中学受験で習い事はいつまで続けるべき?
中学受験の習い事をいつまで続けるべきかは、子どもの性格や習い事の種類、子どもの学力や志望校など、様々な要因に左右されます。それらの中でも大切に考えてほしいのが、子どもの気持ちを尊重することと、学習時間を確保することです。
無理矢理習い事を辞めさせてしまったら、親子関係が悪化したり、受験勉強に身が入らなくなったりと、悪影響を及ぼすことがあります。しかし、「子どもがやりたいから」といってずっと習い事を続けていると、他の子どもに比べて学習時間が少なくなり、成績が伸び悩むことにもなりかねません。
では、どのタイミングが習い事の辞め時なのか、2つの目安を紹介します。
習い事を辞めるか辞めないかの判断する上で重要なのは、「本人の意思を尊重する」「スケジュール的にキツくなってきた時」の2つです。
親が一方的に習い事を辞めさせると、反発を招く原因になります。十分に子どもの意見を聞き、親の意見もしっかりと子どもに伝え、お互いが納得のいくまで話し合うことが重要です。話し合いの中で、お互いが賛成できる解決策を見つけて、親子が同じ方向を向いて受験に励んでいけるようにしましょう。
目安①:子どもが習い事を辞めたいと思った時
子どもが「習い事を辞めたい」と思うタイミングは、いくつか考えられます。
1つ目は、子どもが習い事を続けるのがつらくなった時です。塾と習い事を両立するには、精神的にも体力的にも子どもにかなりの負担がかかることになります。子どもにその負担を乗り切るだけの精神力や体力がない場合、習い事を辞めたいと思うことがあります。
2つ目は、模試の結果が悪かった時です。特に、志望校判定テストで結果が悪いと、子ども自身が「このままではまずい」「もっと勉強をがんばらないといけない」と感じ、習い事を辞めて受験勉強に集中したいと思うことがあります。
3つ目は、目標を達成した時です。例えば、スイミングでは「3泳法ができるようになる」という目標を立てるなど、具体的な目標を決めて習い事を始めることがあります。このように具体的な到達点を事前に決めていた場合、その目標を達成したら辞めようと思うことがあります。
その他にも、「つまらなくなった時」「先生との相性がよくない時」「練習をしても成果や結果が出ない時」など、子どもが辞めたいと思うタイミングはいくつか考えられます。ただし、子どもが辞めたいと思うかどうかは性格や周囲の状況が関わってくるため、親がうまくコントロールできない部分でもあります。
子どもの習い事に対する本気度によっても異なり、「将来はプログラマーになりたい」という目標を抱えている子どもにプログラミング教室の習い事を辞めさせるのは、なかなか納得が得られないでしょう。そのような場合は、「受験が終わったらまた習い事を始める」などの条件を示して一時的に納得してもらったり、後述する「習い事を続けるデメリット」を話して説得したりするなど、別のアプローチが必要になります。
目安②:子どもの勉強が忙しくスケジュールを確保できない時
中学受験のためには、相当な学習量が必要になります。学校の宿題はもちろん、週数回の塾や家庭教師での授業、塾や家庭教師に出される宿題、自分の苦手を克服するための学習、模試や過去問を解く時間など、勉強だけでもかなりのハードスケジュールです。このスケジュールが確保できなくなった時は、習い事を辞める目安になります。
スケジュールの面から言うと、「習い事にどれだけ時間をかける必要があるかどうか」が、習い事をいつまで続けるべきかを見極めるポイントになります。
例えば、ピアノやバイオリンなどは、自宅でも毎日練習する必要があり、全体としては非常に時間がかかる習い事と言えます。また、サッカーやバスケットボールなどは、土日に遠征や練習試合があると1日がかりになることが多く、拘束時間が長くなることがあります。これらのような全体として時間がかかる習い事だと、中学受験と両立して続けていくのは困難ですので、スケジュール確保を優先するなら、早期に辞めることを検討すべきでしょう。
一方で、レッスン時間だけ頑張ればいい種類の習い事もあります。例えば、スイミングや習字、英会話などは、上級者を目指す場合を除いて、基本的にはレッスン時間内で完結するような習い事です。このような習い事なら比較的、中学受験と両立しやすいと言えます。
中学受験における学年別の習い事の目安
中学受験に向けて習い事をいつまで続けるのかは、非常に悩ましいところです。早く辞めた方が勉強に時間を割くことができますが、子どもの精神的・肉体的な成長や心の安定のためには習い事を続けた方がいいこともあります。
また、子どもの学力レベルや志望校のレベル(受験の教科数や問題の難易度)にもよるため、一概に何年生で辞めるべきかを論じることは困難です。しかし、学年が上がるにつれてスケジュールがタイトになり、両立しようとしたら子どもに相当な負担がかかってしまうのも事実です。そのため、小学4年生から小学6年生にかけて、徐々に習い事を整理していくのがよいでしょう。
では、どれくらい塾が忙しくなるのでしょうか。大手塾の1週間当たりのおよその通塾回数を参考にして、子どもがいつまで習い事を続けられそうか検討してください。
小学4年生は多くても2つ程度
小学4年生では、表の通り週2回から3回の通塾回数になっていることが多いようです。
塾名 | コース名 | 教科数 | 週の通塾数 |
---|---|---|---|
早稲田アカデミー | Sコース(私国立中受験) | 4教科 | 週2回 |
SAPIX | ー | 4教科 | 週2回 |
日能研 | 受験コース | 4教科 | 週2回+月2回 |
同上 | 難関受験コース | 4教科 | 週2回+月2回 |
四谷大塚 | ー | 4教科 | 週3回 |
浜学園 | マスターコース(国・私立中学受験コース) | 3教科 | 週3回 |
希学園 | ベーシックコース | 3教科 | 週3回 |
日能研の「+月2回」というのは、月に2回「育成テスト」が行われるため、通塾回数が2回の週と3回の週ができるということです。また、3・5・7月は公開模試も実施されます。
浜学園は国語・算数・理科が必修で、選択教科の社会を選択した場合は、通塾回数は週4回になります。また、「土曜マスターコース」を開設しており、このコースではマスターコースで学習する3教科分の学習を土曜にまとめて行うため、土曜のみ(週1回)通塾することになります。
これらの状況から、小学4年生では多くても2つの習い事に絞ることをおすすめします。小学4年生だと、まだ宿題の量も無理のない範囲だったり、過去問を解いたりする段階にないので、習い事と塾の両立は十分可能でしょう。
小学5年生は1つに絞ろう
小学5年生では、表の通り週3回から4回の通塾回数になっていることが多いようです。
塾名 | コース名 | 教科数 | 週の通塾数 |
---|---|---|---|
早稲田アカデミー | Sコース(私国立中受験) | 4教科 | 週3回 |
同上 | Tコース(公立中高一貫校対策) | 4教科 | 週2回 |
SAPIX | ー | 4教科 | 週3回 |
日能研 | 受験コース | 4教科 | 週3回+月3回 |
同上 | 難関受験コース | 4教科 | 週3回+月3回 |
四谷大塚 | ー | 4教科 | 週4回 |
浜学園 | マスターコース(国・私立中学受験コース) | 3教科 | 週4回 |
希学園 | ベーシックコース | 3教科 | 週3回 |
日能研は、小学4年生と同様に、月2回の「育成テスト」と月1回の公開模試が行われるため、通塾回数を「+3回」としています。
浜学園は国語・算数・理科が必修で、選択教科の社会を選択した場合は通塾回数は4回になります。
小学5年生の段階では、中学受験の内容を一通り学習するカリキュラムが組まれていることが多く、学習内容も難しくなりますし、学習量も増えるため小学4年生に比べるとかなりハードな勉強になります。当然、家庭学習の量も増えますので、他の習い事と両立するのがだんだんと難しくなってくる時期でしょう。
習い事を続ける場合は、日々の練習に時間をかける必要がなく、子どもが「どうしても辞めたくない」という習い事1つに絞るとよいでしょう。
小学6年生は勉強のみに集中しよう
小学6年生では、表の通り週4回程度の通塾回数になっていることが多いようです。しかし、ここで示した授業以外にも志望校別模試やクラス分け模試など、様々な模試を受けることになるため、実際にはもっと通塾回数は多くなります。
塾名 | コース名 | 教科数 | 週の通塾数 |
---|---|---|---|
早稲田アカデミー | Sコース(私国立中受験) | 4教科 | 週3回 |
同上 | Tコース(公立中高一貫校対策) | 4教科 | 週2回 |
SAPIX | ー | 4教科 | 週3回 |
日能研 | 受験コース | 4教科 | 週4回 |
同上 | 難関受験コース | 4教科 | 週4回 |
四谷大塚 | ー(※学校別対策コースを含む) | 4教科 | 週5回 |
浜学園 | マスターコース(国・私立中学受験コース) | 3教科 | 週4回 |
希学園 | ベーシックコース | 3教科 | 週3回 |
SAPIXの通塾回数は3回となっていますが、そのうち1回は「土曜志望校別特訓」というコースになっていて、75分が4コマ(4教科)あるため、回数以上にハードな学習量になっています。また、家庭学習において『デイリーサピックス』という基本教材で授業の復習をしたり、「基礎力トレーニング」等の補助教材で基礎力の養成をしたりすることも課題として出されています。
浜学園は国語・算数・理科が必修で、選択教科の社会を選択した場合の通塾回数は週5回です。その他に「日曜錬成特訓(2月〜6月)」や「日曜志望校別特訓(7月〜12月)」を取ると週6回通塾することになります。
小学6年生になると、授業の他にも模試を受けたり、過去問を解いたりする必要があります。週に5回程度塾に通い、休日は模試を受けるということも珍しくありません。
そのため、実際は表の通塾回数よりもハードなスケジュールになります。このようなスケジュールをこなしていくことを考えると、小学6年生では勉強だけに集中する環境づくりが大切だということが分かると思います。
一方で、習い事を続ける人もいます。習い事を続けられるとしたら、上記のように「レッスン時間だけで完結できる習い事」が望ましいと言えます。また、志望校に対して子どもの学力レベルが十分到達している場合や習い事が受験に有利になる場合(詳しくは後述)は、習い事を続けるという選択肢もありでしょう。
中学受験において習い事を続けるメリットやデメリット
習い事を続けることにはメリットもデメリットもあるので、最終的には子どもの意思や両親の意向によって決めることになります。
子どもが「習い事を続けたい」と思っている場合、親が一方的に習い事を辞めさせてしまうのはあまりいい方法ではありません。子どもの意見を尊重しつつ、次に挙げるメリットとデメリットを参考にして子どもと親がしっかりと話し合い、お互いが納得する形で習い事を続けるかどうかを判断してください。
どの習い事をやっても受験にとってはプラスに働きます。「習い事は何がいい」ということはありませんが、「運動が苦手だから運動の習い事をする」などの「克服」を目的として習い事をさせると、子どもも精神的につらくなってしまいます。
子どもの学習と習い事の関係においては、ひとつの能力が上がれば、総じて他の能力も引き上がっていくという相乗効果をねらう方が大切です。これは習い事に限らず、教科の学習に関しても同じことが言えます。
4教科のうち、国語がダメだったり、理科がダメだったりすることがありますが、ダメな教科を引き上げるより、良い成績の教科を引き上げて行った方が、底上げができるので成績も上がっていきます。その逆のことをしてしまうと、親も子も苦しくなってしまいます。習い事も一緒で、子どもが好きで、楽しく通うことができる習い事をするというのがポイントです。
習い事を続けるメリット
●メリット1 気分転換になる
中学受験では、毎日何時間も勉強をしなくてはいけないので、子どもにとってはかなりのストレスです。しかし、習い事で適度に体を動かしたり、好きなことに取り組んだりすることで、頭がスッキリしたり、ストレス発散になったりします。自分の好きな習い事をする時間があった方が、精神的にも安定して受験ができたり、モチベーションUPにつながったりする子どももいます。
●メリット2 入試形態や受験科目によっては受験で有利になることがある
中学受験では一般入試の他にも様々な入試形態があるため、受験に有利になることがあります。
例えば、英語教室や英会話教室は、入試科目に英語がある場合に役立ちます。小学校で英語が必修化したことにより、一般試験の受験科目に英語を導入する中学校が増えてきています。
また、慶應3校(慶應中等部・藤沢・普通部)では、体育の実技試験が課されています。体育科の学校ではないので、運動ができないと即不合格ということはないでしょうが、ある程度運動ができるに越したことはありません。
他にも、東京都文京区の駒込中学校ではプログラミング入試が行われています。プログラミング入試はScratchを使ったプログラミングが出題されるため、プログラミング教室などに通っている子どもは受験に有利です。
当然、国立音楽大学附属中学校を受験するなら音楽が、女子美術大学付属中学校を受験するなら図画工作など、入試の傾向に合わせて習い事を続けた方が有利になることもあります。
●メリット3 効率的に時間を使えるようになる
習い事を辞めて時間がたっぷりあれば、その時間を全て勉強に使うかというと、なかなかそうもいかないのが実情でしょう。子ども自身が「勉強も習い事も両立できるようにがんばりたい」という熱意をもったら、自分で時間を管理して、なんとか両立できるように効率よく時間を使うこともあるかもしれません。その結果、ダラダラと時間を浪費してしまうことも減って、学習意欲を高める可能性も考えられます。
●メリット4 各種能力や社会性が向上する
習い事の種類によりますが、習い事を通して、集中力・コミュニケーション能力・体力・運動能力・空間認知能力・論理的思考力・リーダーシップ・忍耐力などの様々な能力の向上が期待できます。また、習い事の先生に対する礼儀、仲間とのチームワークなど、社会性の向上も期待できるでしょう。これらの能力は、受験勉強や入試に役立つこともありますし、長い目で見れば人生において役に立つ能力だと言えるでしょう。
習い事を続けるデメリット
●デメリット1 学習時間が確保できなくなる
習い事を続ける最大のデメリットは、学習時間が確保できなくなることだと言っても過言ではないでしょう。どんなに効率よく学習したとしても、塾や学校の宿題をしたり、授業の復習をしたり、過去問を解いたりするためには、相応の時間が必要になります。
難関校や最難関校を目指すなら、「どれだけ時間があっても足りない」という状況にもなりかねません。学習時間の確保ができなくなるなら、両立は難しいでしょう。
●デメリット2 体力的につらい
塾と習い事の両立は、体力的に負担がかかります。体力的につらい状態が続くと、体調を崩してしまったり、勉強に集中できなくなったり、精神的にもストレスがかかったりと、子どもにいろいろな悪影響を与えてしまいます。
体力的につらいだけで済めばまだよくて、ひどい時には、疲労やストレスが引き金となってチック症や自律神経失調症を発病してしまう恐れもあります。習い事を両立させようとする場合、子どもが体力的にも精神的にも大丈夫な範囲を見極めるようにしましょう。
●デメリット3 勉強に集中できない
習い事の発表会や試合が近づいてくると、そちらの方に意識が向きがちになります。「発表会で上手にできるかな」「試合で失敗しないかな」などと不安を抱えた状態だと、勉強に集中できなくなってしまいます。
発表会や試合などのイベントがなくても、将棋を習っていたら手筋が気になってしまったり、ドラムを習っていたら無意識にビートを刻んでいたり、どうしても習い事の方に意識が行ってしまい、勉強に集中できなくなることもあるでしょう。
習い事と勉強の気持ちの切り替えが上手い子ならいいのですが、気持ちをコントロールするというのは小学生にはなかなか難しいでしょう。
●デメリット4 「二兎を追うものは一兎をも得ず」になる可能性がある
両立させようとしても、結局どっち付かずになってしまうことが危惧されます。例えば、サッカーやバスケットボールなどの集団スポーツでは、練習を欠席する回数が多くなったり、練習不足になったりすることからレギュラーになれず、本気で取り組んでいる習い事の先生や他の子どもとの温度差に苦しむことになるかもしれません。
また、習い事を続けたことが要因となって、志望校に合格できなくなる恐れもあります。優先順位をよく考えて、中学受験に臨む必要があるでしょう。
6年生になると、子どもがどんなに受験と習い事を両立しようとしてがんばっても、「私はいつ休めばいいの?」と訴えかけてくるくらい忙しくなります。親から見ても、「スケジュール的に無理だな」と感じることもあるでしょう。
相当子どもがその習い事を好きでない限り、両立は困難です。場合によっては、「塾を辞める」(中学受験をやめる)という選択肢を検討することも必要になってきます。
中学受験で習い事を続けるべきか:まとめ
中学受験で習い事を続けるべきかどうかは、最終的には各家庭の判断になります。しかし、受験において勉強時間は非常に重要ですから、志望校に合格するだけの学習時間を確保できないと、習い事を続けるのは難しいのではないでしょうか。
ただし、子どもの気持ちを蔑ろにした判断は、受験のみならず子育てにも悪い影響を与えてしまうことになりかねませんので、十分に注意してください。習い事に関するトラブルを回避するためにも、「小学6年生のカリキュラムが始まったら辞める」「中学受験が終わったら再開する」など、事前に約束を決めておきましょう。
いずれにせよ、しっかり子どもと話し合って、親と子どもが納得できる選択をするようにしましょう。