夏が大学受験の天王山と言われる理由
「天王山」とは「勝敗や運命を決する重大な局面」を指す言葉です。1582年の山崎の戦いで、羽柴秀吉が明智光秀を破った際、京都にある天王山をいち早くおさえ、地形を活かして戦いを有利に進めた史実に由来する言葉だと言われています。
なぜ大学受験生にとって夏休みが天王山と呼ばれるのでしょうか?
1年の中でもっともまとまった時間が確保できる時期が夏休み

やはりもっとも大きな理由は「勉強時間の確保」です。平均的な高校の夏休み期間は40日程度かと思いますが、学校の授業がなく、1日の時間を自由に使える40日間を有効活用すれば大きな飛躍を遂げることができます。そこでしっかりと目を向けなければならない現実は「差がつきやすい」時期でもあるということです。
例えば夏休み中に毎日欠かさず10時間の勉強を頑張った高3生のAさんと、5時間頑張ったBさんを比較してみると、
- Aさん 1日10時間×40日=400時間
- Bさん 1日 5時間×40日=200時間
というように、夏休みが終わる40日後には200時間もの差がついてしまうことになります。Bさんの5時間も、学校がある平日を基準に考えれば、それなりに頑張っていると言える勉強時間の長さです。しかし夏休みを普段の平日と一緒にしてはいけません。
夏休みは普段なかなか勉強時間を確保できずにフラストレーションが溜まっていた本気の受験生たちが、待っていましたとばかりに物凄い量の勉強をしてきます。そういうライバルが全国にたくさんいることをしっかりと意識しておきましょう。
仮に夏休みに遅れをとったらどうなってしまうのかも考えてみましょう。例えば上記のBさんは、Aさんに対して200時間負けていることになります。この200時間を9月以降になんとか取り返してAさんに逆転してやろうと思ったら、何日間ぐらいかかると思いますか?
もちろん9月以降、Aさんだって勉強はします。Bさんが必死に頑張って9月以降の平日に毎日Aさんよりも1時間多く勉強したとしても、200時間の遅れを取り戻すのに200日かかります。9月から200日が経過するのは4月頃でしょうから、2月の入試本番をAさんには追い付けない状態のまま迎えることになるのです。
夏休みに必死に頑張るということはAさんのようにライバルを大きく引き離すことができるということであり、夏休みにサボるということはBさんのように取り返しのつかないハンデを背負うことになるということがお分かりいただけたでしょうか?
夏休みの勉強量が、受験生としての勉強の総量に大きく影響するこの事実は、まさに夏が受験の天王山であることを示しています。
夏休み期間での勉強がその後にもたらす好影響
夏休みに頑張った受験生は9月以降の過ごし方においても多くのメリットを享受できるという事実があります。夏休み期間に毎日10時間の勉強を頑張った上記のAさんであれば、恐らく下記のようなスキル・感覚を手に入れることになります。
①長時間勉強することが苦しくなくなる
②長時間勉強できないモヤモヤから、時間の使い方を工夫する
③勉強の勘どころが分かっており効率のよい勉強ができるようになる
④夏に伸びたことからくる自信がモチベーションを高める
①については想像しやすいと思いますが、長時間勉強への耐性が獲得できるため、9月以降の土日や冬休み期間なども長時間集中して勉強に取り組めるようになります。
また、②については私もよく生徒から相談をうけるのですが、夏休みに真剣に取り組んでいた受験生ほど、学校が始まると十分な勉強時間が確保できないことにフラストレーションを抱く傾向があります。そして、勉強時間を少しでも多く確保できるよう自ら時間の使い方を工夫し始めます。早起きをしたり、隙間時間を上手く使ったり、夏にできていた状態を理想として、そこに近づけるための工夫をするようになり、結果的に9月以降もライバルより中身の濃い日々を過ごせるようになります。
そして見ていると、そうやって捻出した平日の勉強時間でおこなう勉強内容も夏休み前から一段階進化しているように思います。夏の40日間にしっかりと勉強時間をかけ、様々な試行錯誤をしてきた受験生は、知らず知らずのうちに自分に合った勉強法や勉強リズムを体得していきます。これは努力を重ねた人にしか到達できない世界であり、わずかな時間の中でも効果を最大化する自分なりの方法を見出し、それを使って9月以降も効果的な学習をおこなえるようになります。これが③に挙げた内容です。
そして最後が④に挙げたメンタル面での効果です。長時間勉強ができた事実、そこから成長した事実など、自分が夏休みに積み上げた揺るぎないものがある人は、それを自信に変えて秋以降も前向きに進んでいく傾向があります。「夏にあれだけ頑張れたんだから私ならできる」「頑張ったら成績が伸びたから、もっと頑張ればもっと伸びるぞ」など、自分で体験した事実を根拠にした自信を得た人は強いものです。
夏休みに受験生として頑張ることができると、それがさらにポジティブなサイクルを生み出し、どんどん自分を成長させてくれるのです。
弱点強化など普段できない勉強に取り組める
学校がある平日、「本当はあの勉強もやっておきたいんだけどな…」と思うことはないでしょうか? 「本当はもうちょっと練習問題を解いて慣れておきたいのに」「本当は中途半端な理解のまま通り過ぎてしまったあの範囲の勉強をしておきたいのに」など、勉強しなければいけないとは思いつつも時間がなくて手が付けられないままにしてしまっているものが、恐らくほとんどの受験生にあるのではないかと思います。
夏休みはそういった「摘み残し」に手を付けられる絶好の機会です。自分の中の不安を解消したり、得意をさらに伸ばしたり、学校がある時期にはできない勉強を夏休みにおこない、実力と自信をつけられれば、それがライバルよりも有利に立つことに繋がります。
夏休みが受験の天王山と呼ばれる裏には、様々な根拠があるのです。受験生の方には夏休みを本当に大切に丁寧に過ごしてほしいと思います。
夏休みの受験勉強のポイント・過ごし方
では実際にどのような点に気をつけて夏休みを過ごせばよいのでしょうか。これも多くのポイントや様々な考え方がありますが、下記にいくつか私の見解を述べてみたいと思います。
夏休みの受験勉強のポイント・過ごし方:
・最初の1週間が勝負のカギ
・ルーティンを構築
・起床時間を絶対に固定
・勉強計画は前日の夜に立てる
・インプットとアウトプットのバランス
最初の1週間が勝負のカギ

私は自塾Studyコーデの生徒たちに「夏休みを成功させられるかどうかは最初の1週間の過ごし方にかかっている」と毎年口酸っぱく伝えています。夏休みが始まったばかりの最初の1週間ですから、7月下旬頃の1週間になるかと思います。
もしあなたが高3生であれば、夏休みは1日に8時間~12時間程度の勉強をしなければなりません。しかし多くの人がそこまで長時間勉強をすることには慣れていないでしょう。
そこで、最初の1週間に無理やりにでも1日長時間勉強することを継続し、まずはその生活に慣れてほしいのです。そこで長時間勉強が継続できた人は、慣れと自信を得て、8月の1カ月間も同様に走り抜けることができます。しかし最初の1週間で勉強をしたりしなかったりというような過ごし方をしてしまうと、大抵の場合、8月も同じような不安定な状態で過ごしていくことになる人が多いのです。
前述の通り、夏休みの40日間においては、過ごし方次第でライバルと大きな差が生まれます。最初の1週間で「夏休みモード、長時間勉強があたりまえモード」のスイッチを半ば強制的にONさせておくことが、夏休みの充実のための入り口になるのです。
ルーティンを構築
次に、長時間の勉強を継続できるためにも重要となるキーワードが「ルーティン・習慣化」です。1日の勉強計画を立てている人は多いと思いますし、無計画であるよりは立派なのですが、もし毎朝「今日は何の勉強から始めようかな、どの教科を何時間ぐらいやろうかな…」と考えているとすれば、それはやや非効率であり、失敗のリスクも大きいと言えます。
基本的に多くの受験生にとって勉強はできればやりたくないもので、取り掛かるのにエネルギーが必要です。何をやろうか考えることにも疲れますし、決めた勉強に取りかかる際にも重い腰を上げるようなエネルギーが必要です。こういった状態ですと、うまくいく日とうまくいかない日が出てくるのです。
例えば、体調や天候に起因して、ちょっと気分が乗らない日もあると思います。いわばエネルギー不足の日です。そういった日は、いつもであれば重い腰を上げて勉強に向かえる人も、「まあ今日はいっか」と目の前のタスクから目を背けてしまうことがあります。人間の意志の力はそこまで強くないということは多くの人が実体験から気づいていることでしょう。
これが、ルーティンを構築できると、いちいちエネルギーを浪費しなくても勉強が進むようになるのです。特に私がお勧めするのは「午前中の勉強内容・時間配分を固定すること」です。
朝9時からスタートし、まずは英単語帳を40分やり、次に古文単語を30分やって…というように毎日同じ内容で同じ過ごし方をするのです。特にインプット系の勉強はどこかの時間帯を使って毎日欠かさずやらなければならないものが多いはずですので、それを午前中に持ってきます。
やることが毎日一緒だと、いちいち勉強計画を立てる必要がなくなります。ひとつひとつの勉強に対してもいちいちアレコレ立ち止まって考えず、流れ作業的にこなせるようになります。洗面所に入って顔を洗って歯磨きをしてうがいをするかのごとく、勉強が一連の流れとして淡々と進むようになったら、それがルーティンの完成です。
午前中にインプット系のルーティンを構築すべき理由は大きく2つです。1つ目は、午後へのモチベーションが上がることです。午前にやることをしっかりやれたという事実は、シンプルに気分がいいものです。「午前中の自分、イイ感じにやれたな、午後もこの調子で頑張ろう」と前向きな気持ちが生まれ、午後の勉強も捗る傾向があります。
2つ目は、生活リズムを乱さないためです。勉強開始時間を固定するということは、それに合わせて起床もしなければならないということです。後述しますが、夏休みに潜むもっとも大きな危険は「生活リズムの乱れ」です。これで夏休みを台無しにしないためにも、午前中の活動をしっかりと規定しておくことが重要なのです。
起床時間を絶対に固定
夏休みに潜むもっとも大きな危険は「生活リズムの乱れ」であるという点について、少し詳しく書いておきたいと思います。
普段、1日のリズムをつくり出し、固定化してくれている「学校」というペースメーカーが夏休みにはなくなってしまいます。極論、登校するために朝から起きる必要がなくなるので、何時まででも寝ていられるのが夏休みです。当然ですが受験生としては、昼過ぎまで寝ているなどということがあってはなりません。ライバルに差をあけられてしまいます。
生活リズムの乱れの引き金は、大抵の場合「夜更かし」です。遅くまでスマホやゲームをしてしまうなど、夜更かしをしたせいで翌朝に起きられなくなり、徐々に昼夜逆転生活に陥っていくというパターンがもっとも多いと思われます。
そこで受験生として絶対に守ってほしいのが「起床時間を絶対に守る」ということです。たとえどんなに夜更かしをしてしまったとしても、実は起きる時間さえ守れば、生活リズムは乱れません。
夜更かしする→翌朝寝坊する→午後から夜にかけて勉強をしなくてはならなくなる&夜眠くならない→さらに夜更かしする→さらに寝坊する…ということをしてしまうと昼夜逆転になりますが、翌朝の起床時間を守れれば、この負のサイクルを断ち切ることができます。
夜更かしをした翌日の1日だけは眠いと思いますが、その日さえちゃんと起床すればリセットできるのです。家族に起こしてもらう、特大の目覚まし時計を買うなど、何かしらの対策を講じて起床時間を守れるようにしましょう。もちろん夜更かしをしないことも言うまでもなく大切です。
勉強計画は前日の夜に立てる
上記で、午前中はインプット系の勉強でルーティンをつくることをお勧めしました。では午後の勉強計画はどのように立てればいいのでしょうか。
まずは勉強計画を立てるタイミングについてですが、私は生徒たちに「前日の夜に翌日分の計画を立てておく」ことを勧めています。理由は2つです。
1つ目の理由は、勉強の中断や行き当たりばったりになることを防ぐためです。当日に計画を立てることは、そのあいだ勉強自体がストップすることを意味します。「勉強をする」という行為だけに集中できたほうが1日のパフォーマンスは当然上がるため、無用な中断は避けたいものです。
また中断からの再開時には前述のようにエネルギーを浪費する側面も否めませんし、休憩から戻れなくなるなどの失敗に繋がるリスクも内在しています。すでに立ててある計画に沿って朝から晩まで流れるように行動したほうが自分をラクに勉強に向かわせることができるのではないでしょうか。
2つ目の理由は、翌日の勉強計画を立てる作業が、当日の振り返りに繋がる効果があるからです。1日勉強を頑張り、寝る前に翌日の計画を立てている自分を想像してみてください。恐らく多くの人は、まず1日の自分の勉強内容を振り返り、それに基づいて翌日の計画を立てようとするのではないでしょうか。
「今日は英語長文の問題集に予想以上に時間がかかったな。明日の長文演習のスケジュールは、それを考慮に入れて40分で見積もっておこう」「今日やろうと思っていた三角比の復習に手が付けられなかったな。明日の午後に1時間確保しておこう」など、当日の振り返りを参考にしながら翌日の計画をつくることで、より自分の勉強が洗練されていきます。
もちろん普段からそういったことを考えながら計画を立てているとは思います。ただ1日の終わりにちゃんと時間をとって、丁寧に自分の1日を思い返してみると、自分の予想以上に様々な気づきを得ることができます。
自分の過去の努力を丁寧に未来につなげていくことは、成績向上だけでなく、主体性や充実感の醸成にも繋がっていくと私は感じています。受験勉強はやらされ仕事と捉えてやっていてもつまらないし、辛いだけです。自分の未来のために自分で考え、工夫して、自分の足で歩んでいる感覚をもって受験生としての日々を過ごせるとよいですね。振り返りと計画立案の作業には、そういった感覚をもたらす効果もあるのです。
インプットとアウトプットのバランス
次に勉強計画を立てる際の勉強内容に関する注意点ですが、インプット系の勉強とアウトプット系の勉強のバランスに十分気を遣ってください。「夏休みはたくさん問題集をこなす!過去問を10年分解く!」などとアウトプット系の学習に闘志を燃やしている受験生を見かけることが多いのですが、夏の時点では必ずしもそれが合格のために必要な勉強であるとは限りません。
知識をインプットできていない人が、いくら問題集を解いたところで正解はできません。もちろん問題集を解いて間違えたものを覚えるという、アウトプットからインプットへと繋げる学習アプローチもありますが、それは網羅性が低く、どちらかというと受験直前期に採用すべき勉強法です。夏はせっかく時間がとれる貴重な期間ですので、インプットの強化にもしっかりと時間を割くような計画を立ててください。
実際には、人によって夏時点での立ち位置は異なります。知識の習得の度合いによって取り組むべき学習内容は違いますので、自分の状態をよく分かってくれている教師や塾講師がいれば、その人にアドバイスを求めてみてください。
科目別!夏休みの受験勉強のポイント
各科目ごとに推奨される勉強内容を記載します。各自の希望進路やレベルによって採用すべき勉強内容は異なりますので、抽象的な内容が多くなってしまいますが、一例として参考にしてください。
英語
単語や文法などは反復暗記が必要なので午前中のルーティンに組み込んで夏休みに何周もしましょう。長文読解などの演習については「答え合わせ・復習」の時間を重視してください。どんな形式の問題に対して、どんなプロセス・根拠をもって正解を選ぶのか、問題形式ごとの解法プロセスをじっくりと時間をかけて理解してください。その作法を夏に身につけておくことで、秋以降演習が増えてくる時期に成績を大きく伸ばすことが可能になります。
数学
苦手な単元があればその単元の理解に努めましょう。また、典型問題の「型」を身体に染み込ませる勉強をしましょう。具体的にはチャート式や学校の教材から頻出パターンを厳選し、解法プロセスを暗唱できるレベルまで反復します。夏に弱点を補強し、基本パターンを完璧にしておくことが飛躍のカギです。
国語
現代文
普段はなかなか腰を据えて取り組む時間がないため、夏に読解問題集に取り組みましょう。共通テストの過去問なども題材にしながら2日に1回ほど解けるとよいでしょう。英語の演習と同様、復習を丁寧におこなって解法プロセスを身につけることを大切にしてください。
古文
苦手意識をもっている人が多い科目です。基礎文法などに不安がある人は夏にしっかりと理解しましょう。あとは単語暗記と品詞分解練習が得点向上のカギになりますので、インプットの反復も日々実施しましょう。
理科
物理・科学
数学と同様に苦手な単元へのテコ入れをしつつ、典型問題の「型」を覚えましょう。原理・公式の導出ができるようになること。それに具体的な数値を代入した作業がこなせるようになること。またグラフ等へのビジュアル化の練習も一連で行い、物理・化学の思考プロセスに慣れましょう。
生物
物理や化学と比べると暗記物が多い科目であるため、反復学習が重要になります。用語を覚えるときは教材に掲載されている図表にも目を通しながら学習しましょう。データの読解問題なども練習による経験値が重要となりますので、夏の時間があるときに取り組んでおけると理想的です。
地歴公民
どの科目も暗記が中心となるため反復量を意識した学習を大事にしましょう。高校によっては、卒業までの授業時間内に全範囲を学習し終わらないところがあります。自分の高校の進度を把握し、もし進度が遅いようであれば自分で学習を進めておく必要もあります。
やる気が出ないときの対処法
夏休みは40日間と長く、ずっとモチベーション高く勉強し続けられる人はそういません。どうしてもやる気が出ないときはどうすればいいのか、対処法を以下に書いてみたいと思います。
やる気が出ないときの対処法:
・午前のインプットルーティンの実行は死守する
・リフレッシュ方法を持っておく
・週に1回息抜きのタイミングを決めておく
・オープンキャンパスに出かける
午前のインプットルーティンの実行は死守する
やる気が出ないと悩んでいる人に対して伝えにくいことではありますが、まず第一に重要なことは午前中のルーティンだけは意地でも実行することです。多くの大学受験生は、自分が思うように勉強に取り組めなかったとき「罪悪感」を抱きます。勉強をしなかった自分に対して幻滅し、さらにモチベーションが下がるという負のスパイラルに陥る人も少なくありません。
そこで大事なことは「少なくとも半日は勉強したぞ」という事実をつくることです。1日12時間というような理想的な過ごし方はできなかったけれど、最低限やるべきことはやったという事実があれば、強い自己嫌悪を抱くこともなく、翌日以降にまたモチベーションを持ち直して復帰できる可能性が高まります。
リフレッシュ方法を持っておく
毎日長時間勉強ができる人の多くは、上手にリフレッシュをしています。朝や夕方に適度に体を動かしたり、きちんと時間を決めて友人とおしゃべりをしたり、自分がどんなことで気分転換ができる人間なのかを把握し、うまく取り入れています。
休憩もある意味で1日を充実させるための勉強計画の一部なのです。まだ自分の気分転換につながる休憩の仕方がつかめていない人は、自分なりのリフレッシュ方法を最初の1週間で見つけ出し、日々のスケジュールの中に取り入れましょう。
週に1回息抜きのタイミングを決めておく
私はよく生徒に「日曜の午後は勉強のことは何も考えずに過ごすといいよ」とアドバイスをします。前述のように1日の中でうまく休憩を取り入れるだけでなく、1週間という単位の中でも休息を設けたほうがモチベーションを維持できると感じています。
丸6日+日曜の午前はしっかり勉強と向き合い、日曜の午後だけはスポーツをするもよし、バイトをするもよし、友達と遊ぶのもよしです。浪人生にもそういったアドバイスをしています。
べつに日曜でなくてもよいのですが、メリハリをつける工夫は受験勉強を続けていくうえで大切です。大学受験が心配だからといって40日間ずっと勉強のことばかり考えていては、やはり気が滅入りますし、パフォーマンスも低下します。1週間に1度、半日ぐらいの自由時間を設定し、それを1週間のご褒美のようにとらえて、そこに向けて残りの日を頑張るという考え方も悪くありません。
特に真面目で思いつめやすい人ほど、こういった時間をつくる工夫を取り入れてみてください。
オープンキャンパスに出かける

夏休みの息抜きにちょうどよいイベントが大学のオープンキャンパスです。自分が行きたいと思っている大学のキャンパスに足を運ぶとモチベーションが上がる人も多いようです。
何校も訪れることは、さすがに勉強時間が減るため推奨しません。また地方在住者は移動も含めて時間がかかりますので注意してください。2、3校程度は足を運んでみるのがよいかと思います。息抜きやモチベーションアップに繋がりそうであれば、これもある意味で大学受験を成功させるための工夫の1つと言えます。
大学受験の夏休みの過ごし方に関するよくある質問
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夏期講習は参加した方が良い?
必ずしも参加する必要はなく、よく考えて自分に必要なものだけを厳選して受講することをお勧めします。夏期講習に参加するメリットとしては、予復習を含めて夏期講習期間は勉強のリズムづくりがうまくいく可能性があることや、周囲の受験生の様子を見て刺激を受けられることなどが考えられます。
逆にデメリットとしては、受講のしすぎによって他の勉強のための時間が失われたり、本質的に自分に必要のないことを習わなければならない時間が発生したりすることなどが考えられます。例えばインプットが全然できていないのに「●●大学入試演習」のような講座をとっても得られるものは多くありません。
夏期講習を上手に活用するためには、まず自己分析をしっかり行い、自分のレベルに最適な学習内容を見極め、それに合致する夏期講習を検索することが重要です。
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勉強場所はどこが最適か?
自分が集中して勉強できる場所を見つけることは、夏休み期間を成功させるための非常に重要な要素です。これについても「最初の1週間」が勝負だと思ってください。学校の自習室、地元の図書館、自室など、2、3個の候補を出し、夏休み最初の1週間でそれらを試してみてください。そしてもっとも集中できそうだと思われる場所が分かったら、8月はそこを使い続けるのがよいでしょう。
日によって違う場所を使って勉強する人がいますが、あまりお勧めできません。無駄に自分の気分に波風を立てるようなことをするよりも、勉強計画同様、ルーティンで日々同じように過ごしたほうが安定するものです。
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友人の動向が気になるのですが?
人によっては周りの受験生がどれぐらい勉強しているのか、伸びているのか、気になることがあるようです。夏休み期間は普段のように友人たちと毎日顔を合わせることもありませんので、様子が分からない分、より気になるという気持ちは分かります。
ただ、受験勉強は他人と比較してどうこうなるものではありません。比較すべきは過去の自分です。昨日の自分よりも頑張れたか、先週より成長したか、夏休み前と比べて何ができるようになったか。そういった自分の中の時間軸で比較をしていくことによって、自分のひとつひとつの行動に対して責任がうまれ、改善がなされ、成長がうまれ、自信を得られます。
受験は確かにライバルよりも高い点数をとらなければならない、他者あっての競技です。しかし受験に対して前向きに取り組み、成功を収めている人の多くは、他者を必要以上に気にせず、むしろ過去の自分と向き合っている人が多いと感じます。夏休みは、そのような精神的な成長にも繋がる貴重な期間なのかもしれません。
まとめ|大学受験の夏休みの過ごし方
大学受験生にとって、夏休みは紛れもなく勝負の分かれ目となる天王山であることがお分かりいただけたかと思います。約40日間にわたる夏休みは、長時間の勉強によって自分を飛躍させられる貴重な期間です。ただそれだけに勉強を頑張る人と頑張れない人の差が大きく開くリスクをはらんでおり、また過ごし方の自由度が高いだけに、細心の注意を払って過ごさなければならない期間であるとも言えます。
ルーティン構築や自分に合ったリフレッシュ法考案などの過ごし方における工夫、インプットとアウトプットのバランスをうまくつくるなどの勉強内容における工夫、勉強場所などの環境設定における工夫など、ひとつひとつに細部までこだわって丁寧に過ごした人が大きく成長を遂げることができます。
大学受験生のみなさんが自分の未来を切り拓くために、夏休みを上手に活用できることを願っています。