「カレッジ・オブ・デザイン」はどんな学部?
新設の「カレッジ・オブ・デザイン」は人気の学際的な学部で、授業はオールイングリッシュだ。学士と修士を合わせた5年一貫のプログラムで、世界中から多様な学生を受け入れる。
学生は環境やAI、経済、医療、文化など複数の分野から興味に合わせて学びを深める。実践を重視し、企業などへのインターンシップも通し、社会の課題を自分で解決する力を育てることが特徴だ。未来をつくる新しい考え方と力を持った人材を育成することを目指す。
入試方法は2種類の推薦入試のみ
東京大学の新学部というだけで話題になるが、入試方法が推薦入試のみという部分でもさらに注目されている。上智大学の国際教養学部も一般入試はなく、すべてが推薦入試である。これは欧米の入試と同じで、「カレッジオブデザイン」もそれに倣った形と見えよう。
入試方法はRouteAとRouteBがあり、各50人の募集。
RouteAは大学入学共通テストの受験を課し、高校の調査書、評価書、エッセイ、英語資格試験のスコアなどの提出を求める。
RouteBは東大が指定する統一試験を受験する。たとえば、国際バカロレア(IB)、国際Aレベル、SAT、ACTなどだ。
国際バカロレアや国際Aレベルは一定の教育課程を修了したものが受けられる試験で、日本でも対応している高校が増え、都立国際高等学校はバカロレアコースを設置している。国際Aレベルはケンブリッジ国際認定校で指定のカリキュラムを修了すると受験できる。最近では渋谷区の東京女学館が日本の女子校で初めてケンブリッジ国際認定校になっている。
一方、SATやACTはアメリカの大学共通学力試験で、日本の共通テストに近いものだ。上智大学の国際教養の入試ではSATのスコアを求める。これらの試験は基本、誰でも受験が可能だ。RouteBも高校の成績証明書、評価書、エッセイ等の提出を求める。
RouteBに関しては面接試験のために日本にくる必要はないと明記し、外国人や留学生を意識した内容になっているが、日本人学生も受験可能だ。
RouteAは主に日本人高校生向け、RouteBは留学生や外国籍の学生向けの入試に見える。
東大進学のチャンスが広がる高校は?
国際バカロレアのカリキュラムを取り入れたり、ケンブリッジ認定校になっている高校は増えてきている。それ以外にも海外進学に力を入れる高校も目立つ。生き残りのために他の高校と差別化しなくてはいけないため、グローバル教育を打ち出すのだ。
しかし、実際は円安の今、海外進学は敬遠される傾向にある。その中で、国内の大学も国際バカロレアの資格を評価するケースもあるが、東大の新学部への進学の可能性が出てきたのだから、高校は関心を持って当然だ。
国際バカロレアやケンブリッジ認定校ではない一般的な公立高校も同じだ。地方の公立難関高校から学校推薦型選抜で東大に進学する学生も目立つ。地方の中には塾機能がない地域もあり、一般選抜では首都圏の受験生にかなわないが、推薦入試ならば、ペーパー試験の点数以外も評価されるため、互角に戦える。そういった地方の公立高校もこの新学部の入試には興味を持つだろう。
求めているのは多様性をもたらす学生
オンラインの説明会では多くの高校の担当者が集まり、活発に質問をしていった。
9月入学であるが、日本の高校を3月に卒業すると9月までどうするのか?という質問には、在宅で勉強ができるようにする予定とのこと。また、8月卒業となると、4月入社の一括採用とのミスマッチではないかという質問には「企業の入社時期もフレキシブルになっており、問題はないと考える」とのことだ。
一方で「平均的な学生を求めているわけではない」という大学側の発言があり、それに対して質問を投げかけると以下のような回答があった。
「平均的な人を求めているわけではない」との発言は、例えば大学入学共通テストや統一試験で全教科まんべんなく高得点を挙げられるような人だけを求めているわけではなく、UTokyo College of Designのカリキュラムや理念を深く理解して、5年間の学びを通じて社会変革をリードする人材になりたいという動機や意欲を持ち、UTokyo College of Designでの学びを豊かにできるようなバックグラウンドを持っている出願者を、総合的な評価により選抜したいということを意図したものです。このことにより、多様な価値観や意識を有する学生による学びのコミュニティを作りたいと考えております。
学生の偏りという問題を打開できるか
この多様性という言葉が説明会でも繰り返し語られた。2025年の東大の新入生のうち、一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の出身者の割合は56.3%を占める。要は塾機能が充実した一都三県の学生に有利になっている。
同年の合格者の女子率は20%である。理系学部の定員が大きいために女子率は低くなっている。東京科学大学などは大規模な女子枠入試を導入し、女子学生を増やしているが東大はそういった試みもしていない。また、留学生比率も約17%である。幼い頃から塾通いをしている男子が大半を占めている状態だ。この多様性のなさを打開するための新学部はプラスに働きそうだ。
一方で、学校推薦型選抜は10年ほど続けた結果、首都圏の難関高校の学生の合格者に占める割合が多い入試になってきた。カレッジオブデザインはどのようになっていくのか。今後も注目していきたい。

