「学校推薦型選抜」「総合型選抜」が注目される理由
いわゆる難関大学は全体的に、一般選抜では合格しにくくなっているといえる。受験者のレベルがアップしているほか、併願の増加による倍率のアップなどが要因といわれる。
一般選抜の難化によって、新たな入試制度への注目度が年々増している。それは、「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」という入試方式だ。これらは年内に選抜、合格発表を行うことから「年内入試」ともいわれる。
早稲田大学は今後、現在の一般選抜の定員が6割から4割に減らされる。その他、慶應義塾大学、上智大学、GMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)などでも一般選抜の定員は減少傾向だ。国立大学も、将来的に推薦が3割に達する見込みだ。
近年、塾や学校関係者で話題となった、関西の最難関私立大学である関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)の一角、関西学院大学は近年、一般選抜の比率を約5割強に倍増させているが、これは例外的といえるだろう。
「年内入試」が人気を集めると予想される
直下、「年内入試」の台風の目となりそうなのが2026年度、40年ぶりに復活させる関東学院大学の「給費生選抜」だろう。合格すれば、授業料相当額などが支給され、国公立大学の学費より安くなる。試験は全国19会場で行われ、選抜、合格発表まですべて年内で完結する。選抜方法は書類審査と学力検査3科目の入試だ。年内入試ではあるが、既卒生も受験が可能で、世帯年収の条件もない。
さらに、一般選抜を本命にしている志願者も出願しやすく、学力試験の比重が高いシンプルな試験である。うち英語の科目を英検など英語外部試験に置き換えれば、実質2科目入試となり、GMARCHや国公立大学を本命にする難関大学志望の受験生を中心に、併願先としてかなり人気が出そうだ。
他、東洋大学、大東文化大学、桜美林大学、拓殖大学、共立女子大学など、「年内学力入試」といわれ、高校での学習活動を評価する「評定」よりも学力試験の比重が高い。これら入試を実施する大学も多くの志願者を集めそうだ。さらに、国立大学では数少ない、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)がいらない入試を実施している宇都宮大学や島根大学も人気が定着しそう。よって、「学校推薦型選抜」「総合型選抜」における大変化の台風の目と目されるのは、一般選抜と併用しやすい「年内入試」を実施している主に中堅大学あたりといえるだろう。
最難関大学はやはりハードルが高い
一方で最難関大学の「学校推薦型選抜」「総合型選抜」はどうか。東京大学、京都大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、GMARCH、関関同立以上の最難関大学では、書類審査の段階で英検準1級や特定の世界・国内レベルの大会での受賞歴といった条件があり、出願だけでもハードルが高い場合が多い。塾関係者の取材では、一般選抜を目指したほうが得策という意見も少なくなかった。
とはいえ、難関ではあるが、努力次第では合格の可能性の高い大学も探せばないわけではない。例えば、慶應義塾大学(SFC)、筑波大学のAC入試、お茶の水女子大学の新フンボルト入試※などは英語や数学といった学科試験がなく、おすすめだ。
なお、これら難関大学の入試のステップとして塾関係者の間で好評なのが、桜美林大学だ。1000文字を超える「自己PRシート」、「活動報告書」(高校3年間の課外活動の実績を記入)、「課題図書」(面接でも質問される)などハイレベルな書類を作成させる選抜方法が、難関大学に近いという。「早慶GMARCHへの登竜門」とも関係者の間でいわれる。
いずれにせよ、こういった最難関大学を目指す場合、高校生の早期から、対策可能な学習塾に通うことが一般的となっている。
※レポート作成や演習、グループ討論などによる選抜
「学校推薦型選抜」の特徴
注目が高まっている「学校推薦型選抜」「総合型選抜」の入試方式であるが、複雑でわかりにくいのが難点だ。これだけの理由で避ける人が多いのも事実。であるから、ポイントをつかむだけでも入試に有利となるので、頑張ってついてきてほしい。まず「学校推薦型選抜」について説明する。
「学校推薦型選抜」には2つの方式がある
「学校推薦型選抜」は、出身高校の校長先生からの推薦を受け、大学への出願が可能となる選抜方式だ。さらにこれには、「指定校制」と「公募制」の2つの方式が存在する。そのうち「指定校制」は、いわゆるかつての指定校推薦入試のことである。
なお、大学側が決める指定校は、過去の一般選抜などの合格実績数で決められているといわれている。当たり前ではあるが、その指定された高校の生徒でなければ出願すらできない。ただ、難関大学の「指定校制」は、近年減少傾向だ。
対して、増えているのが「公募制」。これは大学側の高校の指定がない。あらゆる高校の出身者が出願可能だ。ちなみに、基本的に国立大学は「公募制」である。
なお、私立大学では「指定校制」「公募制」の両方が行われている。
「学校推薦型選抜」には特殊な入試ルールやハードルあり
まず押さえなければならないのは、国立大学(公募制)は基本、1校当たりの推薦人数は制限されるというルール。そのため、事前に校内選考を乗り越えなければならないハードルがある。それを通過するといよいよ出願となる。対する私立大学はそのような制限はない。
さらに「専願」入試という条件もある。この場合、合格したら必ず入学しなければならない。もし守れなければ、次年度入試から出身高校の募集人数が減らされたり、ひどい場合は指定校から外されたりと、大学側から重いペナルティが高校側に課される可能性がある。
では、気になる具体的な入試の流れを見ていこう。「学校推薦型選抜」の大きな特徴はなんといっても、基本「一般選抜より早くスタートする」こと。年をまたがず、11月から12月にかけて実施される。出身高校の校長先生が作成した推薦書の提出は必須だ。出願条件は、「学習成績の状況4.0以上」(高校3年2学期まで)とするなど、高い評定平均の水準を求められる。
なお、上記の「学習成績の状況」を基に、高校3年間の成績をAからEの5 段階で示した「学習成績概評※」(学校の全生徒の中での成績による立ち位置がわかる指標)を出願条件とする大学もある。これら条件をクリアしてようやく出願となり、選抜方法に目を向けられる。世間が思っている以上にやることが多いのだ。ひとまず高校内での選抜が最大のハードルだろう。
※学習成績の状況(評定平均値)は、A5.0~4.3が、B4.2~3.5、C3.4~2.7、D2.6~1.9、E1.8以下となっている。
「指定校制」のメリット、デメリットとは
主に私立大学で実施する「指定校制」のメリットといえば、医学部を除き、高校内の選考を通過さえすれば、よほどのことがない限り合格となること。一方でデメリットといえば、大学入学後、1〜2年間ほど成績や素行が追跡される。要は、大学入学後の成績、出席状況が芳しくないと、後に出身校の推薦枠が減らされたり、ひどい場合、指定校そのものを取り消されたりすることもあるという。
例えば早慶上智、東京理科大学、GMARCHなどの人気の大学では、少ない推薦枠をめぐって上位、中堅の高校では厳しい選考が行われる。一方、最難関の中高一貫校、公立高校ではこれらの大学に一般選抜で合格する能力があるので、メリットを感じず、志望者が大学が指定した人数に達せず、余ることも珍しくない。
出願はしやすいが、高倍率になりやすい「公募制」方式
「公募制」方式は基本的に、高校での成績について各大学の出願基準があれば、それを満たす必要があるが、なんと高校の成績(内申書の評定)を問わないケースも少なくない。
よって、出願のしやすさから高倍率になりやすい。選抜は基本、小論文や面接で行われる。中には、小論文といっても国語の現代文に近い出題形式であったり、面接では知識を問われる口頭試問を課したりと、「指定校制」に比べて入試の問題の範囲が幅広く、ハイレベルになりやすい傾向があるので、しっかりとした対策をしたいところだ。いずれにせよ、早めに過去の問題を確認しよう。
その他、商業高校や工業高校などに限定して募集する「専門学科枠推薦」や、スポーツで実績のある人を募集する「スポーツ推薦」、課外活動で顕著な結果を残した人を対象とする試験などさまざまある。自分に合った入試を探せば、それだけ合格率が高まるといえよう。
大逆転が起こりやすい「総合型選抜」入試
最後に、「総合型選抜」を見ていこう。この入試は出願大学に入学することへの意欲(入学して何をやりたいか、卒業後にどうなりたいか)が問われる。かつての自己推薦やAO入試に近い。無論、前述した通り、専願の場合は必ず入学しなくてはならない。
なんといっても私立大学の場合、塾関係者からは大逆転が起こりやすい入試方式といわれている。
いわゆる多くの難関大学では共通テストなどの学力試験がなく、もちろん学校長の推薦も必要ない。大学側から出願の際に求める評定平均の基準はあるものの、「学校推薦推薦型」に比べるとさまざま。たいてい選抜は、書類選考後に小論文や面接などが課される。強いてデメリットをいえば、選抜の期間が長いことで、個人によっては面接が複数回、長時間にわたって行われる場合もある点だろう。
加えて、一部の大学では課題図書の感想文、グループディスカッションや自己プレゼンテーション、模擬講義を受け、それについてレポートを提出、さらには出願前のエントリーシート提出や面談など、さまざまな選考方法や課題が課せられることもある。
選考のスタートもおおむね10月からと「学校推薦型選抜」より早い。一般選抜が実施される以前に合格発表がある「学校推薦型選抜」とは異なり、中には3月頃に選考を実施することもある。
ぜひとも、志望校の幅を広げるためにも、これらをうまく活用して、合格の可能性を高めてほしい。