他国から引き離される日本
学校の内外でどのくらいICT機器が活用されているのか、先進各国での実態を見ると、日本の状況はかなり深刻なものだと分かる
【チャートの説明】PISAによる2009~18年のICT 活用調査を基に、学校内・学校外の学習におけるICT活用を示した経年データ。「項目回答値(1~5で頻度を表わす)-1の単純合計値平均/スコア上限値」のパーセンテージを国別に求めた。調査年によって項目構成は若干異なる。
(出所)CC-BY-4.0 Shimpei Toyofuku/OECD-PISA Database
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低迷する日本の子どものICT活用度

 しかしながら、1人1台の環境が実現しても、学校の授業のスタイルが今と一変するわけではありません。

 私は、これまで約30年にわたり、教育のデジタル化についての研究活動を行ってきましたが、実感として、その使い方は当時と本質的には変わっていないという印象を持っています。日本の多くの学校で、パソコンやタブレットといったデジタル端末は、依然として授業中に先生の指示に従って必要な時だけ使用させる「教材」、あるいは先生の「教具」の一つと捉えられているからです。

 生徒が学習に必ず使用する鉛筆やノートのような「文具」として、自宅や学校外にもデジタル端末を持ち出して活用することを前提にする発想の大転換がない限り、ICTによる情報共有社会を見据えたデジタル教育の実現は難しいと思うのです。

 これまで、たくさんの小中学校でパソコンやタブレットを使った授業を見てきましたが、日本の学校でデジタル端末は先生の指示のあった時だけ、先生が与えた課題作業のためにだけ使われます。一方で、板書をノートに書き写すだけの一方的な講義授業スタイルは昔のままですから、端末の出番は減り、机の中にしまい込まれて死蔵され、文鎮化してしまうのです。

 上の図は、経済協力開発機構(OECD)によるICT活用調査結果に基づき、学校内外の学習において国ごとにICTの活用度を示した経年データ(2009~18年)です。横軸に「校内活用スコア」、縦軸に「校外活用スコア」を取り、右上に行くほど活用頻度が高くなることを示します。

 一見して分かるように、諸外国では学校内でも学校外でも年を追うごとにICTの活用頻度が上がる傾向があるのに、日本では09年から低位置での横ばい状態が続いています。日本の子どもが、学習においていかにデジタル機器を活用できていないか、諸外国と比べ、歴然とした格差があることに慄然とします。

 では、日本の子どもはデジタル端末の扱いが苦手なのかといえば、そうではありません。自宅ではスマートフォンやタブレットでゲームをしたり、動画を観たり、絵を描いたりしています。メッセンジャーアプリで友だちと頻繁にやり取りしています。むしろ親世代よりも上手にICT機器を使いこなしていると思いませんか?

 学校では端末の使用機会が厳しく制限され、家庭では親から「スマホばかり見ていないで(ノートに書いて提出する)宿題をしなさい」と言われているため、せっかくの子どもたちのスキルが、学習にほとんど生かされません。このことが「活用スコア」低迷の原因にもなっているとみています。