材だという考えだ。大谷翔平選手を例に、「自分が勝ち、そのうえでチーム全体を勝たせる存在」を目指そうというメッセージが強く打ち出された。

調べて考える力を養う、各教科の学習ポイント

 第2部では2026年の各教科の入試問題の分析と学習のポイントが示された。キーワードは問題の長文化と探究である。探究とは自分で問いを見つけ、それを調べていく学習だ。

 算数ではフリーハンドで作図するトレーニングの必要性が説かれた。実際に手を動かすことの重要性が高まっている。手を動かすことで、具体的に調べていく作業を身につけていく。

「図や線を間違えたふうに描いてしまうんじゃないかという不安から手が止まってしまう子も多いです。間違ってもいいから実際に描いてみる作業をすることが大切」(越智るり子 大船校舎講師)。

 国語では、問題文の長文化が説明される。平均的な文字数は2006年には5,600文字だったが、2026年は7,800文字。ただ、この文字数の増加は止まっており、これ以上は増えないと予想される。

 一方で、文章を読むのが好きだが得点に結びつかない生徒は、問題を解いている途中で「あれ?何を問われているんだっけ?」となってしまうことがあるからだと指摘。そのため、問いを正確に把握するトレーニングも必要だ

 理科に関してはデータの読み取りの能力を問う問題、時事的なテーマと結びつけた問題が増えている。理科イコール知識の詰め込みではなくなっている。一方で大妻では野菜の写真が載っていて、どの野菜かを答えさせるが、小松菜とほうれんそうの違いが受験生には分かりにくい。

 また他の学校ではドローンや電子レンジについて問われる例もある。普段からお手伝いをしたり、家族で会話をしたりすることが大切になってくる。

 社会は高校の課程で「日本史探究」「地理探究」といった科目が誕生し、自ら課題を見つけて調べ学習をしていくことが重視されている。それに合わせて中学入試の問題も変化してきている。長文の資料や数値データなどを示し、それを読み取って問いに答えていくが、その時に求められる知識は地理、歴史、時事問題などの横断的なものになる。たとえば、トランプ関税に関して問われると1911年の関税についても訊かれることがある。

 中学入試は塾での知識の詰め込みだけでは通用しなくなっており、調べて考える力を求められることが分かる。

中学受験に三位一体で取り組むことの大切さ

 最後に開成や桜蔭に合格した生徒たちからの保護者への感謝の手紙が読み上げられる映像が配信される。保護者のコメントの中には「四谷大塚は面倒見がよく学習面はお任せができた」とあるが、やはり、学習以外の部分の生活や心のケアは保護者の仕事だ。生徒、保護者、四谷大塚の三位一体で中学受験に取り組んでいく。