2025年新課程共通テスト 数学の概要

 はじめに、現在公表されている時間や形式、試作問題の内容について簡単にお伝えします。数学では以下のように制限時間や形式、選択できる科目に変化がありました。なお、国立大学を目指す学生は、文系理系問わずに『数学Ⅰ、数学A』『数学Ⅱ、数学B、数学C』の両方を受ける必要があることが多いです。

  • 現行の数ⅡBが数ⅡBCとなり、制限時間が70分に変更。
  • 数ⅠAでは選択問題がなくなり、数ⅡBCでは従来よりも2つ大問数が増加。
  • 「数Ⅱ(単独科目)」「簿記・会計」「情報関係基礎」という科目が選択不可に。
制限時間や配点 数学(ⅠA70分100点 / ⅡBC70分100点)
出題形式

数ⅠAは大問数が4つで全問必答。数Ⅰ、数Aともに大問数は2つずつ。

数ⅡBCは大問数は7つで、数Ⅱの大問が3つ、数BCは4問から3問を選択する。

科目

『数学Ⅰ、数学A』、『数学Ⅰ』

『数学Ⅱ、数学B、数学C』

※大学入試センター「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」より引用

2025年新課程共通テスト 数学の問題作成方針

 試作問題で新課程の内容が公表され、日常の内容や教科書で扱われない定理を解く題材の作成を検討するという方針が明らかになりました。後ほど試作問題を詳しくみていくとわかりますが、公式・解法を暗記するだけでは対応が困難な問題を作ろうとしています。一つの解法で満足するのではなく、様々な視点から問題を分析するなど、共通テスト用の対策をしていく必要が出てきています。

 大学入試センターのからは、次のような問題作成方針が発表されました。

  • 数学の問題発⾒・解決の過程を重視する。
  • 事象を数理的に捉え、数学の問題を⾒いだすこと、解決の⾒通しをもつこと、⽬的に応じて数、式、図、表、グラフなどの数学的な表現を⽤いて処理すること、及び解決過程を振り返り、得られた結果を意味づけたり、活⽤したり、統合的・発展的に考察したりすることなどを求める。
  • 問題の作成に当たっては、数学における概念や原理を基に考察したり、数学のよさを認識できたりするような題材等を含め検討する。
  • 例えば、⽇常⽣活や社会の事象など様々な事象を数理的に捉え、数学的に処理できる題材、教科書等では扱われていない数学の定理等を既習の知識等を活⽤しながら導くことのできるような題材が考えられる。

※大学入試センター「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」より引用

2025年新課程共通テスト 数学の制限時間や問題構成について

 ここでは、新課程共通テストの数学の制限時間や問題構成について詳しく解説していきます。

従来の共通テスト数学ⅠA(例)
問題番号 科目 選択方法 出題内容 配点
第1問 数Ⅰ 必答

数と式

図形と計量

30
第2問 数Ⅰ 必答

二次関数

データの分析

30
第3問 数A

2問選択

場合の数と確率 20
第4問 数A 整数の性質 20
第5問 数A 図形の性質 20

※参考: 大学入試センター

従来の共通テスト数学ⅡB(例)
問題番号 科目 選択方法 出題内容 配点
第1問 数Ⅱ 必答

三角関数/図形と方程式

指数関数・対数関数

30
第2問 数Ⅱ 必答

微分法

積分法

30
第3問 数B

2問選択

確率分布と

統計的な推測

20
第4問 数B 数列 20
第5問 数B ベクトル 20

※参考: 大学入試センター

新課程共通テスト数学ⅠA
問題番号 科目 選択方法 出題内容 配点
第1問 数Ⅰ 全問必答

数と式

図形と計量

30
第2問 数Ⅰ 全問必答

二次関数

データの分析

30
第3問 数A 全問必答 図形の性質 20
第4問 数A 全問必答 場合の数と確率 20

※参考: 大学入試センター 令和7年度大学入学共通テスト試作問題「数学」の概要

新課程共通テスト数学ⅡBC
問題番号 科目 選択方法 出題内容 配点
第1問 数Ⅱ 必答 三角関数 15
第2問 数Ⅱ 必答

指数関数

・対数関数

15
第3問 数Ⅱ 必答 微分・積分の考え 22
第4問 数B

3問選択

数列 16
第5問 数B 統計的な推測 16
第6問 数C ベクトル 16
第7問 数C

平面上の曲線と

複素数平面

16

※参考: 大学入試センター 令和7年度大学入学共通テスト試作問題「数学」の概要

 数ⅠAは従来通り70分のまま。Aでは選択問題がなくなってすべて必答問題になります。数ⅡBCは、数Ⅱの3題は必答で、BCに関しては、Bの「数列」「統計」、Cの「ベクトル」「複素数」の合計4題から3題を選択して解答します。

 数ⅡBCの制限時間は60分から10分増えて70分になりましたが、今までよりも問題数が2題増えました。旧課程の数ⅡBの共通テストでも時間が足りない人も多い印象でしたが、新課程でも時間に厳しい戦いになりそうです。もちろん単純に学習範囲が増えるため、これまでの共通テストよりも数学の勉強時間が必要になるでしょう。

 また、今回の数学の試作問題は、新課程分野の範囲の問題が公表されました。新しい範囲は4題です。それ以外の問題は令和3年度大学入学共通テスト本試験で出題された問題が使用されていました。数ⅠAでは、第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」、第4問数学A「場合の数と確率」、数ⅡBCでは、第5問数学B「統計的な推測」、第7問数学C「平面上の曲線と複素数平面」の問題が新しく公表されました。

2025年新課程共通テスト 数学の試作問題の詳細

 次に公表された試作問題の内容を詳しくみていきましょう。全体的には、「未知の状況に対し、求めた数値・数式から何を分析し、どのような結論を出すのか」という従来の共通テストの出題意図や傾向が変わったわけではないように思います。新課程の内容は、分析や問題解決に利用できる内容ばかりである(確率統計全般、仮説検定、外れ値、期待値など)ため、論理的に思考し、問題解決を行う問題が増えたように感じます。

数ⅠAの試作問題

 まずは第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」について解説します。今回の出題では、国際空港の利便性について、空港とターミナル駅との「距離・時間・費用」について調べています。特徴を示したデータを基に考察していきます。

第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」-1
出典:大学入試センター

(1)では移動距離について基本的な統計量を求め、外れ値を調べています。

第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」-2
出典:大学入試センター

(2)では散布図や箱ひげ図から、データの傾向を把握して特徴を表現しています。標準偏差や相関係数の意味を考える問題になっています。

第2問〔2〕数Ⅰ「データの分析」-3
出典:大学入試センター

(3)では二人で仮説を立て、実験を通じて主張の妥当性について、判断していきます。問題作成方針にあったように日常の事象を取り上げ、目的に応じて数、式、図、表、グラフなどを活用する問題となっています。

 次に、第4問数学A「場合の数と確率」についてです。当たりくじを引く回数に関する確率やその期待値について出題されています。

第4問数学A「場合の数と確率」-1
出典:大学入試センター

(1)では確率や新課程の内容である期待値を求める典型問題になっていました。また、(2)の文章量が例年の2倍ほどになっていました。

第4問数学A「場合の数と確率」-2
出典:大学入試センター

 この文章量は参考書で勉強していてもなかなか出合うことがありません。普段の学習から素早く問題の要点や論点を理解する練習が必要となってきそうです。

数ⅡBCの試作問題

 まずは第5問数学B「統計的な推測」についてです。こちらは環境問題となっているマイクロプラスチックについて砂浜に含まれる個数を調べる場面になっています。

第5問数学B「統計的な推測」-1
出典:大学入試センター

(1)では問題作成方針にあったように、事象を数学化し、確率変数の平均、分散、標準偏差などを用いて、「砂浜に含まれるマイクロプラスチック」の全個数を考察しています。

第5問数学B「統計的な推測」-2
出典:大学入試センター

(2)では昨年の調査から今年の「マイクロプラスチック」の母平均が昨年と異なるといえるかを仮説検定していきます。

 最後に第7問数学C「平面上の曲線と複素数平面」です。コンピュータソフトを用いた実験についての問題でした。〔1〕と〔2〕が出題されています。

第7問数学C「平面上の曲線と複素数平面」-1
出典:大学入試センター

〔1〕は方程式の係数の変化に応じて表示される図形についての問題。

第7問数学C「平面上の曲線と複素数平面」-2
出典:大学入試センター

〔2〕はコンピュータソフトを使って、複素数平面上に表される複数の点の様子を観察し、その複数の点を基に描かれる図形についての問題でした。

 文章量も多く、思考力を必要とする問題で、時間内で終えるのはなかなか難しい内容になっていました。大学入試センターによると、試作問題の第7問は〔1〕平面上の曲線〔2〕複素数平面の2題構成になっていますが、他の構成も考えられるとのことなので、実際の入試では形式が変わる可能性もあります。

国公立大学の二次試験での数学ⅡBCの扱い

 国公立文系の二次試験については、新課程になり、主に文系向けの「数ⅡB」が「数ⅡBC」へと変わりました。今回追加された範囲では、「統計」「複素数」が出題されるかが注目すべき点でした。統計や複素数が二次試験でも出題されるとなると勉強時間がより必要となるためです。

 河合塾の調査によると、数学BとCに関して、多くの大学では文系理系ともに出題範囲に大きな変化はなさそうです。

二次試験の数学の主な出題範囲

数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C(文系)
出題範囲 割合
数列・ベクトル 86%
数列・統計・ベクトル 6%
数列・統計・ベクトル・複素数平面 1%
全範囲 4%
数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C(理系)
出題範囲 割合
数列・ベクトル・複素数平面 73%
数列・統計・ベクトル・複素数平面 19%
数列・ベクトル 4%
全範囲 2%

※出典: 河合塾(2023年3月15日現在、河合塾調べ)

 数ⅡBCまでが範囲の大学(主に文系)では、数列・ベクトルのみの出題が86%で、数列・統計・ベクトルの出題は6%、数列・統計・ベクトル・複素数平面の出題は1%と、出題範囲を拡大した学校は僅かでした。なお、数ⅢCまでの理系大学は、数列・ベクトル・複素数が73%、統計まで含めるところが19%となっています。

2025年新課程共通テスト 数学のまとめ

 今回の新課程への変更により、これまでは国公立大学理系の二次試験や私立大学の試験で必要とされていた内容が共通テストの出題範囲になりました。また、分析・思考問題や文量が毎年のように増える傾向にあります。

 そのため、高校1、2年生から標準レベルまでの問題で苦手をつくらないようにし、受験勉強を早くから始めなければ、対策時間が足りなくなる可能性があります。新課程の内容で過去問がないものもあるので、模試形式の実戦的な問題集に多く取り組むのがおすすめです。また、同じではありませんが、「複素数平面」については2006年までのセンター試験の過去問も参考にしてみましょう。

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