勉強を始める前の準備(=環境設定)が重要
浪人は自己分析から始まる
浪人が決まったとき、多くの人がおそらく最初にやることは一般的に「塾・予備校選び」かと思います。時に保護者の協力も得ながらネット検索や口コミを頼りに、世の中に無数にある塾・予備校の情報収集をするのではないでしょうか。
私は塾・予備校探しの前に、浪人生がしなければならない最も大事なことがあると考えています。それは「自己分析」です。まずは志望校に合格できなかった昨年の自分の受験生活を振り返り、その原因を冷静に分析してほしいのです。
「勉強時間が足りなかった」「英語の学習を詰めきれなかった」など、表面的な分析では決して終わらせないでください。例えば「勉強時間が足りなかった」という反省点が思い浮かんだ場合、そこからさらに「それはなぜだったのか」を何層にも深掘りして考えてみてください。
簡単な例を挙げると、
勉強時間不足→
【なぜ?】→友人とのおしゃべりが多かった→
【なぜ?】→自習室には行くものの、そこに友人がいたから→
【なぜ?】→学校に近くて、知人が集まる塾を選んでしまったから→
【今年はどうすればいい?】→知り合いがいない有料自習室を借りる
などでしょうか。 昨年の勉強方法や環境設定など、受験勉強に関連するあらゆる点について振り返り、「なぜ?」を繰り返し、自己分析を深めていきましょう。
環境設定に十分注意を払う
自己分析がしっかりできると、浪人生としての自分に最適な過ごし方が自然と見えてきます。例えば、塾・予備校選びも多分スムーズになるはずです。
塾・予備校選びは、「大手だから」「家が近いから」「友人に勧められたから」のような安易な基準で決して行ってはいけません。塾・予備校は「自分の学力や性格と相性がよい」ところを選ぶ必要があります。集団なのか個別なのか、対面なのかオンラインなのか、管理体制が強いか弱いかなどさまざまな尺度がありますが、自分にとって必要なものがそろっているかどうかが重要です。
例えば自己分析をしてみた結果、現役時代は周囲と自分を比較し、焦りや不安からメンタルの調子を崩しかけた経験などがあったとすれば、集団授業は向かないでしょう。
一般的には「ライバルの存在を感じながら、競争心をモチベーションの源にするとよい」などと言われ、集団スタイルが推奨されがちですが、そんな考え方が万人に当てはまるはずはないのです。その環境が実際にモチベーションになるタイプの人もいれば、焦りや不安が募るだけのタイプの人もいます。
そういった性格面まで丁寧に自己分析ができていると、自ずと自分と相性のよい塾・予備校も明らかになってきます。
もちろん塾・予備校に通わず独学で頑張る人もいると思いますが、その場合も同じです。勉強場所はどのようなところがいいか、困ったときに誰かに相談できる環境をどうやって整えておくかなど、環境設定に十分注意を払ってこそ、1年間安定して頑張り続けることができるようになります。
この「環境設定」は受験の結果を大きく左右します。妥協せずに考え、調べ、自分にとって最適な勉強環境を整えてから浪人生活をスタートさせてください。
浪人を成功させるための勉強法
環境が整ったら、実際に勉強を始めていくわけですが、浪人生として特に意識しておくべきポイントを紹介したいと思います。
去年の自分のすべてを疑い基礎からやり直す
勉強の方法論の前に、知っておいてほしい重要な「姿勢・心構え」があります。それは「すべてを疑う」こと、言い換えれば「すべて基礎から丁寧に勉強し直す」ことです。
去年、志望校に合格できなかったのは、自分の何かが確実に足りなかったということです。自分で気づいている失敗原因もあれば、もしかすると自分自身でも気づけていないような足りないことがあったのかもしれません。
今年は失敗できない浪人だからこそ、去年の自分のすべてを疑ってかかってほしいのです。それをわかりやすく言い換えれば、基礎から丁寧に勉強し直すということになります。
仮にそれなりの大学の合格を蹴って浪人した人でも、過信は禁物です。英語であれば五文型の基本的なところから、古文であれば四段活用から、社会などは問題集よりも教科書をさらい直すところから、丁寧に積み上げる勉強を意識してください。
高校時代はどうしても時間が足りず、曖昧なまま済ませてしまった単元もきっとあるはずですが、そこに浪人生としての伸びしろがあります。
ただし、すべてを疑うからといって「自分はダメな人間だ」などとは決して考えないようにしてください。自分の能力や人格を疑うのではなく、勉強方法や勉強量などの客観的な事実を疑ってください。
現役時代の不合格のショックが大きく、どうしても自分で自分を否定してしまうような精神状態に陥ってしまう浪人生は少なくありません。気持ちはとてもわかりますが、そのようなメンタリティのままでは浪人生活がただただつらく苦しいものになってしまいます。
昨年の自分のさまざまな記録を塗り替えて更新していくゲームのような感覚で、分析と改善を繰り返していきましょう。
ルーティンをつくる
浪人生活は約1年間の長い長い戦いです。こういった長丁場のイベントに立ち向かうときに意識してほしいことが「習慣化・ルーティンづくり」です。私は「習慣化・ルーティンづくり=エネルギーの節約=失敗リスクの低減」だと捉えています。
例えば、毎朝勉強計画を立てる人がいます。「今日は何の勉強をしようかな、どの参考書を使おうかな、各教科何時間ずつやろうかな……」と、1日のスケジュールを考えるのって結構疲れますよね?
1日の中で、都度やることを考える人もいます。朝はとりあえずカバンの一番上に入っていた英単語帳をやって、一区切りついたところで「次は何をしようか」としばらく考えてから数学をやり、疲れたから休憩をし、「そろそろ勉強に戻ろうか、もう1本だけYouTubeの動画を見てからにしようか」と悩んで、結局動画を見てしまう……。
かなり行き当たりばったりな例ではありますが、このような経験がある人は少なくないはずです。何かを考え、決断しなければならないときにはエネルギーが必要です。気合い、意志力などとも言えるかもしれません。
例えば休憩から勉強に戻るときに、「さあ、そろそろやるか!」などと気合いを入れて勉強机に戻る人もいるかと思います。これは一見すると、勢いをつけて自分を奮い立たせて頑張っている素敵な浪人生の姿に見えるかもしれませんが、私から見れば無駄なエネルギーを使っている不器用な浪人生です。
もしかすると、その日の気分によっては「さあ、そろそろやるか! ……いや、でももうちょっとだけ動画見ちゃおうかな。いや、でも勉強しなきゃ……、んー、でも見ちゃおう」となることもあるかもしれません。
エネルギー・気合い・意志力を使って毎回決断をしている人は、毎回エネルギーを消費して疲れるだけでなく、時に誘惑に負けるなどして判断に失敗するリスクを抱えているのです。
ではどうすればいいか? 簡単に言えば、毎回エネルギーを使って判断しなくても済む状態をつくればよいのです。それが「習慣化・ルーティンづくり」です。
例えば世界の有名な起業家に、毎日同じ種類の服しか着ない人がいます。その理由は、毎朝どの服を着るか悩んで決める意思決定にエネルギーを浪費したくないからだそうです。ルーティン・ルールをつくってしまうことで、いちいち考えなくてもよい生活を編み出しています。
みなさんはお風呂に入って、一番最初に頭を洗いますか? それとも顔や身体ですか? 毎回、風呂場で洗う順番を真剣に悩む人は、おそらくいないと思います。きっと浴室に入ってから出るまで、ほぼ自然に手が動き、気づいたら一連の作業が終わっているのではないでしょうか。これも毎日のルーティンになっているがゆえ、無意識状態でも自然と行動ができていることの一例です。
具体例が長くなりましたが、ルーティンをつくることによって、勉強も同様に無意識に近い状態で自然かつ淡々と進められるようになります。
私の塾に在籍している生徒には「就寝時間・起床時間・勉強開始時間・午前中の勉強内容」は必ず固定するように伝えています。午前中の勉強内容は主にインプット系で構成し、その順番も固定するようアドバイスをしています。英単語50分→休憩5分→英文法60分→休憩5分→社会暗記60分のようなイメージです。
文系理系を問わず、毎日必ずやらなければならない勉強があるはずです。そういったものを、時間から順番に至るまで固定して、毎日同じ時間に同じようにやるのです。
最初の2週間ぐらいは、勉強時に以前と変わらない疲労感があるかと思います。しかし2週間ぐらいたつと徐々に習慣になってくるため、重い腰を上げるような感覚なしにノーストレスで勉強に取り掛かれるようになると思います。
定期的な成績チェック体制を設ける
浪人生活における重要な工夫の1つが、自分の学習の習熟度をチェックする仕組みを構築しておくことです。できれば数カ月に1回の模試などではなく、週1回ぐらいの小テストなどが好ましいと考えます。
これには主に2つの目的があります。1つは自分の勉強が正しい方向性で行われているかを確認し、間違っていれば方向修正をするためです。もう1つはモチベーションを維持するためです。
受験勉強は「入試で合格点を取る」というただ1つの目的のために行います。勉強のゴールがテストで点を取ることである以上、自分の勉強の効果はテストで測るべきです。仮に1日18時間勉強していたとしても、テストの点数が上がっていなければその時間は無意味だったことになります。自分の努力を無意味なものにしないためにも、テストで細かく自分の勉強の成果を確認しながら進むほうが安心です。
数カ月に1回模試を受ければいいと思っている人も多いのですが、それでは頻度が低すぎます。数カ月後に勉強の方向性が間違っていたとわかっても手遅れです。私の塾ではさまざまな内容に関して2日に1回テストで確認をしていますが、最低でも週に1回程度は小テストというかたちで自分の勉強の習熟度を確認することをお勧めします。
そしてこれは副次的な効果をもたらします。それがモチベーションの維持です。浪人生活は長く、日々同じことの繰り返しです。そんなとき「自分の成長を実感できるかどうか」は、勉強を続けていく中で大きなポイントになります。
テストの得点がよければ、自分の勉強が間違っていなかったことへの安心感と成長の喜びを感じることができ、翌日以降のモチベーションになります。テストの得点が悪ければ、自分の勉強法や勉強量を疑ったり、弱点を発見したりすることができ、改善アクションを考えて次の成長につなげることができます。
いずれにしてもテストというチェック機能があればこそ、前向きかつ地に足の着いた浪人生活を歩んでいくことができるのです。そういった仕組みを持った塾・予備校を選んだり、独学でもドリルなどを活用して習熟度を確認する方法を考え出したり、自分の成長を客観的に測定できる工夫を取り入れてみてください。
浪人生が確保するべき勉強時間
よく浪人生からされる質問に「浪人生は1日何時間勉強すればよいですか?」というものがあります。前項でも述べたように、何時間やろうが得点が取れなければ意味がありませんので、しっかりと「質」にこだわることを前提として、あえて勉強量の目安を伝えるとすれば、
- 春:8時間以上
- 夏以降:10時間以上
を目安として計画を立てていただきたいと思います。
4月は浪人生としてのルーティンを構築していく時期です。最初から無理して1日の勉強時間を伸ばそうとするよりも、まずは毎日淡々と勉強を継続できる習慣と基礎体力をつけることを目標にしてください。その目安が9~12時の3時間と、13~18時の5時間を合計した8時間です。
先にも述べたように、2週間ほど同じスケジュールで勉強をしていれば徐々に習慣化され、無理なく8時間勉強できるようになっていくと思います。毎日8時間以上の勉強ができるようになったら、徐々に学習時間を伸ばしていきましょう。
某学習時間記録アプリが発表したデータによれば、早慶合格者の8月の最低学習時間は約10時間でした。つまり、8月に毎日平均10時間以上の勉強をしていなかった人で、早慶に合格できた人はいないということです。あくまで参考値ですが、これを1つの基準と捉え、夏以降は最低10時間を目標にしていただきたいと思います。塾・予備校の授業時間も算入して上記のイメージです。
浪人生の具体的な1日のスケジュール例
1日のスケジュール例が下記です。

24:00就寝&7:00起床
就寝時間と起床時間は必ず固定します。浪人生の一番の敵とも言えるのが「生活リズムの乱れ」です。高校時代は学校の存在がペースメーカーとなっていましたが、浪人にはそれがありません。自由な過ごし方ができてしまう分だけリズムが乱れがちです。
夜更かしをしてしまうことにより、朝寝坊するというのが最も多いパターンです。夜更かしをしないことも大切ですが、たとえ夜更かしをしてしまっても「起床時間だけは絶対に守る」ことを意識すれば、生活リズムは乱れずに済みます。ここには細心の注意を払ってください。
8:00 散歩など
必ず散歩をしなければならないわけではなく、勉強開始の前に頭と体を起こすような活動を推奨しています。シャワーなどでもよいかもしれません。
ただ、浪人生は運動不足になりがちですので、散歩やジョギングなどの軽い運動を習慣にすることがお勧めです。塾・予備校の校舎に通う人は、通塾の移動が散歩の役目を果たしてくれるかもしれません。
9:00〜12:00 インプット系ルーティン
ルーティンづくりの項で述べた内容と同じです。午前中は毎日同じ種類の勉強を、同じ順番でやることをお勧めします。いきなり演習問題を解くようなアウトプット系に取り組むよりも、エネルギーを使わずにスラスラと取り組めるような内容を設定しておきましょう。
適宜小休憩を挟みながら進めてOKですが、休憩に入るときはアラームを設定するなど、勉強にちゃんと戻ってこられる工夫を取り入れましょう。
13:00〜18:00 インプット+アウトプット
午後はインプット系の残りを仕上げつつ、アウトプット系の学習にも取り組みます。繰り返しになりますが、受験勉強は得点を取るために行いますので、得点を取るための練習も必要です。インプットした知識をアウトプットにつなげられるかどうかを確認しましょう。
21:00〜23:00 復習的インプット
18:00まで頑張れば8時間の学習はできています。春はそこまででもよいかもしれません。
夏以降は夜の時間帯を使って学習時間を増やしていく必要があります。あくまで一例ですが、夜もインプット系の学習をお勧めします。さらに言えば、1日の内容の復習要素を含めたインプット学習がお勧めです。
記憶は反復で強化されます。午前中に勉強して覚えた内容を、改めて夜の時間にもう一度目を通しておくだけで記憶の定着率は高まります。このように人間の記憶のメカニズムも理解して、効果的な学習につなげてください。
また「アルバイトをしてもいいですか?」と質問を受けることもありますが、私は「夏頃まではやってもいいのでは?」と回答することが大抵です。学校というコミュニティがなくなってしまう浪人生にとって、アルバイトは社会とつながる接点にもなれば、リフレッシュのツールにもなります。週に数時間であれば勉強を大きく圧迫することもないため、適度に取り入れることは、もしかするとプラスの効果のほうが大きいかもしれません。
ただし、やはり夏以降は学習時間を増やしていくためにもあまりお勧めはしていません。
浪人生活のモチベーションを保つ方法
長い浪人生活は、そもそも1年間やりきることができず、脱落してしまう人が出るほど大変なものです。その中でどのように勉強へのモチベーションを保ち、日々を過ごしていくかは非常に大切なポイントになります。浪人生活におけるモチベーション維持のために効果的な方法をいくつか列挙します。
モチベーションを上げようと思わない
この項のタイトルに反するように見える内容ですが、そもそもモチベーションを上げようと思わないことが実は重要です。言い換えると、モチベーションにはムラがないほうが好ましいということになります。
例えば、ある日は「今日は気合いを入れて15時間やるぞ!」と意気込み、別の日には「今日はちょっと気分が乗らないから半日で勉強は切り上げよう」と休みをつくるなど、モチベーションのアップダウンが激しい人は長続きしない傾向があります。勉強に向かうことに毎日いちいちエネルギーを使って疲れてしまいます。
一方、受験勉強は浪人生としてやらなければならないことと割り切って、毎日ルーティンに従って淡々と一定量の勉強をこなしている人は、生活リズムも成績も安定する傾向があります。この人は一見するとモチベーションが低いように見えるかもしれませんが、そうではありません。高くも低くもなく、一定のニュートラルな状態を維持しているのです。
これまで多くの浪人生を見てきましたが、成功するのは圧倒的に後者です。勉強を習慣化できた人は本当に強いと感じます。
最高目標より最低目標が重要
学習計画を練るときには、多くの人が目標の勉強時間を打ち立てると思います。やらなければならない勉強をたくさん書き出し、所要時間を合計し、1日12時間程度の目標計画をつくっている人が多いようです。
何か計画を立てるとき、人は得てして理想を並べがちです。しかし各教科の受験勉強には明確なゴールがありません。英単語も、世界史や日本史の人名も果てしなく存在しており、覚えたいものを無限にリストアップできてしまいます。
そんな受験勉強の特性もあり、特に完璧主義の人は、学習計画を立てるときにあれもこれも詰め込んで、とても高い目標をつくってしまう傾向があります。しかし、これが自分のモチベーションを下げる原因にもなり得ます。
「理想」とは言い換えれば「最高の状態」です。理想的な学習計画を立てたときにでき上がってしまう目標は「最高目標」です。それはつまり、簡単には達成できない目標です。毎日最高目標を打ち立てることは立派ですが、高い目標は達成できないリスクも高くなります。そして現実として、目標が達成できない日(=失敗)が続けば、人のモチベーションは徐々に下がっていくものです。
そこで取り入れてほしい考え方が「最低目標と最高目標の両方をつくっておく」というものです。例えば、前述した夏の勉強時間の目標は10時間でしたが、まずは8時間やることを最低目標として設定しておき、それが達成できた時点で一度自分を思いっきり褒めてください。そして夜の時間も追加で頑張って+2時間、合計10時間の最高目標が達成できたときには、さらに自分を褒めてほしいのです。
最高目標を達成できる日があまりなかったとしても、最低目標をクリアできていることが少なからず自信となり、モチベーションが下がることはなくなります。このようなちょっとした工夫を取り入れることで、1年間の勉強を細く長く続けることが可能になります。
定期的に自分の過去を振り返る
もう1つモチベーションを保つための方法として取り入れてみてほしいのが、定期的に過去を振り返る時間を設けることです。
例えば浪人生活の4月の終わりに、1年前の高3時の4月の自分を思い出してみてください。4月の1カ月、合計でどれくらい勉強できたか。おそらく昨年と比較して何倍も勉強できているのではないでしょうか。そんなの浪人生なんだから当たり前だと思うかもしれませんが、事実として多くの時間を勉強に費やすことができている自分は必ず成長しており、合格に近づいているはずです。
どうしても浪人生は未来にフォーカスしがちです。「自分はこのままで志望校に合格できるだろうか」という不安な気持ちにはもちろん共感できるのですが、先のことは誰にもわかりません。
確実にわかるのは、自分が歩んできた過去です。そこに積み上げてきたもの、成長を感じられる事実があれば、きっと自信を得てモチベーションを保つことができると思います。もちろん振り返ったときに、自分が成長を感じられるような過ごし方を日々心掛けることが大切です。
浪人生が勉強する際の注意点
生活リズムを乱さないことが何より重要
スケジュールの項でも述べましたが、生活リズムの乱れが浪人生にとって最も大きな失敗の要因になります。夜更かしをする→起床が遅くなる→勉強開始が遅くなる→勉強時間の確保のために夜遅くまで勉強しなければならなくなる→さらに起床が遅くなる……という負のループが生まれます。これはまだ良いほうで、勉強時間がただただ短くなっていき、成績が下がっていくケースもあります。
また、メンタルにも悪影響が生じます。普通の感覚があれば、浪人生としてふさわしくない生活になっている自分に罪悪感を感じ、気持ちがネガティブな方向に傾きます。さらに大体は成績が下がりますので、その点にも落ち込んでいきます。こうなると負のループから抜け出さない限り、受験を諦めるところまで落ちていきます。
改めて強調しますが、浪人生は「絶対に起床時間を固定」してください。最悪夜更かしをしてしまったとしても、起床時間さえ守れば負のループを断ち切ることができます。その日は眠いかもしれませんが、1日だけ耐えればまた元のリズムに戻せます。家族の協力を得るなどして、起床時間を守れるような工夫を取り入れてください。
浪人をしたら、去年よりよい大学に合格できるわけではない
最後に、これは浪人生だけでなく、その家族の方々にも知っておいてほしいことですが、浪人をすれば必ず前年よりもよい大学に合格できるというわけではありません。ここまで読んでいただいてわかるように、浪人生活にはさまざまなリスクが潜んでおり、それらを回避する工夫や、トラブルに対する的確な対処ができなければ、受験勉強から脱落せざるを得なくなるような事態にも陥りかねないのです。
しかし受験生が「浪人すれば早慶に行けますよね?」と言ってきたり、親が浪人生に「予備校代を払って浪人させたんだから、早慶ぐらい行ってくれなきゃ困る」などと当たり前の顔をして言っていたりする光景を私は何度も見たことがあります。
もちろん1年間一生懸命頑張れば、昨年よりも成績を上げ、難関大学に合格することも可能です。しかしそれは決して当たり前ではなく、日々の生活、勉強法などに細心の注意を払って、丁寧に日々を過ごした人だけに訪れる未来です。
このことをしっかりと心に留めていただき、浪人生としての一日一日を大切に過ごしていただきたいと思います。
まとめ|浪人生の勉強法
浪人生が勉強を続けて合格に近づくための方法や心構えを紹介してきました。自己分析、環境設定、ルーティンづくり、最低目標の設定、起床時間の固定など、少しの工夫を取り入れることでモチベーションを維持し、着実に成績が向上する浪人生活を送ることが可能になります。
「ローマは一日にしてならず」ということわざがありますが、浪人という長期間を要する大事業を成功させるためには、一日一日に気を配りながら丁寧に過ごしていくことが求められます。1年の間にさまざまな出来事もあるとは思いますが、アップダウンの少ない、安定感のある日々を歩んでいくことが合格の秘訣です。
みなさんの浪人生活が実りあるものになることを祈っています。