まず知っておきたい「男の子の脳」の発達について

まず知っておきたい「男の子の脳」の発達について
弱さの背景には「男の子の脳」の特徴があるという

 自分の息子が、注意されるとすぐ泣く、あきらめが早い、挑戦しようとしない、爆発して物に当たるといった反応を見せると、「我が子だけかな」と不安になるものです。しかし、菊池さんはまず「その子だけの“弱さ”ではない」と伝えます。

 背景にあるのは、男の子の脳の特徴。男の子の傾向として、感情のコントロールを担う「前頭前皮質」の発達が、女の子より1、2年ほどゆっくりな傾向があります。そのため、言葉より行動で表現しがちなのは自然なことだと説明します。

 一方で、メンタルの成長を促すには周囲の大人の関わり方が重要、と強調する菊池さん。男の子は特に、言葉で教えられたことを理解して学ぶ力より、人のふるまいを真似して学習する力が強いとし、家庭での小さな習慣がしなやかな強さを持つメンタルをつくる、と語ります。

NG習慣①:人を批判する姿を見せること

 1つ目のNG習慣は、子どもの前で他人を批判することです。例えば「上司が使えない」「あそこのパパはだらしない」「先生は分かってない」。大人同士の愚痴のつもりでも、子どもは「人の悪口を言っていい」ことを世界のルールとして受け取る、と菊池さんは指摘します。

 特に、男の子は同性の大人を「未来の自分像」として見る傾向があります。他人への批判的な姿ばかり見て育つと、友達に対して上から目線になる、自分が指摘されると過剰に傷つく、人間関係でつまずきやすいといったパターンにつながりやすいと述べます。

 一方で、完璧な親でいる必要はない、とも語る菊池さん。つい言ってしまったときは、「さっきの言い方は良くなかったな」「誰にでも苦手と得意があるよね」「いいところを見ていくのが大事だよね」と、後から言い直すことがポイントだと説明しました。ミスをしない大人ではなく、「ミスを認めて修正できる大人」の姿がしなやかで折れにくい心を育てる、というメッセージです。

NG習慣②:感情を抑え込ませること

 2つ目のNG習慣は、感情を抑え込ませること。「男の子でしょ、泣かないの」「そんなことで泣いていたら恥ずかしい」など、子どもを落ち着かせたくて、つい言ってしまうもの。男の子は平均的に感情を言葉で処理する力の成長がゆっくりなため、気持ちが態度や行動で出やすい、と菊池さんは指摘します。その感情表現を抑え込むと、怒りや不安が溜まって爆発する、我慢し続けてどこかで辛くなる、感じる力自体が弱まり自己理解ができない、といったリスクがあると説明します。

 代わりに取りたい方法として紹介されるのが「感情コーチング」です。

  1. 感情に名前をつける:「悔しかったんだね」「びっくりしたんだね」「嫌だったんだね」
  2. 共感を示す:「そうだよね、つらかったよね」
  3. ルールを伝える:「でも物は投げないよ」「泣いてもいいけど、片付けはしようね」

 感情に名前がつくことで理性的な2階の脳が働いて落ち着き、共感によって「受け止めてもらえた」と安心し、そして明確なルールの提示で安定する、と解説。感情は抑えるものではなく、扱えるようになるもの──その練習の場を家庭でつくることが大切だとしています。

NG習慣③:挑戦を途中でやめさせること

 3つ目のNG習慣は、子どもの挑戦を途中でやめさせることです。例えば、出かける5分前に、息子がブロックに夢中になっていると、親としては切り上げさせたくなります。しかし、男の子の脳の仕組みでは「タスク没入型」のスイッチが入りやすいのが特徴。“集中の波”の中で計画性や達成感の神経回路を育てている、と菊池さんはいいます。

 パズルやブロック、レゴなどは単なる遊びではなく、男の子にとって「大事なプロジェクト」。中断されると、「自分は最後までやれない子だ」という感覚が無意識に刷り込まれやすいと説明します。その積み重ねが後の学習において「課題に取り組めない」「最後までやりきれない」につながるというのです。

 そこで菊池さんは2つのポイントを挙げます。1つは「10分前行動」で時間にゆとりを持たせること。もう1つは「見通しの共有」です。「あと3ブロック置いたら終わり」「このページを終えたらお風呂」といった区切りを、見える形で提示することで、子どもは「区切りまで達成した」と受け止め方を変えられるとのこと。待ってもらえる経験は自己肯定感につながり、小さな達成体験は自信と粘り強さの土台にもなる、と菊池さんは伝えます。

NG習慣④:すぐに答えを教えてしまうこと

 

すぐに答えを教えてしまうこと
すぐに答えを教える代わりに、取りたいサポート方法は?

 4つ目のNG習慣は、すぐに答えを教えてしまうことです。「このやり方は違うよ、貸して」「こうやるんだよ、見てて」といった関わり方は、親心や愛情によるもの。しかし、男の子の成長にとっては「自分で考えたというプロセス」が重要で、それを奪うと逆効果だと菊池さんは述べます。

 男の子の脳は、身体感覚や空間認知を使いながら「試す→間違う→修正する」で伸びていくとし、失敗こそが学習の材料だと説明。そのため、すぐに教えることはせず、次のような順番でサポートすることをすすめています。

  1. 3分など時間を測って、子どもが考えるのを待つ
  2. 「どこまで分かった?」「次はどうする?」と問いで導く
  3. ヒントを出して誘導していく
  4. 選択肢を与えて考えさせる
  5. 最後の手段として、やって見せる


 こうした関わり方が「自分で乗り越えた」という成功体験をつくり、子どもの自己効力感・問題解決力・粘り強さ・思考の柔軟性を育てる、としています。

NG習慣で育てられた父親が今からできること

 4つのNG習慣の解説後、メンタルが弱くなる育てられ方をした男の子が父親になると、同じパターンを再現し、家庭でトラブルを起こしやすい、という問題にも言及されます。当人に悪意があるというより、「自分が責められたくない」「失敗が怖い」というメンタルの弱さや防衛反応の表れだと菊池さんは解説。その結果、家族や周囲から距離を置かれ、本人も自己否定で苦しむという、誰にとっても辛い状況になりがちだと語ります。

 では、どうすればよいのか──。菊池さんは「答えは簡単」で、今から「自分を育て直す」ことだと話します。子どもの手本となるのは、「最初から完璧な大人」ではなく、「成長する姿をそばで見せられる大人」。子どもと一緒に自分も育て直すことで、同じ痛みを子どもに渡さずに済む、というメッセージが送られます。

まとめ

 今回の動画では、男の子のメンタルを弱くしがちなNG習慣を4つ紹介。NG習慣で生じるリスクと、メンタルを強く成長させるための親の関わり方を具体的に解説しています。また、NG習慣で育てられた父親がトラブルを起こしやすいこと、今から自分を育て直すことで連鎖を止められることも示唆されました。(次ページに解説動画あり)