国公立大学の入試スケジュール

 国公立大学の入試は、原則として「大学入学共通テスト」と、各大学独自の「個別学力検査(二次試験)」の2段階で行われます。

一般選抜

項目

時期

(例:2026年度入試)

内容
共通テスト出願 9月下旬〜10月上旬 2026年度よりオンライン出願に
共通テスト本試験 2026年1月17日(土)・18日(日)

2日間にわたり実施(全国同日)

※欠席者は翌週に追試の受験が可能

大学出願期間 1月下旬〜2月上旬 共通テストの得点を参考に出願先を決定
前期日程試験 2月下旬 多くの大学が実施。募集定員の約8割を占める
中期日程試験 3月上旬 一部の大学(例:公立大)で実施
後期日程試験 3月中旬 チャンスは少なく、倍率は高め
合格発表

前期:3月上旬〜中旬

後期:3月下旬

合格発表後、入学手続きへ

 共通テスト後から二次試験受験までの期間は短いため、戦略的な行動が必要になります。ポイントをいくつか列挙してみます。

①出願戦略を「データ+現実的シミュレーション」で固める

 まず、共通テストの自己採点結果の分析が最優先です。得点調整後の予想ボーダーや、各種判定データ(河合・駿台・東進など)を比較し、現実的な合格可能性を判断します。

 そして、併願の私立大学も含めて、安全校・挑戦校のバランスを取った出願先を検討します。特に国立は併願できる数が限られるため、第一志望への受験校一本化が危険な場合もあり、慎重な判断が必要です。

②出願先決定は「二次配点比率」にも注目

 共通テストの得点が伸びなかった場合、二次試験重視型の大学(配点比率:共テ4割以下)を検討するのが無難です。逆に共通テストが好調だった場合は、共通テスト重視型大学で確実に合格を狙うのも選択肢になります。

 また自分自身の科目別得点の強み(例:数学が高得点、英語が安定)と、各大学の科目別配点を照合し、自分に有利な配点になっている受験校選びを行うことも大切な視点です。

総合型選抜・学校推薦型選抜

 近年、国公立大学においても総合型選抜(旧AO入試)・学校推薦型選抜の募集枠が拡大傾向にあります。ただし、私立大学に比べてまだまだ募集定員は少なく、求められる学力の基準も高いのが一般的です評定平均や活動実績に自信があれば、出願を検討するのもよいでしょう。

 また「共通テストを課す」タイプの選抜では、一般選抜のための受験勉強と並行して対策を進める必要があり、両立をうまく進めることがポイントになります。

選抜方式 出願時期 試験時期 合格発表

総合型選抜

(旧AO入試)

9月〜10月 10月〜11月 11月〜12月
学校推薦型選抜 11月上旬 11月下旬〜12月上旬 12月中旬

私立大学の入試スケジュール

 私立大学は大学ごとに日程や入試方式が多岐にわたります。大きくは「共通テスト利用入試」と「一般選抜」に分かれますが、一般選抜の中にも前期・中期・後期試験を実施している大学があったり、入試方式がさまざまであったりするため、受験を成功させるためにはスケジュール管理が非常に重要になります。

 私が運営するStudyコーデは私立大学の受験を専門としていますが、受験生や保護者だけで、隙のない必要十分な出願戦略を構築できているケースはほとんどありません。入試方式が複雑多岐にわたる以上、高校で私大受験に詳しい進路指導の先生を見つけたり、われわれのような塾に所属したりするなど、専門家からきちんとアドバイスを受けられる環境を整えておくことが重要となります。

一般選抜

項目 時期 内容
出願期間 12月下旬〜1月中旬 インターネット出願が主流
試験期間 1月下旬〜2月中旬

大学・学部によって入試方式はさまざま。

共テ利用型もあり

合格発表 2月中旬〜3月上旬 出そろった結果を見て進学先を決定
入学手続き 合格発表後すぐ 納付期限が短いことが多いので注意

 私立大学の入試においてもさまざまな戦略立案・工夫が可能です。例えば下記のようなものがあります。

①共通テスト利用入試をうまく活用

 共通テストは国公立受験者にのみ必要なものだと思っている人が少なくありませんが、私立志望者にも重要な試験となります。共通テスト利用入試は、自己採点結果をもとに合否予想が可能な試験です。よって、1月中旬に私大の合否がいったんわかるのですが、これが戦略上重要となります。

 例えば共通テスト利用入試で1月中旬に日東駒専の合格が判明すれば、2月の一般選抜ではそれ以上の大学だけを受験すればよくなります。共通テスト利用入試で滑り止めを確保し、一般選抜ではそれ以上の大学にチャレンジする。これによって、体力面、費用面が楽になるだけでなく、滑り止めを確保できているという安心感を持って一般選抜に挑むことができ、パフォーマンスも向上します。

②出願は締切ぎりぎりまで待つ

 近年では各大学がホームページにて「志願者速報」を掲載しています。これを見れば、倍率が低そうな学部・学科を見極めることが可能な場合があり、締切ぎりぎりまでこのページを見て出願先を検討することで、合格可能性を高めることができます。ここまでこだわってこそ、合格が勝ち取れるのです。

総合型選抜・学校推薦型選抜

 私立大学の年内入試(総合型・学校推薦型)は、一般選抜よりもかなり早い時期にスタートします。年内入試においては、文字通り多くの私立大学で「年内」に合格発表があり、進路が決まります。

 ただし、もしもそこで合格が得られなかった場合には、一般選抜にも挑戦しなければなりません。年内入試一本に絞って対策するのか、一般選抜も見据えて受験勉強を並行して進めておくのか、高3になる前までには自分の方向性を判断して、準備を進めることが大切です。

選抜方式 出願時期 試験時期 合格発表

総合型選抜

(旧AO入試)

9月〜10月 10月〜11月 11月〜12月
学校推薦型選抜 11月上旬 11月下旬〜12月上旬 12月中旬

大学受験のスケジュールの一般的な組み方やポイント

 この項では、大学受験本番となる1・2月のスケジュールの組み方のポイントを解説します。

①受験校のレベルは幅広く

 一般的には滑り止めから第一志望まで、幅広いレベルで出願します。

 もちろんみなさんには行きたい大学が複数あり、それに挑戦をしたいという気持ちがあると思います。しかし浪人を検討していない限り、受験は一回きりです。その一回で後悔のない受験を成し遂げるためには、意図的に上から下までレベルを散らして出願します。出願が挑戦校のみとなれば、当然合格がゼロになる可能性は高くなってしまいます。

②特に「滑り止め」の確保を確実に

 レベルを散らして出願するとき、最も大切なポイントが「絶対に合格できる滑り止め」を最低1校はきちんと受験校に含めることです。これは共通テスト利用入試を活用して、私大の合格を押さえておくことが最もシンプルな方法です。

 もちろん滑り止めですから、心から行きたいと思える大学ではないはずですが、受験がすべて終了した3月に、1校も合格がないことを想像してみてください。進学の選択肢が何もなく、浪人か就職しか進路がないという状況は非常に苦しいものです。

③スケジュールには第一志望と滑り止めを最優先で配置

 受験校のスケジュールは、出願締切日、試験日、合格発表日、入学手続き締切日をカレンダーなどにしっかりと記載して管理していってください。

 時に、受けたい学校の試験日が重なったり、受けたい学校を並べると4日連続になってしまったりということがあります。こういった場合、自分の中でしっかりと優先順位を決めてスケジューリングしていくことが重要です。

 その際には「第一志望」と「滑り止め」から優先的に配置してください。自分の本望をかなえつつ、守るところは守る。それが後悔の少ない受験につながります。

④過去問演習のスケジュールを詳細に組み上げる

 1・2月はいよいよ試験が始まり時間は非常にタイトですが、学習の手を緩めるわけにはいきません。特に過去問演習には、その解答時間と復習時間を足し合わせると、多くの時間が取られるものです。

 よって、受験カレンダーができたら、そのカレンダーに過去問演習のスケジュールも作成することをお勧めします。行き当たりばったりではなく、計画的に行動することで、十分やり切ったと言える受験の最後を迎えることができるはずです。

高校3年生の年間ロードマップ(4月〜翌3月)

 受験生(高3生)の1年間はあっという間です。時期ごとの目標を明確にしましょう。下記に一般的な例を記載します。

【春】4月〜6月:基礎固めの時期

  • 英単語・文法、数学の公式など、基礎を徹底的に復習する
  • 志望校のレベルと現状のギャップを知る(模試を活用)
  • 夏に備えて学習習慣を身につける

【夏】7月〜8月:受験の天王山(弱点克服)

  • まとまった時間が取れる最大のチャンス
  • 苦手分野を徹底的になくす
  • オープンキャンパスに参加し、モチベーションを高める
  • 1日10時間以上の学習体力をつける
  • 年内入試受験者は、夏にすべてを仕上げるつもりで準備

【秋】9月〜11月:応用力養成・過去問演習

  • 共通テストの出願をする
  • 共通テストや志望校の過去問を解き始める
  • 文化祭・体育祭など学校行事との両立に注意する

【冬】12月〜1月:直前対策・共通テスト

  • 共通テスト対策に全振りする(12月以降)
  • 生活リズムを朝型に切り替え、入試本番と同じ時間帯に頭が働くようにする
  • 年末年始の休み期間に気が緩まないように注意する
  • 共通テストを受験し、その結果から出願戦略を整理する

【直前期・本番】1月下旬〜3月:私大・国公立二次対策

  • 私大入試、国公立二次試験に向けて、記述対策や最終調整を行う
  • 中期や後期試験の活用を迅速に判断する
  • 体調管理を徹底する(感染症対策など)

高校1年生・2年生は何をすればよい?

 受験勉強を高3からスタートするのでは、難関大学への合格は困難です。やはり費やした時間と学力にはそれなりに相関関係がありますので、早期の受験勉強スタートが合格率を大きく左右します。

英語・数学の基礎を固める

 受験勉強の土台となるのは英語と数学です。この2教科は積み重ねが必要で、短期間で成績を伸ばすのは難しいため、高1・高2のうちに基礎を完成させておきましょう。入試での配点も高い重要な教科です。高3の受験直前期に勉強時間を十分確保するためにも、英検などの資格取得を高2までに頑張っておくことをお勧めします。

 私は英語塾「高2までの英語塾OUTCOME」を運営していますが、英語の早期完成の重要性を鑑みてこの塾を設立しました。

オープンキャンパスへ行く

 志望校を具体的にイメージすることは、学習意欲の維持につながります。高3の夏は勉強で忙しくなるため、高1・高2のうちに複数の大学を見て回り、雰囲気や立地を確認しておきましょう。

文理選択と科目選択を慎重に、なるべく早期に行う

 一般的に高1の冬から高2にかけて、文系・理系の選択や、受験で使用する選択科目(社会・理科)を決定します。受験で使用する科目が早期に確定すれば、それを意識して時間の使い方を変えることができますが、高3ぎりぎりまで受験に必要な科目が決まらないと、無駄な学習時間が発生することになり得ます。

部活や行事に全力投球

 高3になるとどうしても大学受験を意識した日々になるため、なかなか勉強以外のことに時間を割きづらくなります。高1・高2のうちに思い切り高校生活を楽しむことで、高3になってからは思い残すことなく勉強に集中できるようになるかもしれません。

大学受験のスケジュールに関するよくある質問

 受験生からよく寄せられる質問をまとめました。

  • 受験勉強はいつから本格的に始めるべきですか?

    「思い立ったその日」がベストです。一般的には、高2の冬(共通テスト同日体験受験など)から本格化する生徒が多いですが、難関大現役合格者の多くは高2の夏以前から受験を意識した学習を始めています。

  • 併願校は何校くらい受けるのが一般的ですか?

     平均して3〜5校程度です。国公立志望の場合は「国公立(前期・後期)+私立併願2〜3校」、私立専願の場合は「チャレンジ校2校+実力相応校2〜3校+安全校1〜2校」といった組み合わせが一般的です。

     

     共通テスト利用入試も受験し、主に滑り止め校を確保しておくこともお勧めします。

  • 共通テストの勉強と二次試験の勉強、どちらを優先すべき?

     共通テストと大学の二次試験をまったく違うものと捉えている人が多いようですが、私個人としては、両者に必要な基礎的な知識・思考力の多くは共通していると考えています。よって、秋までは特にどちら向けということを意識せず、基礎学力の養成を目的とした学習をしていけば大丈夫です。

     

     中高一貫校在籍者などで、基礎の完成に自信があれば、高3の夏には二次試験対策を主とした記述力や思考力を向上させるためのトレーニングに取りかかるとよいでしょう。秋までは二次試験レベルの問題が解ける学力を養っておき、12月から共通テスト対策にシフトするのが王道です。

     

     共通テストは、その特有の形式に慣れる必要があります。私立大学受験者も、12月に入る頃には対策を開始してください。

  • 試験は連続何日間まで受けてもいいですか?

     できれば2日連続、多くても3日連続までにとどめることがお勧めです。理由の1点目は体力的な問題です。疲労がたまって体調を崩せば、受験の後半戦に支障を来します。

     

     もう1つの理由は勉強時間の減少です。受験本番の2月・3月も、最後までインプット学習の手を緩めなかった人が逆転合格を果たします。試験ばかりでスケジュールを埋めてしまうと、勉強時間が減ったり、覚えていた知識を徐々に忘れていったりして、成績が下がるリスクがあります。

  • 模試はどのくらい受けるべきですか?

     春からは2〜3カ月に1回程度、直前期には月に1〜2回の受験を推奨します。

     

    模試は健康診断のようなものです。あまり頻繁に受けたところで劇的に変化が見られるわけでもありません。自分の力がどの程度ついているか、春から秋にかけては1シーズンに1回受ければ十分です。

     

     11月以降は健康診断の目的以外に、場慣れや出題傾向慣れも目的にしたいところですので、頻度がやや増えてもOKです。最も重要である勉強時間が減少してしまわないように、模試の受け過ぎには注意してください。

  • お試し受験は必要ですか?

     本命校の受験の前に、滑り止めレベルなどの大学を受験することを「お試し受験」などと呼ぶことがあります。

     

     これが必要かどうかは、その受験生の性格によるところが大きいと思います。緊張しやすいタイプであれば、場慣れのために受験するのは意味があると思います。逆にあまり気にならないタイプであれば、進学するつもりのない大学をわざわざ受験することは、時間と体力の浪費とも考えられます。

     

     私立大学であれば2月の第1週には多くの大学の試験日が控えていますので、1月中に試験を実施している大学・学部を受験するとよいでしょう。

まとめ

 大学受験に向けての1年を通した全体スケジュールや、受験本番期間中のスケジュールなどについて説明してきました。お読みいただいた通り、国公立か私立か、一般選抜か年内入試かによってそれぞれスケジュールは異なりますが、いずれの場合にしても「ゴールから逆算して戦略的に日々を過ごすこと」が重要であるとおわかりいただけたと思います。

 仮にまったく同じ学力の受験生がいたとしても、その受験戦略やスケジュール管理が異なれば、結果は大きく変わるものです。大学受験は勉強ができればいいだけではないのです。

 ただ、特に大学受験が初めての高3生にとっては、精緻なスケジュール作成や戦略的な出願を考えることは非常に難易度が高いと言えます。したがって、勉強については自身で頑張るとしても、スケジュールや出願戦略の部分に関しては、家族や教師、塾などの力を借りて、細部にまでこだわって作成していくことをお勧めします。

 みなさんが納得のいく受験を、全力を出し切ってやり遂げられることを願っています。